「空腹時にライチを食べると死ぬ」は本当か? 未知の毒性分を含むライチと血糖について徹底解説!

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●病気の原因はライチ

lyche0206.jpg画像は、TIMESより

 症状を呈した子供達の行動を調査したところ、大半が「ライチの果樹園」で遊んでいたことが判明。そしてこの病気を時期とも照らし合わせて調べていくと、ライチの収穫期にほぼドンピシャで一致することが判明。彼らが果樹園で木の下に落ちたライチの実を食べていたことから、これらの中毒はライチに含まれる毒素ではないかという結論に至りました。そして実際にライチの実、特に未熟な実には多く「ヒポグリシン」が含まれており、それが低血糖を引き起こし病気を発生させていたということです。

 ヒポグリシンによる中毒は、今回のライチ中毒も青いライチを食べないように……と親に指導することで回避できる……と話は一端決着したように思われました。

 しかし、これでは不明な点が残ります。ライチは世界的に熱帯地方で生産されている果物で、わざわざインドの限られた地方で起こり、輸出先では起こりえないのか? 毒ライチと無毒ライチがあるのでしょうか? ひょっとして農薬の影響? などなどいろいろな調査が続行しました。

 先の論文によると、ライチやアキーにはヒポグリシン(とその類似物)という毒素が含まれており、未熟な実には特に多く含まれていることが分かりました。そして、これらの毒やその代謝物は体内で“糖新生”という血糖値を安定化させるメカニズムを阻害することも知られており、ジャマイカではライチの近縁種である同様の毒素を含むアキーの実を食べて起こるといわれていることがわかったことで、より深く病気の正体が見えてきました。


■なぜ生産地でしか病気が発生しないのか?

 しかし、それでもこの病気が生産地でしか起こっていないのは不思議です。未熟な実も海外に間違って輸出されてしまうこともあるからです。

 その理由は簡単でした。
 
 患者の多くは貧困な地域故に、体脂肪率は低く、加えて十分な夕食を摂れておらず、その空腹から、果樹園に落ちている青いライチを食べていたことが原因と判明

 血糖値を維持するための体脂肪が少ない成長期の子供にとって、青いライチの毒性は代謝異常を起こし、急激な低血糖を引き起こすという最悪の最悪のマッチングを起こしていたのです。そして、低血糖からの合併症で神経から内臓にいたるまで様々な病態を示し、あたかも感染症のような病気となっていたことが判明したのです。

 ライチが輸出される国は、日本も含め大半が、豊かな国です。貧困層はいても、飢餓状態の人は滅多にいないことはご存じの通り。つまり、この毒は体脂肪が低く、さらに食事を満足に摂れていない状態でのみ致死的に発動する極めてマニアックな毒だといえるでしょう。豊かな国では死者が出ないのも当然です。

 とはいえ、「南国のフルーツは基本的に青いときに食べない方が良い」というよくある話はわりと信憑性のある話というオチでもあります……。気が向いたら、その血糖値の阻害メカニズムと我々の血液の恒常性についてまとめようと思います。

 需要無さそうな気しかしませんが……(笑)
(文=くられ)

●くられ

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 添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、「アリエナイ理科ノ教科書」の著者、サイエンスライター。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。ひっそり大学で先生をしてたりもする。WEBや雑誌での薬と毒関連の連載をまとめた新刊『悪魔が教える 願いが叶う毒と薬』(三才ブックス)が好評発売中。

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コメント

1:匿名 2017年2月7日 02:32 | 返信

日本でも、減量して干からびたボクサーが、計量直後に食べたら死ぬかも

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