引きこもりに朗報! 自分仕様の“二次元カノジョ”
引きこもりに朗報! 自分仕様の“二次元カノジョ”と永久生活の時代へ!? AIとVRが導く未来/インタビュー
今から33年前、宮﨑駿監督がリリースしたアニメ「風の谷のナウシカ」。その中に出てくる夢の小型飛行機メーヴェを16年かけて自ら開発した鳥人または超人がいる。その名も、八谷和彦(50)さんだ。
今回トカナは、現在メディアアーティスト・東京芸術大学美術学部先端芸術表現科 准教授として活躍する八谷氏にロング・インタビューを敢行。メーヴェ開発に至る思い、超現実のVR開発や急速なAIの進化における第4次産業革命シンギュラリティに至る未来、小型ロケットビジネスから、ユニークな作品を生み出す成功哲学までに迫った。

――VRとAIは今後どのように発展していくと思われますか? メディアアーティストとしての視点からお答えください。
八谷 僕の場合、AI技術を作品に活かそうとはあまり考えてないのですが、人工知能がもたらす社会的な変革は無茶苦茶大きくて、教育などに与える影響も大きいと思ってます。ひょっとしたらインターネットの登場よりも世界を変えるかもしれません。もちろん、プラス面もありますが、ネガティブな懸念もある。やっぱり、基本的には多くの人の仕事を奪う技術だと思うんですよね。産業革命の頃には、技術革新によって雇用を奪われると考えた労働者が機械を破壊した「ラッダイト運動」が起きたのですが、AIの登場で職を失うのは労働者ではなくホワイトカラーや専門家の可能性があるんです。
――単純労働ではなく?
八谷 むしろ、単純労働の方が生き残ると思うんです。例えばですけど料理を作るとか、マッサージするとか……サービス業の中でも、そういうお仕事は最後までコンピューターに置換されないと思います。
一方、弁護士の場合は、これまでの裁判の判例をどのくらい知ってるかが重要になりますよね。判例の下調べは、弁護士事務所の中でも新人や重要なポストに就いていない人たちがやっているという話ですが、そういう仕事がどんどんAIに置換される可能性はあります。また、グーグル翻訳はディープラーニング技術が上がるにつれて、急に精度が高くなりますよね。それを踏まえると、翻訳家や同時通訳などの超プロフェッショナルな仕事も置換されるかもしれません。学校の教育も、AI先生が家庭教師のように子どもの頭脳にあわせて、授業をしていくようになるかもしれません。いずれにせよ、わりと近いうちに大きな波がきて世界が変わる可能性があるかもしれませんね。
――芸術はいかがでしょう?
八谷 アーティストの仕事は意外と最後までAIに奪われないんじゃないかと思っています。さっき挙げたマッサージ師や料理人に近い感じです。例えば、アーティストの奈良美智さんそっくりの絵をAIが描けたとしても、別にそんな絵は誰も欲しがらないわけで、奈良さんが手で書いたということにみんな価値を感じるわけですよね。「人間が自分の時間を使って成し遂げた」というところに価値を感じるはずなんです。音楽家やアイドルもそうです。生身の人がやっていることに価値がある仕事は残るはずなので、AI技術の革新は、アーティストにとってはむしろプラスに働くかもしれません。
AIが人の仕事を奪って“仕事の総量”が減ったら、どう考えても日本の全人口に回す仕事がなくなるわけですよね。そしたら、最低限所得を保障する「ベーシック・インカム」などのシステムを導入することに現実味が出てくるのではないでしょうか。「最低限の生活の保証はするからみんな好きなことやって」って。もしも日本が一億総アーティスト国家になったら、そこで目立つのは大変になるかもですが、世の中の豊かさは増すかもしれません。

――VRに関してはいかがでしょうか?
八谷 VRは、Oculus社製の「Rift」や「HTC VIVE(エイチティーシーバイブ)」など性能の良いヘッドセットが流通し始めましたよね。ヘッドマウントディスプレイという目を覆うディスプレイ自体は20年位前から出ているんですけど、今は断然性能が上がっているうえに、価格が安くなっているので、短期的なビッグウェーブはくるでしょうね。
――「※ポストペットVR」も作られていますしね。
八谷 実は、VRだけではなく、AIの要素もポストペットに入れようと思いるんです。まあもともとポストペットの中にはすごくプリミティブなAIの要素が入っているんですけど。例えば、お腹が減ってくると機嫌が悪くなるみたいな。それのもう少し精度が高いものを入れて、VRと組み合わせた「ポストペットVR」ならば、「仮想空間の中のペットのようなもの」ができるかもしれないと思ってます。
※「ポストペット」とは、インターネットが一部のマニアのものだった当時、ペットを使ったコミュニケーションという新しい楽しみ方を提供し、それが幅広い層に受け入れられ爆発的なヒットを記録した八谷氏の開発品。以来バージョンアップを繰り返し、累計出荷数は1,500万枚。現在、ポストペットの新タイトル、PostPetVRのクラウドファンディングを展開中。
――実際にどれくらいペット感覚を味わえるのでしょうか?
八谷 現状はまだ試作品だから、こんな感じですね。まずはPC版を作ってからスマホに移行していく予定です。開発時間を十分かけれるようでしたら、よりペットに近くなるようにはしたいんですよね。

八谷 今まで僕らの体は3次元であって、アニメっぽいコンテンツは2次元にあったんですけど、VRはその中間。だから、もう嫁は2次元で良い、みたいな人が2次元に行くのにVRは最適なツールと思います。だから、仮想空間の中でペットが飼えるようになったら本物の子どもを求めなくなる人も出てくるでしょうね。恋愛も、仮想空間でできるわけですし。
たとえばそれが初音ミクだった場合は、中田さん(筆者)のVR空間の中にいる初音ミクと僕の空間の中にいるミクは、個体差が出てくるわけで、より“あなた仕様”になっているのです。なら別に自分をわかってくれない3次元の彼・彼女なんて要らないみたいな方向に進む人もきっと出てきますよね。そういう人が、いずれ「じゃあ、ずっとヘッドセットを被ればいいんじゃないの」って発想すると思うんです。実際に、VR空間の中で仕事ができる「仮想デスクトップ」を作って、ずっとVR空間にいるためにはどうすればよいのか? を実装している人達もいますからね。たった5~6分被るのではなく、半日以上被り続けて生活と一体化する方向に人々が向かう可能性もかなりあると思っています。

――まるで「マトリックス」の話みたいですね。
八谷 実際「マトリックス」なんですけど(笑)。やっている人にとってはディストピアではなくて、ユートピアに近いのかな。現実よりも快適な空間が目の前にあれば、人はそこにハマってしまいますからね。実際に、インターネットも当初は1日中ネットを使う人なんていなかったのに、「2ちゃんねる」などさまざまなコンテンツができて、常時接続が当たり前になって、入り浸る人は格段に増えましたよね。今はもうSNSやLINEに入り浸る人なんてそこら中にいる。つまりこれは “そっちの空間”に人は既に行ってるということです。だから僕は、ゴーグル着けて全部できるようになったら、人は簡単に“そっち側”に行くんじゃないかという気がしないでもないんです。
――なんだか、ちょっと怖い気もしますね。
八谷 怖いというか楽しいですね。VR用のOSを開発しているGOROmanさんというすごい方がいまして。これはまさにVR空間で全部やってしまおうというコンセプトなんですけど。いつも横に初音ミクがいて自分と遊んでくれたり、仕事しつつも、横にミクがいるとか……そういう感じなんです。今現在、その人が何を研究しているのかというと、ゴーグルを被った状態で声で家中のことを実施できるようにしてて。「湯張り」って言うとお湯が張られたり、エアコンや照明をコントロールすることを考えているようです。いかにゴーグルを外さなくても快適な空間が作れるかを研究しているということですね。
――そうすると、それはグーグルグラスのようなものですかね?
八谷 いや、グーグルグラスは、外にいながらもスマホが常にあるという、リア充向けのモノですが、VROSは「もう引きこもりを極限までやっちゃったらよくない?」という発想ですからね。
まるで「ドラえもん」のいる世界の話を聞いているような感じであったが、実際にこれらの技術は現在進行系で今も進化し続けている。次回は具体的にAIが社会のインフラとしてどのように我々の社会に浸透していくのかを詳しく紹介する。乞うご期待!
(取材・文=中田雄一郎)
●八谷和彦
1966年4月18日(発明の日)生まれの発明系アーティスト。
九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)卒業。コンサルティング会社勤務後(株)PetWORKs を設立。現在にいたる。
作品に《視聴覚交換マシン》や《ポストペット》などのコミュニケーション・ツールや、ジェットエンジン付きスケートボード《エアボード》やパーソナルフライトシステム《オープンスカイ》などがあり、作品は機能をもった装置であることが多い。また、311震災以後は「ガイガーカウンターミーティング」などサイエンス・コミュニケーション系の活動もちらほら。
2010年10月より東京藝術大学 先端芸術表現科 准教授。
・現在、ポストペットの新タイトル、PostPetVRのクラウドファンディングを展開中! ぜひチェックしてみてくださいね↓
・https://camp-fire.jp/projects/view/14723
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