三島由紀夫が臓物をハミ出して涎を垂らす迫真の自決演技…【封印映画】『憂國』は観ると“怪我する”映画だった!

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――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

画像は「Amazon」より引用

『憂國』
1966年・東宝+ATG配給
監督/三島由紀夫
脚本/三島由紀夫、藤井浩明
出演/三島由紀夫、鶴岡淑子


 2020年は「三島由紀夫の没後50年」ということで各メディアが特集を組み、各地でイベントが開催された。そこで今回は、数々の原作映画化作品の中でも突出した問題作にして、長い間フィルムが封印されていた幻の三島映画『憂國』を取り上げたい。

 1970年11月25日、国内外に衝撃が走った。『潮騒』や『金閣寺』など、世界的に評価の高い作家・三島由紀夫が、陸上自衛隊市谷駐屯地で自衛隊員にクーデターを呼びかけ、その場で割腹自殺を遂げた(同行者により断頭)。民兵組織・盾の会の制服に日の丸の鉢巻という出で立ちの三島が、正面玄関上のバルコニーで絶叫し、集まった約1000人の自衛隊員たちと怒鳴り合う様子は、テレビカメラを通じて日本中に生中継された。その4年前に公開された『憂國』が封印されたのは、事件と無関係ではなかった。

画像は「Wikipedia」より引用


『憂國』の内容は、二・二六事件から2日後の1936年2月28日、三島由紀夫が扮する近衛歩兵・武山信二中尉(30歳)が、勅命により討伐すべき加害者たちが親友であることに苦悩し、新妻・麗子(23歳)と共に自決するというもの。無声でモノクロ映像による、アーティスティックな30分弱の短編自主映画だ。

 三島は話題が先行する日本より海外での純粋な評価を最初に聴きたかったため、制作は極秘裏に進行した。全面協力したのは、すでに三島原作を数本映画化して親交の深い大映の名プロデューサー藤井浩明。藤井は永田雅一大映社長の口出しやマスコミに騒がれるのを恐れ、当時のスタッフが口を揃えて「物置みたいな」と述懐する大蔵映画撮影所で人目を避けるように撮影を進めた。三島のスケジュールも多忙を極め、撮影はたった2日間に全集中した。

 そして作品はツール国際短編映画祭の出品まで隠し通すことに成功。上映されるやショッキングな内容に賛否両論を巻き起こすも、333本のエントリー作品の中から見事準グランプリに輝いた。日本では東宝とATG(日本アート・シアター・ギルド)の配給により、短編としては記録的な興行収益をあげる大ヒット作となった。

 主人公夫婦の部屋に見立てたセットは、壁に三島直筆の「至誠」と毛筆で綴られた人間大の掛け軸が掛けられただけの、他には何も置いていないシンプルな能舞台。三島の狙いは、観客の目を芝居に集中させることにあった。全編に流れるワグナー『トリスタンとイゾルデ』の選曲にもセンスが光る。

 やがて覚悟を決めた信二と麗子が最後の契りを交わす。ここで麗子の裸体に劣らぬ興味を惹くのが、僧帽筋から広背筋までしっかり鍛え込まれた三島の背中。そしてクライマックスの切腹は抽象的な表現でお茶を濁さず、その所作から2人の表情まで一部始終をリアルに見せる。三島は臓物をハミ出して涎を垂らす迫真の演技で、アート系と思ってノホホンと観ていると怪我をする。三島は自決した際、この場面を思い浮かべたのであろうか。それとも、そんな余裕などなかったのか。それは神のみぞ知る。無駄なシーンは一切なく、三島の狙い通り集中して見入り、あっという間に終わる濃厚な28分間だった。

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