パリで人を食べた男・佐川一政が主演! 本番シーンにも挑んだ映画『喰べたい。』

関連キーワード:

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!


【今回の映画『喰べたい。』】

「少年A」の手記『絶歌』のモラルが問われる昨今ではあるが、かつて猟奇殺人事件の加害者が、著書を発表しただけに止まらず、事件の映像化作品で主演を務めるという、考えられない出来事があった。

パリで人を食べた男・佐川一政が主演! 本番シーンにも挑んだ映画『喰べたい。』の画像1霧の中』彩流社

・パリ人肉事件

 1981年、日本人留学生がパリ市警に逮捕され、その犯行内容に世間は震撼した。ソルボンヌにあるパリ第3大学大学院生の留学生・佐川一政(当時32歳)は、自室で同大学のオランダ人女性留学生(当時25歳)を背後から小銃で射殺。屍姦のあと解体して写真を撮り、死体の一部を食べた。俗に言う「パリ人肉事件」だ。そして犯人の容姿が、とても殺人など犯せるようには見えない小柄だったことも、フランス国民に衝撃を与えた(事件当時、身長152センチ、体重35キロ)。

 佐川の手記『霧の中』(彩流社)はベストセラーとなり、私の知る限り、事件は2本映画化された。

 まず1989年にイタリアで制作された『愛のかたち』。これは佐川とは程遠い容姿のハンサム俳優(しかも白人)が主役。猟奇テイストも軽い不毛の駄作だった。


■『喰べたい。』あらすじ

パリで人を食べた男・佐川一政が主演! 本番シーンにも挑んだ映画『喰べたい。』の画像2画像は、『喰べたい。』VHS/監督・山地昇(1994年)

 問題なのは1994年に制作された『喰べたい。』。こちらは佐川本人が自ら出演し、脚本も手掛け(監督と共同執筆)、ホンバンにも挑戦した、事件を脚色したセミドキュメンタリーだ。

 冒頭、佐川の幼少時に叔父が撮影したモノクロの自主映画が流れる。佐川が小学生の頃、誘拐した幼児を鍋で煮込んで食べる魔法使いの話を叔父から何度も聞かされていた。このフィルムはその映像化で、佐川の食人嗜好のルーツとなったのだ。

 さて本編に入る前、メイキング映像が映し出される。佐川の相手役に選ばれたレイチェルは終始不機嫌で、佐川と視線を合わせない。そして撮影中に突然部屋から出て、トイレに籠城し嘔吐する。通訳が「顔が怖い」「触れるとゾッとする」とトイレのドア越しに通訳する。レイチェルは本物の殺人犯を目の当たりにしてショックを受けたのだ。監督も「佐川君も緊張しているから、そんな顔になっちゃっている」(笑)と必死にフォローする。

 機嫌を直して寸劇スタート。佐川は、路上でアクセサリーを売るイングリット(レイチェル)というオランダ人と知り合い、絵のヌードモデルを依頼し家に招く。彼女が帰った後、トイレで拾った陰毛を口にし、コーヒーカップに付いた口紅の痕を舐めとる変態ぶりを発揮する佐川。佐川はその後デートを重ね、自宅ですき焼きを振る舞う。

 ここで佐川自ら語る童貞喪失話が始まる。和光大学英文科を主席で卒業した佐川は、電車内で隣のオヤジが読んでいた『週刊新潮』の白人専用トルコ(現ソープランド)の記事を盗み見て、すぐに時計や父親の高級ブランデーを酒屋やバーなどに売り飛ばして金を作り、デンマーク女性に童貞を捧げる。以降スウェーデン、フランス、ドイツ……と、欧州女性を制覇(合間に日本人もツマミ食い)。パリ留学中も買春を続けたという。

 また佐川は、外人女性に対する偏見たっぷりな持論も展開する。要約すると「日本にいる白人女性というものは、個人主義が頂点に達してしまっている。彼女たちの目は非常に暗いし生き生きとしていない。ナイーブさがない。だが日本の女性はナイーブさも純粋性もあるし、人の苦しみや悲しみを理解しようとする。その点で大和撫子は素晴らしい」。近年になって「最近はちゅらさん(沖縄女性)に食欲を感じます」と言ったとか。

 ストーリー再開。イングリットのために再びすき焼きを作る佐川。だが佐川は「肉が……、足りない!」と、チェーンソーでイングリットに襲いかかる。ここからクライマックスの猟奇シーンに突入するのだが、あえて不条理な演出で表現される。佐川はイングリットの尻を包丁で切り開き、その生肉を摘まんで食べる。さらに肉を床に散りばめ自慰に耽る。一方イングリットは、切り離された佐川のペニスをソーセージのように食べる。やがて生首になった2人が会話を始める。佐川「食べてくれてありがとう。僕って美味しかった?」。イングリット、微笑んで「ええ、吐きそうなくらいに」。佐川「ありがとう」と言って目を閉じる。場面は転換して、佐川は日本人女性をナンパし、2人は心からセックスを楽しむ。物語はハッピーエンドで終わる。

 1988年に東京都足立区綾瀬で発生した「女子高生コンクリート詰め殺人事件」は複数の映画が制作されたが、被害者の遺族感情と世論によりビデオ回収や上映反対運動に発展した。だが『喰べたい。』は、これといった物議を醸すことなくビデオリリースされ、DVD化までは至らず人知れず消えていった。

 それにしても、あれだけの事件を起こしながらも佐川は不起訴処分となり、こうして映画に出たり、本を書いたり講演したりと社会復帰を果たしている。なんでもパリ警察の取調べで、「昔、腹膜炎をやった」という発言が「脳膜炎」と誤訳され、精神鑑定で心神喪失状態での犯行と判断、不起訴処分となったのだという。……そんなのって、あり?
(文=天野ミチヒロ)

■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
ウェブ連載・幻の映画を観た! 怪獣怪人大集合

天野ミチヒロの記事一覧はこちら

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載
タイのUFO聖地で冥王星人が残した予言がヤバい!「2020年に地球は……」

タイのUFO聖地で冥王星人が残した予言がヤバい!「2020年に地球は……」

――タイ在住歴20年の私バンナー星人が、タイ社会では馴染みの...

人気連載
11月29日~12月5日にアナタを襲う悲劇がわかる4択診断! Love Me Doが開運法指南

11月29日~12月5日にアナタを襲う悲劇がわかる4択診断! Love Me Doが開運法指南

■2021年11月29日~12月5日「今週の不幸を回避し...

人気連載
霊障に効果があるクリームが存在!高い波動で悪霊を退散する最強グッズ3選

霊障に効果があるクリームが存在!高い波動で悪霊を退散する最強グッズ3選

不思議ジャーナリストの広瀬学氏は、科学では解明できないこの世...

パリで人を食べた男・佐川一政が主演! 本番シーンにも挑んだ映画『喰べたい。』のページです。などの最新ニュースは知的好奇心を刺激するニュースを配信するTOCANAで

トカナ TOCANA公式チャンネル