シャブ中の妄想を嗤うな ― ドラッグで見える幻覚・妄想は、我々の生活の中にも存在していた!?(石丸元章インタビュー)

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ThinkstockPhotos-533049757.jpg画像は、Thinkstockより

■ドラッグの神様の危険なお告げ

――なんだかんだ言っても、ドラッグの神様のお陰でいい思いをしているわけですよね。

石丸「自分のこれまでの研究結果では、脱法ドラッグの神様も違法ドラッグの神様もたぶん同じ一族なのよ。自分の神様の名前は、『土井』で、初老の男性であるということまでは分かっています。

 ドラッグの神様が、なんで自分にお告げをくれるのはか分からない。そのお告げがいいとか悪いとかっていうのも、我々の感覚次第じゃないですか。お告げの内容に対して、日常的な因果関係を求めても仕方がない。ただ、なんとなく周りの中毒者をみて思っているのは、『うっかりお告げを聞いて実行すると、えらい目に遭う』ということ。とはいえ、ある程度従うと面白いことになるというのも分かっているんです」


――たとえば、「車で暴走しろ」みたいな危ないお告げはありますか?

石丸「まあ、そのへんのことはありますよ。たとえば、喫茶店でコーヒーを飲んでいると、『それはシリコンだ』というお告げが聞こえて来た。自分は、『このコーヒーを飲むとお腹の中でシリコンが固まってしまう』と思い込んでしまった。そこで、口に入れたコーヒーを、カップに出したり入れたりしていたんですよ。結果、喫茶店から追い出された、みたいなことはある。ハハハ……。そう言えば、外を全裸で歩いたこともありましたね」


――全裸で外を歩いて、逮捕されなかったんですか?

石丸「電信柱の影から影に隠れながら移動したんです。その時はたまたま逮捕されなかったけれど、でもね、おっかないでしょう? だから、お告げに従っちゃいけないんです」


■妄想を否定すると危険

――話はまたASKAさんに戻りますが、仮に世の中の全員の人がドラッグを使用してみんなが妄想を抱くようになったら、ASKAさんの言っていることにも納得するようになるんでしょうか?

石丸「さっきも言ったように、妄想自体は誰もが持っているんですよ。ただ、なかでも「突飛な妄想」というのがあり、ドラッグを使用するとこの「突飛な妄想」を抱きやすいんです。だから、世の中の全ての人がドラッグを使用したら、いまおっしゃったようなことが起こりえるかもしれません。

 ただ、自分は「納得する」ことがそんなに大事だとは思ってないんですよね。たとえばASKAさんがそう言っているからといって、ファンの人たちが無理やりそれを信じる必要もないのよ。ASKAさんの世界もそうだけど、自分の世界もまた独特のものなんだから、みんなが同じではなく違った世界を生きててもいい。それぞれがそれぞれに対して宇宙人というかね。だって、そう考えるしかないでしょう?

 たとえば、芸術家の草間彌生は、世界が水玉に見えるわけでしょう? 草間彌生に対して、『そんな風に見えるわけない』と否定しても意味ないのよ。だって、そう見えるんだから。

 だから、ASKAさんが『盗撮・盗聴されている』と言っていることに対して、否定しても意味がない。なんで世間は、草間彌生を否定しないのにASKAさんを否定するのか? まったく謎なのよ。だって人間は、人それぞれ違う妄想の世界を生きているじゃない。薬を使おうが使うまいが関係なくね。

 でも、人間は違うものを戦わせて、どっちかに統一したがる性質があるわけですよ。なぜなら、現実というのはひとつだという前提があるから。その唯一の現実がゆらぐのが怖いから、『どれが真実なんだ!』と騒ぐ。でも、みんなが違う現実を信じてていいわけ。それを戦わせる必要も、互いに納得しあう必要もないんです。そんなのできっこないんですから。

 最近、現代美術って、面白い作品がたくさん作られているでしょう? 若い作家たちは、自分の妄想を作品の中に炸裂させているんです。現代美術が今、流行しているのは、ロジックで責め合わなくてもいいからだと思ってます。音楽もそうだよね。どっちが正しいとか、そういうのがなくて、もっと感覚的なところで作品を享受することができる。現代美術の隆盛は、だから必然だと思ってますよ」


――他人の妄想を否定するのは、いけないということですね。

石丸「否定したことで、相手が死んでしまうかもしれないし、逆に殺されてしまうかもしれない。たとえば、恋愛は妄想状態だから、『別れる』と言われると、運命の人だという妄想が壊れちゃうわけです。運命の人とともに生きていく、という意味においてその人は世界と関係を持ってきたのに、それが別れてしまうということになると、世界との関係が切断されてしまう。これは受け入れ難い。だから、妄想から逸脱した行動をとろうとする相手を殺してしまうわけじゃない。『運命の人だったけれど、死んでしまったんだ』という形で、妄想を維持することができるわけです」


――ストーカーの妄想がそうですね

石丸「小金井市女子大生ストーカー刺傷事件(注4)も典型的なストーカー事件でしたよね。だから、妄想というのは怖いわけです。でも、その人にしてみても、妄想だと突きつけられて現実を見せられることは、自分のすべてが消滅してしまうことだから、たまらなく怖いんです。その人にとっては、自分が死ぬか相手が死ぬかぐらいの重大なこと。恋愛においては、自分が死ぬのも相手を殺すのも同じなんですよね。だったら、自分が死ねという話なんだけれど」

(注4)東京都小金井市で2016年5月、芸能活動を行っていた冨田真由(当時20)さんが ストーカー化したファンに刺されて重症を負った事件。


――ASKAさんは今後、どうなってしまうのでしょうか?

石丸「ASKAさんは、自分の世界地図にもとづいた面白い作品を作ってくれるんじゃないかと期待しています」


――現在、ASKAさんとは、連絡は取ってないんですか?

石丸「全然ないです。そもそも住んでいる宇宙が違うから、電波が通じないんですよ。だけど、ドラッグの神様を通じての衛星電波でなら通じることがあるかもね(笑)」

 ドラッグの神様によって引き合わされたASKAと石丸氏。異質の2人が出会ったことで、ビッグバンが起きき、異なる世界が融合し、新たな宇宙が誕生したのかもれない。そして、その衝撃が時空を歪め、ASKAの奇怪な騒動を巻き起こした一因となったのだろう。
ドラッグの神はまた再び、この危うく面白い2人を再会させるだろうか?

 出版記念インタビュー第3回目は、石丸氏に「ドラッグと妄想、そして量子力学」、「ASKA『尿・お茶すり替え事件』の真相」を語ってもらう。
(取材・文=白神じゅりこ)

石丸元章(いしまる・げんしょう)
1965年生まれ。法政大学中退。作家。GONZO・ジャーナリスト。80年代から、『ポップティーン』、『GORO』などの雑誌に寄稿。96年、自身の経験をもとに描いた私小説的ノンフィクション『スピード』を出版、ベストセラーとなる。2014年より土木系総合カルチャー誌『BLUE,S MAGAZINE』の主筆を務める。その他の著書として、『アフター・スピード』、『平壌ハイ』、『DEEPS』、『 KAMIKAZE神風』、『fiction! フィクション』など。訳書にハンターS. トンプソン著『ヘルズエンジェルズ』。

【イベント情報 4月22日】
『覚醒剤と妄想 ASKAの見た悪夢』出版記念 極・妄想的トークLIVE
【出演】
石丸元章(GONZO作家)
磯部涼(音楽ライター)
角由紀子(編集者)
2017年4月22日(土)
開場 18:30 / 開演 19:00
前売¥2,000- / 当日¥2,500-
※ワンドリンク(500円)別
〒160-0022 新宿区新宿5-12-4 リーレ新宿ビルB1 
場所・http://lefkada.jp/
チケット・チケットはコチラ

 あのベストセラー『スピード』の著者・日本のGONZOこと石丸元章待望の新刊『覚醒剤と妄想 ASKAの見た悪夢』出版を記念し、新刊『ラップは何を映しているのか』(共著)が話題沸騰中の音楽ライター・磯部涼、オカルト系WEBマガジンTOCANAの編集長・角由紀子をゲストに迎え、「妄想のおもしろさ」を語り尽くすトークLIVE。合い言葉は「妄想を創造せよ」。本には書きたくても書けなかった本当にヤバい話、しちゃいます。

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