「『涼宮ハルヒの憂鬱』エンドレスエイトはデュシャンの100倍すごい、世界に誇るアートだ!」 哲学者・三浦俊彦教授インタビュー! 9種類のループ解説も!

■「エンドレスエイト」は世界に誇るアートだ!

「『涼宮ハルヒの憂鬱』エンドレスエイトはデュシャンの100倍すごい、世界に誇るアートだ!」 哲学者・三浦俊彦教授インタビュー! 9種類のループ解説も!の画像6撮影=編集部

――それにしても、ループの解釈をよく9つも考えつきましたね。

三浦 それは私というよりEEの素晴らしさですよ。なぜなら、この飽きるほどのループを延々見せ続けられることによって、視聴者は「俺、何やってんだ……」と延々自己言及しますよね。つまり作品とは別の「自己言及ループ」が同時に発生する。それがまた、長門の自己覚醒に反映する。素晴らしい構造ですよ。原作に潜んでいたポテンシャルをアニメが再創造したという、理想的なパターンです


――あの……正直言ってすごく好意的な深読みというか、三浦先生は優しいですね(笑)。制作サイドも、さすがにそこまで考えていなかったのでは。

三浦 作者が意図しなかった意味を作品が持つというのは、すぐれた芸術作品の常です。というか、そういうフォローをしないと、いつまでもツッコミ待ちの気持ち悪い状態のままでしょ、EEは(笑)。いずれにしろ『ハルヒ』というアニメ自体が素晴らしいのは間違いないんですから


――本書の構造自体がハルヒに負けず劣らずツンデレです。前半で容赦なくEEをディスっているのに、後半でループの意味についてここまで熱意たっぷりに考察を加えている。

三浦 EEが失敗であればあるほど『ハルヒ』というコンテンツの価値が高まるという構造なんですよ、この本は(笑)


――「おもしろい」とは一体どういうことなのか、混乱してきました……。

三浦 一般的に、もちろんEEは「おもしろくない」。だから従来、EEを楽しむ術は掲示板の炎上に参加するくらいしかなかった。でもそれだけじゃなくて、「いかにおもしろくないか」をカッコにくくって考えてみると、『ハルヒ』というコンテンツがもっと膨らんで見えてくるんです

「『涼宮ハルヒの憂鬱』エンドレスエイトはデュシャンの100倍すごい、世界に誇るアートだ!」 哲学者・三浦俊彦教授インタビュー! 9種類のループ解説も!の画像7撮影=編集部

――この本を特に誰に読んでほしいですか。

三浦 まずは『ハルヒ』好き、そしてEEをバッシングしていた人にこそ読んでほしいですね。また、本書はアニメと実写の違いを本質的な部分で切り取れているはずなので、「アニメとは何か」を考え直すにはいい入門書だと思います。あとは哲学者かな。


――三浦先生の同業者ですか。

三浦 英米系の科学・数学に密着した分析哲学者って、あまり個別の事例を研究しないんです。「普遍的な真理」に行きがちで、時事的な問題には疎い。だけど、ほんらい哲学は「方法の学問」なので、アニメだろうがゲームだろうが、どんなテーマでも扱えるはず。その哲学的分析の模範演技として本書があるんです。


――たしかに、本書によって『ハルヒ』という作品に対する批評的次元は確実に上がりました。

三浦 デュシャンがただの便器を『泉』と名付けて手軽にやっちゃったことは、コストがかかってないぶん、つまらない。でも、それが20世紀最大の芸術としてもてはやされているじゃないですか。そういう意味では、商業的成功を犠牲にしたEEは『泉』よりはるかにおもしろい。何百倍もすごい。EEは世界に誇るアートだと思いますよ
(インタビュー・文:稲田豊史)


インタビュー第1回はコチラインタビュー第2回はコチラ


【プロフィール】

◆三浦俊彦(みうら・としひこ)
1959年生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学文学部教授。専門は、美学・分析哲学。和洋女子大学名誉教授。著書に『天才児のための論理思考入門』(河出書房新社、2015年)、『改訂版 可能世界の哲学――「存在」と「自己」を考える』(二見文庫、2017年)など。

◆稲田豊史(いなだ・とよし)
編集者/ライター
1974年、愛知県生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。編著に『ヤンキーマンガガイドブック』(DUBOOKS)、編集担当書籍に『押井言論2012-2015』(押井守・著、サイゾー)など。「サイゾー」「SPA!」「プレジデント・オンライン」などで執筆。


【イベント情報】

●坂上秋成×三浦俊彦×村上裕一 「『エンドレスエイトの驚愕』の驚愕」

著者である分析哲学の泰斗・三浦俊彦(1959年生まれ)をゲンロンカフェに迎え、
『ゴーストの条件』で独自のキャラクター論を展開した
評論家・村上裕一(1984年生まれ)と、
『涼宮ハルヒのユリイカ』(『ユリイカ』増刊号)に
ハルヒ論「涼宮ハルヒの失恋」を寄せた作家・坂上秋成(同じく1984年生まれ)とともに、
いまあらためて『ハルヒ』と「エンドレスエイト」を語り尽くす……!

日時:2018/05/29 (火) 19:00 – 21:30
会場:ゲンロンカフェ(東京都品川区西五反田1-11-9 司ビル6F)
チケット:前売券 2,600円 1ドリンク付 ※当日、友の会会員証/学生証提示で500円キャッシュバック

お申し込みはコチラから

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ