日本が“一般年収122年分”の値段で購入した国宝中の国宝! 日本刀の最高傑作「大包平」の歴史エピソードとは?

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■破格の買取価格、現在の価値に換算すると?

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 昭和42年のこと、大包平は池田家から文部省(現在の文部科学省)によって買い上げられ、国の所有物となり、以降は東京都の東京国立博物館に収蔵されています。この時に国が支払った金額は何と6500万円。いくら平安末期の逸品とはいえ、1本の太刀の対価としては破格の額面と言えるものです。

 昭和42年当時の6500万円を「消費者物価指数」によって現在の貨幣価値に換算すると、参考数値ではありますが、約2億7千万円という金額になります。ただし、あくまでも国家と名家での取引によって出た金額です。これがもし個人間の取引であったのならば、間違いなくこれ以上のとんでもない値段が付いたことでしょう。

 ちなみに、昭和42年のサラリーマン年収は531,800円、月給は約45,000円であったようです。こちらで考えると「大包平には当時一般年収の約122年分の値段が付いた」とも言えるのですが、その後のサラリーマン年収はとてつもない右肩上がりを見せているため、あまり参考にはならないでしょう。


■名刀大包平が「天下五剣」に数えられなかった理由

362px-Minamoto_Yorimitsu.jpg平安京の妖怪ハンターこと源頼光。天下五剣の1振り「童子切」で、大江山の鬼・酒天童子の首を斬り落とした、という伝説が残されている

 ロストテクノロジー的な作刀技術が込められている、日本一の名刀として名高い、国宝中の国宝と呼ばれているなど、非常に優秀かつ人気の高い大包平ですが、なぜか名刀5振りを選んだという「天下五剣」には数えられていません。

 この理由は簡単なもので、先述した通り天下五剣は「明治時代以降に刀剣関係者の間で定められた、”刀の出来栄えだけではなく、由緒や逸話も含めた上で選ばれた”名刀5振り」であるためです。


ookanehira02.jpg大包平

 天下五剣に選ばれた刀は、いずれも「妖怪や鬼を退治した」「歴史に名を残す偉大な著名人の愛刀」「魔を払った」などの、不思議な逸話や高名な人物のエピソードが数多く残されているものです。またそれらを作刀した刀工も、名刀匠として非常に高名な人物ばかりとなっています。

 それに対して大包平は、日本一の名刀と称される美しさと性能ながらも「鬼を斬った」などインパクトのある伝承や活躍を持たず、さらに輝政が手に入れる前の経歴や入手経路、実のところそもそもいつごろから池田家にあったのかさえ不明なのです。また刀にまつわる逸話と言えば「どケチな倹約家の光政をして、財布の紐を緩ませたほどの名刀」という先述のエピソードや、史実としては「池田家の年中行事に使われていた」程度しかありません。

 要するに「刀としては非常に素晴らしいが、由緒や逸話が非常に弱い」というのが、天下五剣に数えられなかった理由なのです。日本刀研究家の佐藤寒山は「天下五剣5振りは間違いなく天下の大名刀であるが、おそらくその選定基準として、名刀であることに加えて由緒や伝来も持つ刀が数え上げられたのだろう」と、天下五剣に関してのコメントを残しています。

 西の横綱、日本一の大名刀、国宝中の国宝、日本刀の最高傑作と呼ばれながらも、名刀五選に名を連ねることはできなかった、ある意味では不遇の刀と言える大包平。「天下五剣」というカテゴリに入っている名刀よりも、何となく親しみを感じてしまうような気がしますね。
(文=たけしな竜美)

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