口が閉じたまま生まれた女の子 ― 食べることも話すこともできず

 アメジスト・サントスちゃんは、「口腔顎肢発育不全症候群(oromandibular limb hypogenesis syndrome)」という障がいを持って生まれた。彼女がフィリピンのマニラで生まれた時、彼女の下顎はほとんどなく、口がぴったりと閉じており、また手足の先端部分も欠けていた。なのでアメジストちゃんは、生まれてからずっと鼻に通した管で栄養分を摂取しており、3歳になる現在まで1度も食物を口にしたことがない。また口が開かないために話もできないのだ……。


■50万人に1人の「口腔顎肢発育不全症候群」とは?

「口腔顎肢発育不全症候群」は、50万人に1人の確率で起きる。胎児の時に何らかの問題が発生し、身体の形成不全を引き起こすと考えられている。

 母親のエストレージャさんによるとアメジストちゃんの妊娠中はずっと出血が止まらず、妊娠5カ月目に胎児に問題があることがわかったと話す。そしてアメジストちゃんが誕生した時、エストレージャさんは「神様、私はどうやってこの子を育てたらいいのですか?」と泣き続けたと言う。

 生まれて数日後、アメジストちゃんはフィリピン・チルドレンズ・メディカルセンターの整形外科部長であるタップ・グランゴ医師のケアを受けることになった。グランゴ医師は、「初めて我々がアメジストちゃんに会った時、一番の懸念は栄養でした」と語る。そしてまず彼女の鼻から管を入れ、栄養を確保。退院後は、父親のローランドさんが管を使って娘に栄養を与えるやり方を学んだ。

口が閉じたまま生まれた女の子 ― 食べることも話すこともできずの画像1画像は「YouTube」より

 アメジストちゃんは両親と2人の姉の愛によって目覚ましい成長を遂げた。口はきけないが、よく動き回る元気な女の子に育っているという。「私は子どもたち全員を愛していますが、アメジストへの愛は少し違っています。できることなら、私は彼女が望んでいるすべてを喜んで与えます」とエストレージャさんは話す。

 一方、グランゴ医師は「彼らはとても信心深く、アメジストちゃんを喜んで受け入れました。アメジストちゃんは障がいにも関わらず、ハッピーな子です」とアメジストちゃんの家族について話す。口はきけないが、アメジストちゃんはよく微笑みを浮かべるということだ。

 手術の際は口底部と唇を切開して分離し、上下の顎をこじ開けなければならず、かなり複雑になるとグランゴ医師は予測していた。そして手術には多くの出血が伴う上、きわめてレアなケースであるため、医学誌にも助けになるような情報はほとんど無かったと話す。そのため、彼女の小さな体が手術に耐えられると確信するまで3年間待ったのだった。

■手術成功も今後も段階的に手術が続く

 そしてアメジストちゃんが3歳になった時、グランゴ医師はついに手術に踏み切った。今年初めに行われた手術は8時間にも及び、アメジストちゃんの口はやっと部分的に開いた。父親のローランドさんは、「手術から戻って来た時、アメジストは何も言えなかったけれど、私たちは彼女が痛みに苦しんでいることがわかりました」とつらい記憶を語る。

 医学的に手術は成功だったが、回復には長い時間がかかった。そして彼女の口は部分的に開いたものの、顎の骨がとても脆いので今のままでは食物を噛むことが不可能だということもわかったのだった。

 2カ月前、アメジストちゃんは次のステップである顎の骨を形成する再手術を受けた。ローランドさんとエストレージャさんがひたすら願うのは「娘の口が完全に開き、話す声を聞きたい」ということだ。

口が閉じたまま生まれた女の子 ― 食べることも話すこともできずの画像2画像は「YouTube」より

 再手術から2カ月が過ぎアメジストちゃんは集中治療室からは出たが、未だ入院中である。そして今後、少しでも何かが食べられるようになるよう、歯の移植手術も必要になることが予期されている。

 アメジストちゃんが家族の元に戻って普通の生活ができるまでには、まだまだ長い道のりが必要だ。しかし、暖かい家族に囲まれたアメジストちゃんの表情は決して暗くない。こんなつらい状況の中でも人に微笑むというアメジストちゃんは、口が利けるようになったら何を話すのだろうか。再手術の成功、そしてアメジストちゃんが、アイスクリームを食べられる日が一日も早く来ることを切に願う。
(文=三橋ココ)

参考:「Daily Mail」ほか

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