ラブドールを妊娠させて写真作品に仕上げた《The Future Mother》(平成27年度東京藝術大学大学院修了制作)で大いに話題となった菅実花が、新作《The SilentWoman》のシリーズを文京区立森鷗外記念館の2階にて1月28日まで展示した。これは同記念館の開館5周年記念事業シンポジウム「深読み?! 森鷗外―鷗外とピグマリオン・コンプレックス―」の関連展示として行われたものだ。

菅実花と彼女の作品《The Silent Woman》シリーズ文京区立森鷗外記念館の開館5周年記念事業シンポジウム関連展示会場にて
菅実花の作品は、ラブドールという人工物に妊娠という生物学的な生々しさを融合するとした点で、すでにラブドールの存在を知っている人たちにとっても大きな衝撃だった。

菅実花も執筆参加している共著本『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』青弓社が発売中!
今回の新作は、ラブドールをまるで人間と見間違えるように写真作品に仕上げる前作とは対称的に、その被写体が人工物であることにドキッとさせられた瞬間を写真に撮ることで切り取っている。
「《The Future Mother》はラブドールが意思を持って自ら撮影を望む姿を表現しましたが、《The Silent Woman》はラブドールの物質的な側面に注目したシリーズです。そのためシリコン表面の質感に加えて、付着しているホコリもそのまま写しています」
そう語る菅実花。小柄な彼女にとって、自分と同じ大きさの人形を動かし、ポーズをつけ、人間のように撮影する行為はかなりの重労働だろう。