奇習! 不妊を理由に離縁され、売春宿へと沈められた人妻たち ― 東北地方に実在した忌まわしき差別の実態とは!?

【日本奇習紀行シリーズ】 東北地方

 医学の研究が進んだ今の時代でこそ、いわゆる“不妊”の原因については、男女ともに様々な要因があることがわかってきているが、一般にこうした知識が今ほどには定着していなかった頃には、一方的にその原因が女性側にあると決め付けたり、そうした事態を改善するための努力を、やはり女性側にだけ求めるという愚行も、長きに渡って続けられていたというのが実情である。


「なにせ昔は子供ができないと、それだけで人間でないような酷い扱いを受けたものでね。特に、ここいらみたいな農家ばっかの土地じゃ、子供は大事な跡継ぎであると同時に、貴重な労働源だったものだから、その傾向はかなり強かったんだよ」


 かつて、東北地方のとある地域にはびこっていたという“不妊女性への差別”と、そこから生まれたと思しき“忌まわしき風習”についてそう語るのは、当地で生まれ育ち、今なおその余生を送っている斉藤清七さん(仮名・88)。斉藤さんの話によると、“不当な差別”とも言うべき不妊女性に対する見識が原因となる形で、当地においては多くの悲劇が生まれることとなってしまったという。


「まあ、結婚しても子供ができない嫁というのは、子供のいる嫁に比べて、散々な待遇でね。飯だって1日1食、口にできるかどうかっていう話なんだよ。おかしな話だろう? でも昔はそれが当たり前だったんだよ。そういうね、栄養もろくすっぽ与えられないようなね、生活を送るものだから、なおさら子供もできづらくなっちゃう。そうなると、だ。いよいよ“こりゃ駄目だ”っていう話になって、よそへ連れてかれるんだよ」


 自身は望んでいるにもかかわらず、子宝に恵まれない人妻たち。彼女たちの大半は、食事もろくに与えられず、半ば軟禁状態にも近い生活を余儀なくされたのだという。しかも、そうしたある種の懲罰的な待遇の末に、彼女たちを待ち受けているのは、さらに悲惨な人生なのだ。

奇習! 不妊を理由に離縁され、売春宿へと沈められた人妻たち ― 東北地方に実在した忌まわしき差別の実態とは!?の画像2画像は「Thinkstock」より引用

「子供ができないっていうことはだ、イタしてもできないということだからね。これは人妻として見ればよろしくないだろうけれども、女郎として見れば逆に好都合なの。だからね、子供ができない嫁というのはね、離縁されると、そのまま村のハズレにあった女郎小屋へと連れてかれるの。そこで村の男やら、通りすがりの旅の男やらに体を売ってね、かろうじて生きながらえるっていう。それで体を売って得たお金はね、全部、元夫のいる嫁ぎ先に支払われる。だから当の本人はね、それこそ食うや食わずで、死ぬまで体を売り続けるっていう寸法よ」


 理不尽なレッテル貼りをされた挙げ句、一方的に離縁され、挙げ句には売春宿へとその身を沈められてしまうという、不妊女性たち。しかも離縁されて売春宿へと移った後は、たとえ病気になったとしても、まともに薬すら与えられないような、極めて劣悪な暮らしぶりだったという。


「まあ、そんなことだからね、たとえ死んでも葬式ひとつあげてもらえやしないし、死体だって河原で燃やして、馬頭観音のそばにある穴に骨を投げ入れるだけ。ホント、酷い話だよ」


 その後、時代の変遷とともに、無論、当地のこうした悪習は姿を消し、それに伴う形で、不当な理由で苦界に身を落とす人妻たちもいなくなり、現在ではこの話を知る者すらほとんどいなくなってしまったという。そのため、皮肉にも、彼女たちの遺骨がうち棄てられた穴の上には、今ではすべてを“なかったこと”にする形で、地域の防災倉庫が建っているというが、当時の状況を知る斉藤さんたちは、今なお、その倉庫の前を通るたびに、手を合わせているという。やはりいつの時代も、いわれなき差別や偏見は、多くの人々の人生を狂わせ、その傍観者たりえる人々の心にも、暗い影を落とし続けるものなのかもしれない。

文・取材=戸叶和男

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