実話怪談「縁切り傷」― 川奈まり子新連載「性愛、恨み、妬み…霊界の情念を描く情の奇譚」
作家・川奈まり子の新連載「情ノ奇譚」――恨み、妬み、嫉妬、性愛、恋慕…これまで取材した“実話怪談”の中から霊界と現世の間で渦巻く情念にまつわるエピソードを紹介する。
【一】縁切り傷

群馬県太田市出身の土屋みのりさんの胸には傷がある。ちょうど心臓の真上を刃物で刺されて、一命は取り留めたものの、大きな痕が残ってしまったのだ。
この怪我を負った2001年は、土屋さんにとって人生最悪の年であった。当時21歳で技術職の会社員だった彼女は、その年の春に4年付き合った恋人と別れた。心の痛手が癒えないうちに、夏には母親が事業の運転資金と偽って彼女から巻き上げた金をすべてパチンコにつぎこんでいたことが発覚。怒りをぶつけた土屋さんを母は冷たく嘲笑った。
思えば、物心ついて以来、ほめてくれたことなど一度もない冷たい母だった。でも、お金を手渡すたびに、笑顔で「ありがとう」と言ってくれたのだ……。親の愛を買えるかもしれないという夢からさめてみれば、母に貢ぐために消費者金融から借りた額と奨学金の残金、合わせて約600万円の借金だけが残されていた。
月々の返済に追われて、精神的にも経済的にも実家を出る余裕がない中、土屋さんは、今までに母から受けた散々な仕打ちをひとつ残らず思い起こした。そして恨みをつのらせた挙句、日本三大縁切稲荷のひとつとして名高く、家からも近い門田稲荷神社に詣でて、母との縁切りを願うようになった。
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