奇習! 書いて、寝取って、金もらう! 愛知県に実在した「恋文代筆屋」の淫夢

奇習! 書いて、寝取って、金もらう! 愛知県に実在した「恋文代筆屋」の淫夢の画像2画像は「Thinkstock」より引用

 エドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を原作として1990年に映画化され、大ヒットした同名映画では、自分のルックスに大きなコンプレックスを抱える主人公・シラノ(ジェラール・ドパルデュー)が、若い男女の恋をとりもつべく、自分の素性と心を偽って、恋文を代筆したりといった“傷心のキューピッド”役として奮闘する姿が、多くの人々の心を打つこととなったが、古今東西の史料を眺めていくと、こうしたキューピッド役の中は、必ずしもその責務を全うせずに、自らの悦楽のためだけに奔走しているケースが目立つように思う。

要はラブレターの代筆ですよ。若いカップルたちのための。昔は今みたいに便利じゃなかったですからね、そういう仕事を裏で引き受けてくれる便利な人がどこの地域にもいたものです

 かつて愛知県のとある地域に実在したという、「恋文代筆屋」の実態についてそう語りはじめたのは、同県在住の元教員・上山敬三郎さん(仮名・80)。上山さんの話によると、その「恋文代筆屋」は、かつて当地に実在した“もぐり”の商売の一つで、若いカップルたちの多くは、こうした稼業を行う者に、自らの恋愛成就を託すのが慣例化していたという。

たとえば若い男の人がいますよね、その人が誰かよその女の子を好きになる。そうすると、泣けなしのお金を払って、そういう人にラブレターを書いて、配達してもらうんです。すると、相手から返信が来るでしょう? もちろん、最初から返信をもらえるとは限らないんですけども、そこを“ひと押し”してくれるのが、彼らなんですよ。だから、代筆と配達と交渉の三役をやってくれていたわけですね。あくまで、“表向き”には、ですが

 通常、現代社会における恋愛といえば、直接対面によって行う「告白」のほかにも、メールやLINEなどを使ったネット告白なども珍しくなくなってきているが、当地においては、昭和初期の頃まで、各地域にいる「恋文代筆屋」に、相手の素性を伝え、金品と引き換えにラブレターの代筆や配達をしてもらうことで、最初のデートから結婚までの道のりをアシストしてもらう習慣が存在していたという。これだけ聞いていれば、それこそ“有料版シラノ・ド・ベルジュラック”といったところで、それ自体、なんともほのぼのとした文化のように感じてしまうが、上山さんの話によると、この「恋文代筆屋」の中には、とんだ不届者も数多く存在していたのだそうだ。

当然、それぞれのことに詳しくなりますから、それを邪な形で使えば、依頼人にとっての意中の人を自分がとっちゃうなんてこと、できてしまうわけです。そういうことが増えれば問題になるのでしょうけれども、なにせ、もともと直接相手に聞けないような人だから、頼むわけでしょう? その“間”で何をやられたとしたって、確認なんかできやしないんです

 ラブレターの代筆や配達という、その“業務”の性質上、「恋文代筆屋」というのはどうしてもカップルたちの個人情報に詳しくなり、また、その情報をコントロールできる立場になるのだが、その性質を悪用し、依頼主の意図を無視して、女性を寝取るケースが目立ったのだという。無論、そうした裏のプロセスを、男性側は知る由もなく、場合によっては自分が恋い慕う女性を寝取られた挙句、その相手に自分の失恋を慰められるといった、なんともおかしな展開になってしまうことも珍しくなかった。

まあ、ああいう人らを使ってラブレターを届けてね、実際、どのくらいの男女が結ばれたかはわかりませんが、今の人の感覚で言えば、明らかに詐欺じみたものでしょうね。もともとチンピラ風情がやる商売だったわけですから

 こうした「間接的な告白」とは違い、今ではどんなに離れている相手に対しても、インターネットなどを使って簡単に自分の気持ちが伝えられる時代となったが、逆にその分、様々な揉め事が増えたこともまた事実。さすがに自分たちの個人情報を悪用するような件のアコギな「恋文代筆屋」では困るが、それが健全な形で運用されるのであれば、そうした稼業の存在自体は、悪いものとは決め付けられない部分もあると言えそうだ。
(取材・文/戸叶和男)

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