二度と観られない! 2本の“ジャパニーズ・キングコング”を【封印映画】専門家の天野ミチヒロが徹底解説!

 このように『和製キング・コング』は純粋な怪獣映画ではなかったのだが、それから5年後の1938年、怪物としてのコングが登場する『江戸に現れたキングコング』(監督・熊谷草弥)が製作された。先述した市川歌右衛門の兄・山口天龍が1936年に設立したばかりの全勝キネマが、閉鎖していた奈良の右太プロ撮影所で撮影に及んだ。

画像は「Wikipedia」より引用

 巨大なコングが描かれたポスターや広告で大衆をワクワクさせたようだが、円谷英二が『ゴジラ』を作る18年前は巨大怪獣を活躍させるような特撮技術は芽生えておらず、登場したのは等身大の怪猿だった。時代劇ということもあり、どちらかというと江戸庶民を恐れさせた物の怪の類に近かったようだ。ただ特筆すべきは、手塚治虫漫画の実写化『マグマ大使』(66年)などを手掛けた撮影用造形物の名匠・大橋史典が江戸コングの着ぐるみを作り、自らスーツアクターを兼任している事だ。

 残念ながら両作品共にフィルム原版が所在不明となっていて、現在は鑑賞不可能となっている。多くの映画がそうであるように、火災や第二次世界大戦の空襲で焼失してしまったのだろうか。海外の根強い日本怪獣マニアも惜しむ日本映画界の損失である。

 蛇足として、封印されているアニメ版『キングコング』にも触れておこう。1966年は『ウルトラマン』や『マグマ大使』などで怪獣ブームが児童文化を席捲し、キングコングもハリウッド・スター並みの人気怪獣となっていた。1967年にNET(現・テレビ朝日)は、アメリカで1966年に先行放送していた東映動画による日米合作アニメ『キングコング』の日本語吹替え版を放送。少年と心を通わせるキングコングが恐竜や怪ロボットと戦うヒロイックな内容に子供達は歓喜した。だがそんな人気作品にも関わらず、複雑な権利関係からか80年代以降は全く再放送されなくなり、映像ソフトも一切商品化されていない。こちらは原版が現存するので、封印解除を切望する。

文=天野ミチヒロ

天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
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