高濃度のヒ素汚染地域でヒ素に強い遺伝子を持つ“進化系住民”が爆誕していることが判明!=チリ

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 南米のヒ素に汚染された水を飲用している人々の間で、なんとヒ素に強い耐性を持つ遺伝子が広がっているという。科学メディア「New Scientist」が伝えている。

高濃度のヒ素汚染地域でヒ素に強い遺伝子を持つ進化系住民が爆誕していることが判明!=チリの画像1画像は「New Scientist」より引用

■アタカマ砂漠の厳しさの中で

 南米のチリ、ボリビア、アルゼンチンに広がるアタカマ砂漠は、世界一乾燥している砂漠地帯である上、水源地のいくつかは高濃度のヒ素で汚染された、生命にとって極めて厳しい環境にある。とりわけ、チリ北部に位置するカマロネス渓谷のヒ素汚染は深刻で、水1リットル当たり1mgものヒ素が含まれているという。これはWHO(世界保健機関)が定めた安全基準の100倍に当たる。しかし、この地域には代替となる水源が存在せず、人々は7000年もの昔からヒ素に苦しめられてきた。

 このカマロネス渓谷の人々の遺伝子を調べた結果、チリの他の地域の人々に比べ、高いヒ素耐性を有していることが判明したというのだ。今回の調査結果は2月発行された学術誌「American Journal of Physical Anthropology」に発表された。


■ヒ素、何がヤバいのか?

 そもそもヒ素は、岩石や土壌中に含まれているありふれた物質であり、河川や地下水を汚染することも多い。現代でも、南米をはじめインドやバングラディシュなど世界中のあちこちで、水源のヒ素汚染が重篤な問題を引き起こしている。

 高濃度のヒ素を含む水を長期間飲用した場合、まず皮膚の炎症や色素異常、しびれなどの神経症状が起こる。初期段階であれば治療も可能であるが、症状が進むと皮膚や内臓のガンが多発し、手足の末端は壊死することもあるという。また、流産や子どもの発育異常なども引き起こすといわれている。

高濃度のヒ素汚染地域でヒ素に強い遺伝子を持つ進化系住民が爆誕していることが判明!=チリの画像3イメージ画像:「Thinkstock」より

■人間とヒ素“7000年の戦い”の果てに人類に起きた変化

 今回調査された遺伝子「AS3MT」は、体内でヒ素をメチル化して毒性を低下させる機能を担っている。AS3MTの機能性は「一塩基多型」という遺伝子中のほんの一塩基の違いにより差が見られることが知られており、ヒ素の無毒化や排泄の効率の違いに影響していると考えられている。そして、カマロネス渓谷の人々の実に68%が、高いヒ素代謝効率を示す型のAS3MTを持っていた。しかも、同時に調査されたチリ国内の2地域と比べて、高いヒ素耐性を示す型を持つ人々の割合は明らかに低かった(それぞれ8%と48%)。

 では、これらの事実が何を示しているのか? 今回の結果は、高濃度のヒ素に苦しめられてきた人々の間で、高い耐性を持つ人間が選択されて子孫を残してきたことを示している。カマロネス渓谷で見つかった世界最古7000年前のミイラも、生前は慢性ヒ素中毒に苦しんでいたことがわかっている。カマロネス渓谷の人々が持つ高いヒ素代謝能力は、厳しい環境との戦いの中で、とてつもなく長い時間をかけて勝ち取った成果といえるだろう。

(吉井いつき)


参考:「New Scientist」、「Wiley Online Library」、ほか

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