覚醒剤に変えられる液体とは? 超未来型の麻薬密輸“分子的密輸”事件の科学的真相!

【ヘルドクター・クラレのググっても出ない毒薬の手帳】
番外編 超未来型の麻薬密輸“分子的密輸”

 今月21日、近畿厚生局麻薬取締部が覚醒剤の分子構造を変えた特殊薬品所持の男を逮捕したというニュースがありました。化学反応によって覚醒剤に変えられる液体計約14.5キログラムをペットボトルに小分けして保管し、覚醒剤を製造しようとした疑いがあるとのことです。

 これは、有機化学の技術を悪用した「分子的密輸」の摘発という国内初の非常に珍しいニュースなので、その内容を詳しく見ていきましょう。

【緊急解説】覚醒剤に変えられる液体とは? 超未来型の麻薬密輸分子的密輸事件の科学的真相!の画像1画像は「Thinkstock」より引用

●保護基で密輸

 まず分子的密輸とは一体どういうことなのか、説明しておきましょう。

 多くの国では、覚醒剤などの麻薬を分子構造で指定して、「この分子構造はダメ」と制定しています。逆に言えば、分子構造が完全に違法なモノと合致しなければ、違法なものとは認めないということです。日本でもこのような法規制が行われています。

 法律の善し悪しは置いといて、その分子構造から外れ、作用自体は麻薬的な効果を持たせたものとして出現したのが、一時期問題となり、大ブームとなった「脱法麻薬」の類いです。

 ただ現在では、異例ともいえる法規制物質の追加が行われています。そのため、脱法麻薬を作る、ないしは輸入することは困難になりつつあります。

 そこで今回出てきたのが分子的密輸です。麻薬として誰もが知っている「覚醒剤」自体を全く別の分子構造に偽装して国内に持ち込み、その分子構造を元の麻薬に戻すという原点回帰かつ最先端なコンセプトです。

 二重底のボストンバッグに入れてくるとか、壁紙に仕込み込ませて密輸するとか、ドローンやROV(無人潜水機)を使った密輸などとは根本的に違う、極めて未来的な、化学的な犯罪と言えるでしょう。

 麻薬の密輸は非常に厳しく取り締まられています。麻薬そのものは通関の品目検査の段階で当然通れませんし、巧妙に隠したところで、厳しい訓練を受けた麻薬捜査犬の鋭い嗅覚で見つけられてしまいます。

 しかし、麻薬を分子的に別の物質にしてしまえば、それ自体は違法ではなくなります。規制されていない物質を通関で止めることはできませんし、麻薬検査犬が検知することも不可能となるのです。

 今回逮捕された男が持っていた特殊薬品も2017年12月に規制されるまで「違法な物質」ではありませんでした。事実上、堂々と輸入し放題な状態だったといえるのです。

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