“人工進化”実験で、遺伝子操作ハエ「スーパーフライ」爆誕!他生物の進化の過程を丸ごとトレース、代償も
本来なら食べることができない毒草トウワタを食べられるよう、トウワタを餌にする蝶のゲノムを参考にショウジョウバエの遺伝子を操作し、“スーパーフライ”を作ることに成功したという驚くべきニュースが報じられた。英「Daily Mail」(10月2日付)ほか、多数メディアが報じている。
トウワタはカルデノリドという毒性のある化合物を持つ植物であるが、北アメリカに生息する蝶オオカバマダラの幼虫はこの毒草を餌にすることができる。オオカバマダラは毒への耐性のおかげで、他の生物が食べないトウワタを食料として独占でき、その毒を体内に持つことで捕食者に狙われにくくなり、体内の寄生虫を駆除するのにも役立つ……と様々な恩恵を受けているのである。
近年、カルデノリド化合物耐性に関する遺伝子が研究され、その秘密がナトリウムポンプの関連遺伝子にある3つの突然変異だということがわかってきた。そこで米カリフォルニア大学バークレー校の進化生物学者ノア・ホワイトマン氏らは、ショウジョウバエの遺伝子を操作し、毒への耐性を獲得させる実験を行なった。
研究では遺伝子編集技術であるCRISPRを使い、3つの突然変異を1つずつショウジョウバエの遺伝子に組み込んでいった。実験によると、1つ目の変異によってショウジョウバエは少しだけ毒への耐性を得たが、それにさらにもう1つの変異を組み合わせることで、毒に耐える能力は飛躍的に向上したという。さらに3つ目の突然変異を加えると、ショウジョウバエはオオカバマダラのようにトウワタを食べて繁殖できる“スーパーフライ”になったのである。
興味深いことに、実験では3つの変異を加える順番も重要だったという。順番が異なるとショウジョウバエに欠陥や問題が見られるようになり、健康なスーパーフライが生まれる順番は一つだけだったそうだ。研究によると、1つ目の変異が毒への耐性を与え、2つ目の変異がさらに耐性を強め、3番目の変異は2つの突然変異で生じる何らかの不具合を修正するものだという。事件では、先2つの変異だけを持ち、3つ目を持たないショウジョウバエは死んでしまったそうだ。
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