奇習! 伴侶の死後、石とセックス ― 岩手県に存在した「石抱き」の風習

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 どのような夫婦であっても、また、その期間が長くても短くても、一度、生涯の伴侶と定めた相手に先立たれるのは、「辛い」という言葉だけでは言い表しきれないような、なんとも辛い経験である。しかし、かつて岩手県のとある地域では、そうした“心の穴”を埋めるべく、伴侶の死後も「石」をその代わりとして愛し続けるという、なんとも不思議な風習が存在していたという。

奇習! 伴侶の死後、石とセックス ― 岩手県に存在した「石抱き」の風習の画像1画像は、Thinkstockより

そうだよ、夫や妻の代わりにね、石をその相手だと思って、一生一緒に暮らしていくっていう習慣だね。さすがに今じゃ誰もやっちゃいないと思うけども…

かつて、その幼き日に、年老いた祖母から聞いたという、「石抱き」の習慣について今回我々に語ってくれたのは、岩手県の上閉伊郡に住む元自営業・藤川昭雄さん(仮名・81)。藤川さんの話によると、彼の祖母がその若き日に暮らしていたという同県北部のある地域では、連れ添った伴侶に先立たれると、村の神職から与えられた「石」を伴侶の代わりとし、「自分が死ぬまで共に生きる」ことを求められたという。

たとえば嫁さんが死ぬだろう?そうすると、まずその遺体にね、山から切り出した石をね、抱かせるの。そうするとね、嫁の魂があの世へは行かずにね、いつまでもその石の中に留まるっていう。だからね、その石をね、嫁さんだと思って、自分が死ぬまで大事にするの

 藤川さんの話をまとめるとこうだ。まず、夫か妻のいずれかが先に他界した場合、村はずれの山から切り出した石を、その遺体の胸に抱かせ、初七日が過ぎるまでその状態にしておくという。すると、その間に、死者の魂が遺体から石へと移るため、初七日が過ぎた後は、新たにその「石」を死者の代わりに家へと迎え入れ、以後、その「石」を「亡き伴侶の魂が宿るもの」として位置づけ、遺族が寝食を共にしていくのだそうだ。そのため、この地域ではこの「入れ替わり」が完了する初七日まで、死者が埋葬されることはないのだという。

そこに入る人によって、“嫁石”とか“夫石”だとかって呼ばれてたらしいんだけども、ね、結局はさ、それは人から見ればただの石なんだよ。けどもね、当人にとっちゃ大事な連れ合いだからね、飯や風呂も一緒にするし、裸で抱いたりもする…まあ、物は考えようなんだろうけども、よその人からするとね、ちょっと想像がつかないかもわからんね(苦笑)
 
 とはいえ、いくら当地の人々の間でそれが大昔から定着してきた行為であったとしても、我々からすれば、単なる「石」に語りかけたり、風呂や食事を一緒に行うというのはどう贔屓目に見ても異常な行為。ましてや夫婦の営みにも似た行為を、その「石」相手に全裸で行うというのは、あまりに常軌を逸した行動であるとしか言いようがない。

そりゃそうだよ、あくまでそれは大昔の話でさ。俺らの世代だって、じいさんばあさんから聞いたっていう程度の話でね。…今?知ってる人だってほとんどいないだろうねえ

 そのあまりに特異な行為ゆえなのか、いつしかそうした習慣も廃れ、今となっては「昔話」としても知っている者はほとんどいないというこの奇習。その根底にある「亡き伴侶への想い」という点については、理解できなくもないのだが…如何だろうか。
(取材・文/戸叶和男)

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