史上最も犠牲者を出した「バージニア工科大学銃乱射事件、33名死亡」はなぜ起きた?

史上最も犠牲者を出した「バージニア工科大学銃乱射事件、33名死亡」はなぜ起きた?の画像1※画像:「YouTube.com」

 今月1日米・オレゴン州の南西部ローズバーグにある2年制大学の「アムクワ・コミュニティー・カレッジ」で銃乱射事件が発生した。

 報道によれば、10人が死亡、7人が負傷したという。州政府によれば、容疑者は20歳の男性で、すでに死亡が確認されている。今回の事件は、キリスト教徒を狙ったともいわれており、現場に居合わせた女性は、「(容疑者は)教室の中に入ってきて、その場にいた人たちに信じている宗教を言うようにいい、それから撃ち始めた」と話している。

 この事件をうけ、オバマ大統領はホワイトハウスで記者会見を開き、「考えたり、祈ったりするだけでは不十分だ。多くの犠牲を繰り返しているにもかかわらず、米国には十分な銃規制の法律すらない」と語気を強めつつ、銃撃乱射事件が後を絶たない現状を憂いた。

 史上最大の犠牲者数を出した「バージニア工科大学銃乱射事件」からはや8年が経つが、未だ同様の事件が後を絶たない。今回は、このような憂うべき事件がまた起きないことを祈りつつ、「バージニア工科大学銃乱射事件」を振り返ってみよう。


【チョ・スンヒ:バージニア工科大学銃乱射事件】

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 バージニア州の山間にある静かな学生の町ブラックスバーグ。歴史あるバージニア工科大学の町としても知られているが、海外での知名度はそれほど高くなかった。しかし、2007年4月16日、この町と大学が世界中に知られる事件が起こった。アメリカの学校で起きた銃乱射事件において史上最大の犠牲者数を出した「バージニア工科大学銃乱射事件」が、発生したのだ。

 犯人は23歳になる同校の生徒、チョ・スンヒ。チョは、2007年4月16日の朝7時頃、ウエスト・アンブラー・ジョンストン学生寮の3階にあがり、女子学生と男子学生を射殺。返り血を浴びた服を着替えるため自分の部屋に戻るとともに、用意していたほかの武器を持ち出し、近くの郵便局に向かった。

 9時に郵便局が開くと、彼は米三大ネットワークのひとつNBC局宛にビデオとCD-Rを郵送。直後、落ち着いた様子でキャンパスのノリスホールへと向かい、中に入り扉を閉め、9時20分から10分間にかけて無差別的に32人を射殺した。無言、無表情で銃を乱射したチョは、最後に自分自身の頭に銃弾を撃ち込み自殺した。

 通報を受けノリスホールに到着した警官たちは、扉を開けると階段から血がどくどくと流れて落ちているのを見てただごとではないと覚悟した。廊下も赤いペンキを大量にぶちまけたように血まみれになっており、教室には撃たれ苦しんでいる人、明らかに死んでいる人らがそこら中におり驚愕した。チョはすでに自殺していたが、このような凄惨な事件を起こした動機を探るべく、300人~400人もの警官が捜査に投入された。

■無差別殺人に及んだ動機…

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 チョがなぜ、このような残虐な乱射事件を起こしたのか、様々な説が流れた。

 まず、最初の犠牲者となった19歳のエミリー・ヒルシャーはチョの元ガールフレンドで、ふられたことで逆恨みし、自暴自棄になったのではないかとささかれた。

 また、チョの腕には、赤いインクで「Ismail Ax」という文字が書かれていた。これはコーランに書かれている「預言者たちの父イブラヒムの息子、イスマイル」と「斧」という意味であるという解釈が有力であるため、イスラム組織のテロではないかともいわれた。

 頭がおかしい精神異常者だったという説も流れたが、警察の捜査により緻密に計画された上での犯行であることが判明している。

 チョは事件に使った最初の銃を2カ月半前に購入し、当日移動に利用したバンは5週間前にレンタルしていた。また近くの射撃場に通いつめ熱心に練習し、さらに練習目的だとして銃弾を買い集めていた。そして8日前には「ハンプトン・イン」ホテルに宿泊し、ホテルの部屋でテレビ局に郵送した犯行声明ビデオを撮影。2日前にノリスホールの周りをうろついている不審者が目撃されているが、これは最終下見に来ていたチョである可能性が高いと見られている。このように着々とXデーに向けての準備を進めていたことから、精神異常者による突発的な銃乱射事件説はすぐに打ち消された。

 チョが事件を起こした理由。それは彼の23年間の人生を振り返ると明白に見えてくると、精神科医たちは語る。一体、チョはどんな人生を歩んできたのだろうか。

■チョ・スンヒの人生【幼少期】

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 チョは1984年1月18日、韓国中部に位置する忠清南道出身の父親と母親のもと、姉に次いで、第二子として誕生。長男として大事に育てられた。生後9カ月のとき百日咳がもとで肺炎にかかり、入院。その際、心雑音があると診断され、3歳になると精密検査が行われた。この検査はチョにとって大きなトラウマとなり、これをきっかけに身体に触られることを極端に嫌うようになったという。

 よく泣き、身体の弱かったチョには友だちができず、大人しく暗い子に育っていった。ちなみに母方の叔父が自殺しているものの、この叔父以外、一族に精神的不安定な者はいないと伝えられている。父親はソウル市で書店を営んでいたが上手くいかず、一家は道峰区倉洞の多世帯住宅の地下部屋を借り暮らす貧困生活を送っていた。この貧しさから抜け出し、また子供たちの未来のためにと、両親はアメリカ移住を決意。すでに移住していた父の姉が強く後押しし、チョが8歳の1992年に一家はデトロイトで新生活をスタートさせた。

 しかし、両親ともに英語が話せなかったため、韓国人が多く住むワシントンDCにすぐに引っ越す。両親はドライクリーニングなど会話をする必要のない仕事を見つけ、昼も夜も休みもなく働いた。家では韓国語が飛び交ったため、チョと姉は英語取得に苦労したという。姉は、アメリカに渡ってから「チョが韓国にいたときよりもさらに暗くなり引っ込み思案になった」「チョがからかわれるなどのいじめにあっていた」ことを証言している。チョにとって、アメリカは決して住みやすい環境とは言えなかったようだ。

■チョ・スンヒの人生【少年期】

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 チョは渡米後、2年が過ぎた頃から英語を理解できるようになったといわれている。相変わらず社交性はなかったが、9歳から住み始めるようになったバージニア州ではテコンドーを学び、テレビを見たり、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』などのテレビゲームを楽しんだり、ごくごく普通の少年の遊びを好んだ。

 高校のエッセーでは、「好きな映画は『X-メン』、好きな俳優はニコラス・ケイジ、好きなバンドはU2、好きな食べ物はピザ」などと綴っている。しかし、学校ではあまり話さなかったことから、相変わらずからかわれていた。友だちもできず、彼はますます引っ込み思案になった。しかし、「架空の友人を作り話しかける」「独り言が多い」などはしなかったと姉は証言しており、極端にシャイなのが原因ではないかと家族は考えていた。

 チョが思春期に入った頃、両親が休む間もなく働き続けたおかげで、一家は念願のマイホームを購入し、生活を始めるようになった。

 母親は、「チョは大人しく優しい子だった」「怒ることや反抗的な態度も見せなかった」と話したが、それは両親と接する時間があまりにも短かったため、反抗する時間もなかったからだという見方もある。チョは姉以外とは必要最低限以外のことを話さなくなり、他人に話しかけられると異常に緊張し言葉が出ず、うなずくのがやっとという状態になっていたのだ。

■精神科を受診させられる

 この事態に対し、さすがに母親も気にするようになり、もっと積極的になれ、スポーツなどに参加しろ、教会に行こうと強く勧めるようになった。しかし、彼にとってこれはプレッシャーになり、ますます殻に閉じこもるようになっていった。

 13歳になると、心配した学校が「マイノリティ向けの精神的支援を受けるように」と提案し、CMHSでセラピーを受診。以来、チョは4年間セラピーを受け続けた。セラピーでも話すことを嫌がったため、幼児がよくするという絵を描くセラピーを中心に行っていた。IQは平均より少し上だったそうだが、内向的な性格は治ることなく、セラピーではドアや窓のない家ばかりを描いたと伝えられている。なお、父親は育児にはあまり参加しないタイプで、チョは父親に対してネガティブな印象しか持っていなかった。

 目立たない大人しい青年になったチョだったが、1994年4月20日に学生ふたりが起こしたコロンバイン高校銃乱射事件には、並々ならぬ強い興味を抱いたという。自殺した犯人たちに共感し、英語の授業で「自分も同じようなことをしたい」というエッセーを執筆。驚いた教師はチョの両親を呼び、精神鑑定を受けるよう強く提案した。ここでチョは家庭では話すことがきるが、社会不安のため学校などでは話せなくなる「場面緘黙症」という診断を受けた。だが、両親は「必要ない」「おおげさだ」とチョに治療を受けさせなかった。父親に至っては「自分も大人しい性格だが問題ない。息子はオレに似たんだ」と楽観視していたという。

 カウンセラーはチョが成長するにつれ、に似た症状を発症している恐れがあると心配し、抗うつ剤を処方した。薬の効き目はあり、チョも明るくなっていったが、両親の強い希望で薬はすぐに打ち切られてしまった。

■大学へ進学するも夢は「ロマンス小説家」!?

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 2004年に高校卒業後、チョ自らが希望しバージニア工科大学に進学。エンジニアになるという目標を持ち、面倒な申請手続きもひとりでこなした。両親も姉も、カウンセラーも祝福したが、高校側は、「大勢の学生を抱えるマンモス大学で、彼が自分を見失わずにやっていけるのか」と、「場面緘黙症」「鬱病」「コロンバイン高校銃乱射事件犯人への憧れ」などの要素から彼の進学を不安視していたという。しかし、これらは「個人情報」に値するため大学に伝えることはできなかった。

 大学1年目、チョの学生生活はこの上なく順調だった。成績もよく、目立たなかったがストレスのない日常を送っていた。しかし、2年目、チョは突然「ロマンス小説家になる」と言い出した。1年目にとった詩のクラスで興味を持ち、休み中に小説を書き上げ、教授に、「小説家になりたいのだが」と相談までした。教授は、「彼が書いた小説は、内容的にはあまりよくなかった。人生も恋愛も経験がないから深みもなくて……。小説家として食べていくのは大変なことなのに」と戸惑った。

 書くことで自分を表現する喜びを知ったチョは夢中になり、専攻を英語学科へと変更。成績はとたんに悪くなり、その年の終わりにアプローチした出版社から手厳しい評価を受け、断られるという目にもあった。否定されたチョは、ますます他人を拒絶するような態度をとるようになり、彼のことをクラスから外したがる教授も現れた。

 3年目、チョは大学のルームメイトから、しつこく誘われ、とあるパーティーに行った。彼は酒が入ると「自分には想像上のガールフレンドがいるんだ」「彼女からはスパンキーって呼ばれる」と話した。さらに、「オレはこんなものを持っている」とポケットナイフを取り出しカーペットに突き立てた。みんな酒を飲んでいたため真剣にとらえることはなく笑っていたという。

 それ以降、チョはルームメイトとは会話するようになった。だが、ルームメイトは会話というよりチョではなく、彼が作り上げた「ミスター・クエスチョンマーク」という別人格への質問という形式だったため、まるでゲームをするようだったと明かしている。

■女性から総スカン! 警察から警告される日々

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 この頃からチョは女子生徒に興味を持つようになり、無断で写真を撮るなどの奇行が目立つようになった。サングラスと帽子をかぶり女子生徒の部屋に忍び込み、「オレが誰だかわかるか、オレが誰かわかるか」とニヤニヤ笑いながら繰り返した。

 身の危険を感じた女子生徒は大学警察に通報したため、チョは警察から警告を受けるということもあった。チョはその後も複数の女子生徒にアプローチをかけるが、みな彼を気味悪く思い、警察に通報。幾度も同じことが繰り返され、チョは「死にたい」と嘆くようになる。チョが精神的に問題を抱えていることを案じたルームメイトは警察に、「チョが自殺、または他害の危険がある」と通報。チョは拘束され精神鑑定を受けることになったが、短期間で問題なしと判断され、解放されてしまった。

 大学に戻ったチョは、唯一会話をしていたルームメイトとも距離を置くようになり、再び孤独に陥るようになった。そして暴力的な本や脚本などを書く日々を送った。

 2007年。チョは4年生になり、卒業後のことを考える年になった。就職先を探したが、英語学科専攻ということもあり上手くいかなかった。精神的に追いつめられたチョは「ミスター・クエスチョンマーク」に続くパーソナリティを生み出す。それが、怒りの塊「Ismail Ax」だったのだ。

■怒りの化身「Ismail Ax」

「Ismail Ax」になったチョは、「自分がこうなったのはお前たちのせいだ」「自分がめちゃくちゃになった、お前らがこうさせた」「革命を起こすときがきたのだ」と、思い込み、数カ月かけて銃乱射事件計画を練った。他人と関わることを嫌い、おどおどしていた少年は、自分の怒りを知ってほしい、自分を怒らせた奴らに制裁を加えたい、注目を浴びたいなどの願望を持つ「Ismail Ax」になり、テレビ局に犯行声明ビデオを送り、事件を起こしたのだ。

 生き延びた目撃者の多くが、チョのことを「大学生には見えず子供かと思った」と油断していたという。チョは、無表情のまま、躊躇することなく学生や教授らを銃で撃った。そして、32人を殺し、23人を負傷させ、警察が到着する前に自殺したのだった。チョも入れると、犠牲者は33名だった。

 チョは、コロンバイン高校銃乱射事件のふたりの犯人を「殉教者」と崇めていた。今年8月26日、同じバージニア州でテレビ生中継中にリポーターとカメラマンが射殺されるという衝撃的な事件が発生したが、後に自殺した犯人はチョを崇め、彼に影響を受けたという犯行声明文を遺している。銃が簡単に手に入るアメリカにおいてこのような事件はなくなることなく、今後もチョらに共感し、同様の事件を起こすものが現れるだろうと恐れられている。

※参照:「YouTube.com」「biography.com」「murderpedia.org」「videogames.procon.org」

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