DNA情報でゲイかどうかが判明する? 新遺伝学「エピジェネティックス」に注目

■新たな遺伝学、エピジェネティックスとは

fuzzyforest1.JPGThe Guardian」の記事より

 足早に紹介したが、ここで我々門外漢にはいくつか疑問が湧いてくるだろう。まずは、100%遺伝子情報が同じであるのに、片方がゲイで片方はストレートという一卵性双生児が存在するのは何故か? これを普通に考えれば、ゲイは後天的な体験や認識の末になるものであり、決してゲイとして生まれてくるものではないということになりそうだが……。

 そしてそもそも、遺伝子情報が同じである一卵性双生児をどうして比較分析できるのか? ここで登場してくるのが、エピジェネティックス(epigenetics)と呼ばれる新しい遺伝子学である。今回の研究も実はこのエピジェネティックスに基づいた研究であったのだ。

 ではエピジェネティックスとは何か? 誤解を怖れずきわめて簡単に言ってしまえば、遺伝子情報の“スイッチの入り方”を分析することである。遺伝子情報がまったく同じである一卵性双生児であっても、ある部分の遺伝子が“オン”になっているかどうかで、兄弟の片方だけが、例えば遺伝的疾患やがんなどを発症してしまうこともあり得る。つまりエピジェネティックスは、どのように遺伝子がコントロールされているのかを見極めることでもあるのだ。

 そして、遺伝子情報がどの部分で活動を停止させられていたか、あるいは活性化させられていたかという“スイッチの入り具合”を示すエピジェネティックマーカーを調べることで、ゲイであることの遺伝子情報レベルでの特色が明らかになったと今回の研究は主張しているのである。いわゆる“カミングアウト”していないゲイ男性であっても近い将来、唾液検査でゲイであることが発覚してしまう事態になるというのだろうか……。


■今後さらに検証を積み重ねることが必要

 しかし同じエピジェネティックスの立場をとる遺伝学者であっても、今回の研究はまだ手放しでは賛同できないという意見が少なくないようだ。まずは研究の浅さである。47組の一卵性双生児の遺伝子情報だけではじゅうぶんとは言えず、まだ仮説を打ち出した段階であって今後さらに検証を積み重ねていかなければ信用に足るものにはならないということだ。

 また、オックスフォード大学・統計遺伝学のジル・マクビーン教授は遺伝子が不一致の双生児である「不均衡発育双生児(discordant twins)」の研究がカギを握ると忠告している。一卵性双生児だけの研究では、浮かび上がったとしているゲイの遺伝子情報レベルの特色が偶然の一致である可能性が高いということだ。

『Born Gay: The Psychobiology of Sex Orientation』の共著者でキングス・カレッジ・ロンドンの心理学者であるカジ・ラハマン博士は「この研究は純粋な遺伝学上の研究とは言えません。他の重要な遺伝子情報や、脳の発育に影響すると考えられている胎児期の男性ホルモン(アンドロゲン)被曝の程度などといった環境因子を考慮に入れることも提案したいですね」と忌憚のない見解を示している。専門家の評価はなかなか厳しいものもあり、やはり今後の研究の積み重ねが問われているということだろう。

 ともあれ、もし仮にゲイであることが遺伝子情報レベルの問題であるとすれば、性的マイノリティとしての立場は今よりもさらに確かなものになるだろう。とすればアメリカ以外の国でも同性婚が普通になることもじゅうぶんに考えられる。今後の研究の進展にも注目していきたい。
(文=仲田しんじ)

参考:「The Guardian」、「Science Alert」ほか

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