平成最後の「超大麻論2」― 宮台真司✕高樹沙耶✕石丸元章「大麻行政はデタラメ。日本はクソ社会」

沖縄の楽園・石垣島 虹の豆に暮らす医療用大麻推進派女優 高樹沙耶と東京の元祖ジャンキーライターが、大麻や薬物事件について語る本連載――現在は、大型企画‼「高樹沙耶大麻をめぐる対話10番勝負」と題してお送りしてます。現代社会と大麻についてビビッドな論説を発信している社会学者で首都大学教授、宮台真司先生をゲストに迎えての勝負1番目、第2弾。さあどうなるか? (第1弾はこちら) 

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平成最後の「超大麻論2」― 宮台真司✕高樹沙耶✕石丸元章「大麻行政はデタラメ。日本はクソ社会」の画像1高樹沙耶、宮台真司、石丸元章

●劣化したクズが「法律違反だからダメじゃん」と思考停止で語るようになる

高樹 宮台さんは是枝裕和監督『万引き家族』の映画評をお書きになっていましたよね。「法外」「法内」という視点が新鮮でおもしろかったんですが、同じような視点で大麻草、大麻草の法律に関する解説を聞いてみたいです。

宮台 人が定住を始めたのは1万年前以降で、定住を支える収穫物の保全・継承・配分のために法ができました。定住以前は150人以下の血縁的な「仲間」と遊動していました。定住以降は直接血縁のない<仲間>へと規模が拡大します。<仲間>の中には複数の「仲間」集団が含まれます。だから法によって「仲間」集団同士の紛争を調停したんです。

「仲間」と<仲間>を守るための法。「仲間」と<仲間>あっての法。「仲間」と<仲間>を合わせて仲間というならば、仲間あっての法です。仲間が目的で、法が手段です。法が自己目的化すれば仲間を蔑ろにしてしまいます。だから法遵守を大概にして、仲間で在り続けようとしたんです。そのための工夫が、定住以降に生まれた「祭り」でした。 

 法はタテマエで、祭りがホンネです。祭りは無礼講でタテマエを破ります。無礼講とは戦後まで続いた乱交のこと。ホンネ次元で仲間を確からしくするのが祭りです。体育会の乱痴気騒ぎが典型ですね。法をタテマエにすぎないと見切る作法が普通だったんです。高樹さんの『沙耶のいる透視図』もそうですが、それが昭和でしたね。
 
 ところが、平成つまり1990年代になると、「法の奴隷」「言葉の自動機械」と呼ぶべきニセモノが増えます。ちなみに、仲間のために法を破るのがホンモノです。「法の奴隷」や「言葉の自動機械」として振る舞うことで仲間を蔑ろにする連中がニセモノです。ちなみに[ホンモノ/ニセモノ]は映画評で僕が使う用語法なんですが。 

高樹 はい。

宮台 ニセモノを「クズ」とも呼びます。タテマエを守らないと成り立たない定住社会を「クソ社会」と呼びます。クソ社会の中でクズにならないための工夫。それが祭りです。「仲間のために法を破れる存在」であり続ける工夫です。でも平成に廃れてしまいます。感情が劣化したクズが「法律違反だからダメじゃん」と思考停止で語るようになります。 

高樹 クズ! 強い言葉だけど、クズは多いですよね。私も強い言葉をよく使います。

宮台 例えば焚き火。昔からどこでも火災予防条例で禁止されていたけど、みんな焚き火をした。今はクソ社会の中でクズになった連中によって通報されます。一口で言えばお互い仲間じゃなくなったからですね。実際、仲間を取り戻すためにやっていた祭りも廃れています。昔の祭りであれば「テキヤ」と呼ばれるヤクザとも仲間になれました。 

石丸 なるほど。たしかに、これまで「仲間」と〈仲間〉に任されていた法の運用が、クズになった連中によって監視され通報され、厳しくなっていると感じます。しかし一方で、先日、タトゥー医師法裁判の判決があって、大阪高裁は有罪判決を受けていた彫師に逆転無罪を言い渡した。タトゥーはある時代まで、伝統的に仲間たちによって許容されてきたアートなのに、ここにきてタトゥーを嫌う連中に、「タトゥーは医療だろう」とイチャモンをつけられた。それに対して「いくらなんでもタトゥーと医療はちがうんじゃない?」と、誰が考えても当たり前のことを言い渡したのが、大阪高裁の判決です。宮台先生のおっしゃるとおり、社会の中のクズたちの声が大きくなる一方、いま法の運用をめぐる新たな線引きが始まっているのではないかと思うのですが。

宮台 あの判決も政治的です。政権の意向があるだろうと睨んでいます。2年後には新東京五輪が開かれますが、来日した選手を含めた外国人がタトゥー禁止を疑問に思うはずです。これも大麻と同じですね。時代遅れ過ぎて、意味が分からないんですよ。

 日本人はヘタレなので、意味の分からないものでも、みんなに合わせて我慢するけど、外国人たちは我慢せずに文句を言います。だから日本の妙な法律が世界中のSNSでやり玉にあげられます。赤っ恥を避けるための流れを作る伏線が先の判決でしょう。

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