スマトラ島沖地震から12年、タイには津波死者ゼロの地域があった! 子々孫々に受け継ぐべき「津波から生き残るための10則」とは?

■少女の訴えが、多くの人の命を救った!

 同じくプーケット島の北端には、マイカオ海岸というリゾートビーチがある。高級ホテルも立ち並び、日本人を含めた外国人観光客に大人気の場所だ。

 スマトラ島沖地震の発生時、ティリー・スミスという当時10歳の英国人少女が、家族とともにマイカオ海岸のホテルに滞在していた。地震発生の瞬間、ティリーは7歳の妹と一緒にビーチで遊んでいたが、海に異変が生じたことに気がついた。海岸に寄せる波が白く泡立ち、そして潮が引いていったのだ。

ティリー・スミスのストーリー(英語) 動画は「YouTube」より引用

 彼女はとっさに、2週間前に英国の学校で習ったことを思い出した。「潮が海岸線から引いていき、白い泡が立つ現象は津波の前兆」と、まさに先生から教えられていたのだ。彼女は両親のもとへ走ると、「津波が来るから逃げましょう」と伝えた。その緊迫した態度から両親は事の重大さを悟り、津波が来ることを周囲の人々やホテルの管理人に伝えた。そしてティリーの家族が異変を伝えた人々は、被災することなく全員が無事だった。


■教訓の伝承も大切だが……注意点も

 モーケン族とティリー・スミスのエピソードから得られる教訓は、津波の被害を受けた土地では、その時の経験や知識を子々孫々に伝える努力が必要だということ。そして、ティリーのように災害に対応するノウハウを学んだ時には、それを忘れないよう努力し、周囲にも伝える努力が大切だということだ。

 しかし、ここで注意しなければならないのは、津波の前兆現象に関する中途半端な知識や誤信が、逆に悲劇を生み出すケースもあるという点だ。2011年3月11日に東日本大震災が発生した時、岩手県大槌町では引き潮が起きていないように見えた。三陸沿岸に住む人々は、「津波が来る前には必ず潮が引く」と信じていたため、町の中心部にある高台に避難した人々からは「本当に津波が来るのか?」という声も上がり始めた。その状態が20分間ほど続くと、高台の近くに住む一部の住民は、貴重品を取りに行くなどと言って家に戻ってしまったという。

スマトラ島沖地震から12年、タイには津波死者ゼロの地域があった! 子々孫々に受け継ぐべき「津波から生き残るための10則」とは?の画像3イメージ画像:「Thinkstock」より

 沖合の海面が大きく盛り上がったのは、その直後だった。「津波が来たら呼んでくれ」と言って高台から降りていった人々に声をかける猶予もなく、津波はあっという間に町の中心部を呑み込んでいった。結局、大槌町では約800人の命が失われてしまった。

 東北大学大学院・災害制御研究センターの今村文彦教授は、「引き潮がない津波もある。津波の前に必ず潮が引くという認識は正確ではない。親から聞いたり、自らが体験したりして誤信が定着していた」(河北新報、2011年5月1日)と指摘する。その時、実際は潮が大きく引いていた可能性が高いが、湾の水深や形状、そして港の地盤沈下によって、潮が引いたようには見えなかったのではないかと今村氏は語る。

 その地に受け継がれてきた忠告を守ることは、災害からのサバイバルのために必要だが、それを過信しすぎても逆効果になることがあるようだ。大槌町のケースは、津波に対する不正確な知識や油断が、より多くの犠牲者を出してしまったものといえるだろう。

スマトラ島沖地震から12年、タイには津波死者ゼロの地域があった! 子々孫々に受け継ぐべき「津波から生き残るための10則」とは?のページです。などの最新ニュースは知的好奇心を刺激するニュースを配信するTOCANAで

トカナ TOCANA公式チャンネル