
グロテスクでエロティック、ユーモアにあふれるビジュアルを見ているだけで、さっそくアディクションになってしまいそうな“天然の才”にあふれる注目アーティスト、林千歩。現在開催中の個展『初美カコ -Project MUSE-』(4月16日まで)も好評である。
「映像作品でも、油絵の技術は活かせています。顔にメイクするというよりは、顔に絵を描いている感じなんです」
前回みてきたように、芸大1年生のとき、彼女は自らを作品化する映像表現に挑戦して、さっそく好評を得た。そのために、学部時代からグループ展での活動を展開していくことになる。
「子供の頃から一人遊びが好きだった。トイレの中で、何人もの人を演じて、ずっと遊んでいるような。なんでも擬人化して、そこにない風景が見えちゃうみたいな。そんな自分の頭の中を作品化するには、やっぱり映像が一番だったんです」
話しているだけでもその天然ぶりにヤラれてしまいそうだが、2009年には爆笑問題が出演するNHKのテレビ番組に取り上げられたり、2010年には芸大校内で開催された『トランスフォーメーション・イン・大石膏室』にも出品している。そして、2011年には、吉祥寺Art Center Ongoingにて、初の個展を開催。そのときに発表したのが、小豆島での滞在制作で手掛けた第一作目であった。畑仕事をする老人たちに次々と声をかけて、協力者を募って制作したというが、内容的には非常にぶっ飛んだものになっているのだ。
「突然、巨大なカタツムリが現れて、おじいちゃんやおばあちゃんが持っている宝物をプレゼントすると、カタツムリがみんなに若返る魔法をかけてくれるんです。そうすると、みんなが子供になっちゃうというストーリー。宝物を持ってきてって言ったら、おじいちゃんたち、本当に大切なものを持ってきてくれちゃって」