【閲覧注意】双子の片方はエレファントマン ― アダムとニールの苦しくて強い人生=イギリス

 人間の顔は身体の一部分にすぎない。しかし顔面は、そこに存在する各機関の機能だけではなく、表象的な意味も兼ね備えている。これは双子として生れ、片方は普通の外見、そしてもう一方が「エレファントマン」の容貌を持つ双子のストーリーだ。


■双子の一方だけが神経線維腫症タイプ1を発症

 アダムとニール・ピアソンはロンドンの南に位置するクロイドンで育った一卵性双生児だ。幼い頃は母親でさえ2人をよく間違えたほど、そっくりだったという。しかし現在の2人は全く違う姿となり、彼らが双生児とは信じがたいほどだ。

【閲覧注意】双子の片方はエレファントマン ― アダムとニールの苦しくて強い人生=イギリスの画像1アダム(左)とニール 「Daily Mail」の記事より

■5歳で遺伝性の病が発覚したアダム

 双子は神経線維腫症タイプ1 (NF1)という遺伝性の病気を持っている。その症状としてアダムの顔には腫瘍が次々にでき、大きくなっていった。彼の母親のピアソン夫人は双子が生まれた時、彼らに遺伝的な病気があるとは全く思いもしなかったという。彼らが5歳になろうとする頃、アダムが転んで額にコブを作った。しかしそのコブは決して治らず、病院でCT撮影したところ首に気管をふさぐ腫瘍が発見された。そしてそれが後に数十回にもわたる手術の始まりとなったのだ。彼は現在33歳だが、既に33回もの腫瘍の切除手術を受けたと言う。しかしその甲斐なく、彼は片方の目を既に失明、もう片方も視力を失いつつある。


■アダムになることを恐れる二ールも、また病に

 双子の兄弟のニールも同じくこの遺伝子を持っているが、彼の顔に腫瘍は発生しなかった。その代わり、ニールはてんかんと短期記憶障がいに悩まされている。ニールの記憶障がいの症状は彼が14歳になった時に出現した。医者はニールの短期記憶障がいが、神経線維腫症タイプ1 (NF1)によるものと診断した。

 今、彼は医学大学で図書館のアシスタントとして働いているが、記憶障がいの対処法として、厳しいスケジュールを守らなければならない。もし彼が日課を守れなかったり変えると頭が混乱し、自分のした事がわからなくなくなってしまうからだ。しかし最近になり、ニールの記憶障がいは神経線維腫症由来ではなく、ウイルスによって起こる脳炎から誘発されたものだと判明した。ただし、ニールも神経線維腫症タイプ1 (NF1)を遺伝的に持っていることは間違いないという。

 ニールは、いずれアダムのように顔に腫瘍ができるのではと恐れている。

【閲覧注意】双子の片方はエレファントマン ― アダムとニールの苦しくて強い人生=イギリスの画像2画像は「BBC」より


■辛い人生でも、ニールを妬まなかったアダム

 アダムの学校時代は辛いものだった。彼は「エレファントマン」、「せむし男」などと呼ばれ、いじめにあった。思春期の子供は肉体的・精神的にいろいろな困難にぶつかるものだが、アダムの顔の変形はそれをいっそう過酷なものにした。ニールは自分の人生はアダムに比べ容易だと認め、アダムが困難に立ち向かったことを誇りに思うと語る。アダムは双子なのに全く異なる自分とニールとの容貌に関して、決してニールにつらく当たることがなかったと話している。

 アダムは外交的で、かつ鋭いユーモアを持ち合わせている。成長後はそのユーモアで自分を守るようになった。アダムはミラー紙の記者にこう語った。「私が自分をいじめる奴らと同じ思考を持てば、彼らの勝ちだ」そして、「この顔は自分の一部だよ。『僕の身長は何故この高さなのか?』と考えることは意味がないだろう

 彼はその容姿から学校でさまざまなあだ名を付けられ、苦しんできた。成人後はそのつらい経験を活かし、TVやキャンペーンで容姿に障がいを持つ人々の代表としてTV番組をプロデュース、また役者として出演もしている。数年前に彼は、スカーレット・ヨハンソンの映画『アンダー・ザ・スキン:種の捕食』にも出演した。また昨年はスロバキアのバンド「Ciste Tvary’s」からミュージック・ビデオへの出演を依頼されている。

 アダムは英「Daliy Mail」紙に、映画『007』の悪役をいつか演じたいと語った。ただしそれは彼の外見のみから来る役ではなく、中身も悪い人間として描かれた役に限るという。またアダムは今の社会は、幼稚で無知な偏見に満ちていると考える。そして偏見のない社会を作る手助けをしたいと思っている。

■神経線維腫症タイプ1とはどのような病気なのか

「神経線維腫症1型」とは、皮膚や神経など人体のさまざまな場所に異常が生じる遺伝性の病気である。19世紀にこの病気について報告したドイツの学者レックリングハウゼンに由来し、「レックリングハウゼン病」と呼ぶこともある。患者数は約3000人に対して1人の割合で、患者の約50%は両親からの遺伝、残りの50%は突然変異で発病する。神経線維腫症タイプ1は腫瘍や色素斑など、皮膚症状が強く出現する。しかし外見が大きく変化するにもかかわらず、悪性ではなく伝染性もない。


■新たな治療の可能性を模索

 彼の顔の腫瘍の治療法は手術しかないと言われてきた。しかし最近、アメリカの病院から腫瘍を縮小する効果のある薬の被験者にならないかという申し出があった。アダムは、この治験を行っているメリーランド州ベテスダの国立がん研究所に籍を置くワイドマン博士に会うためにアメリカに渡った。

 そこでアダムは、その薬によって腫瘍が小さくなり目と耳の機能が回復した少女に出会った。ワイドマン博士からは、この薬はアダムの視力を改善させる。しかし同時に、副作用からくる網膜剥離が起きる可能性があると告げられた。アダムはこの治療によって得られる利点と危険性、その2つを考慮する難しい選択に迫られている。

 今、アダムは家族を持ちたいと考えガールフレンド探しに集中している

 彼はマッチングサイトのファンで、サイトで相手を探してデートをするのが趣味なのだ。

 だが、彼の病気、神経線維腫症は子供に50%の確率で遺伝する。 彼は真剣に交際できる女性に出会った際には、養子をもらう選択も考えているという。

 自ら進んで社会に出て、同じような問題に悩む人々を助けようとするアダムの不屈の精神力と行動力は実に素晴らしい。いったい何人の人がアダムのように行動できるだろうか。アダムのことを考える時、人間が人を外見で判断することに、理不尽さを感じずにはいられない。
(文=三橋ココ)

参考:「Daily Mail」ほか

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