首絞め、引っ叩き…虐待の衝動にもがき苦しむ介護士「自分が怖い。逮捕されるかもしれない」

関連キーワード:

,

,

,

――なにもかも失い、完全にメインストリームから外れた“失敗者”たちの次の選択とは? 現場主義のライターが、日々各地で取材するなかで出会った他人事とは思えない“失敗者”たちの生き様に迫る。

ThinkstockPhotos-544141342.jpg画像はThinkstockより

【新シリーズ・失敗者の肖像2】

■虐待の衝動にもがき苦しむ介護士・直子さん(39)の場合

 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入居者19人が刺殺された事件が起きたが、この問題は老人介護にもあてはまる面があるとしてさまざまな議論が起きた。というのも、近年は介護福祉施設や特別擁護老人ホーム等を舞台に、入所者である高齢者に対し、本来彼らのケアをするはずの介護士が、あろうことか惨い虐待を行うという事例が相次いでいることが明らかになっているからだ。

 有識者によると、こうした行為が露見し、事件として世に広まるケースはほんの一握りなのだという。実際にはそれよりも遥かに多い虐待行為が、日々、こうした施設で行われているのが実情なのだ。

「正直、私もいつニュースに出るんだろう? って思いますよ。実際、私に限らず、多くの同業者がそういうことを思って毎日過ごしてるんじゃないですかね」

 そう語るのは、神奈川県内のある介護施設で働く佐藤直子さん(仮名・39)。彼女は既に10年近いキャリアを持つ中堅の介護士だが、そんな彼女は、日々の仕事の中で、“ある衝動”に駆られ、激しい葛藤に見舞われている人物の一人だ。

「ちょっと…突き飛ばしたりとか。そういうのはあります、正直。いや、誤解しないでくださいよ、別にそれで何か快楽を得るとかそんなんじゃないんです。イライラして、ふとした瞬間に、つい…でも逆に言えばそれだけキツいんです。みんなそういう状況だと思います」

 ここ数年、常に入所者過多の状態が続いているという彼女の勤め先では、日本全国にある同様の施設がそうであるように、絶えず人手不足の状態にある。そのため、彼女は1日平均10~12時間程度の労働を強いられ、挙げ句、パートのスタッフがドタキャンなどをすれば、そのたびにシフトの穴埋めをすることが通例化している。月にとれる休みは2~3日ほど。しかもそれでいて、彼女が手にする賃金は、手取りにしてせいぜい14万円程度でしかないという。

「いや、過酷です。過酷でしかないんです。しかも給料は安い。でも、このご時世、大学もろくに出ていないような私みたいな女、高待遇の職なんてないんですよ。だからどんなにブラックだとわかっていても、子どもを養うためには続けないといけないんです」

 安い給料でひたすら過酷な労働を強いられるだけの毎日。ただでさえ生活は苦しく、子どもも徐々に難しい年頃となっていく中で、シングルマザーである彼女が抱える悩みは尽きないが、その上、日々、相手をする入所者たちは彼女たち介護スタッフに対して、まるで奴隷や使用人をコキ使うかのように接してくるという。無論、そのストレスは想像するにあまりある。

関連キーワード

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ