樹海で衰弱した「2人の老婆」と遭遇し…衝撃展開『人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖』村田らむのヒトコワ話

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 サブカル系雑誌から
『青木ヶ原樹海の中にあるナゾの新興宗教を取材して欲しい』
 という依頼が来たので、担当の女性編集者の運転する自動車で青木ヶ原樹海に向かった。

 その施設の位置は大まかにしか分からず、近所のレストランや宿泊施設などで聞き込みをした。
「ああ乾徳道場さんね。向こうにある消防署の裏に登山道があるからそこを登っていくとあるみたいよ」
 と親切に教えてもらえた。


 富士五湖消防本部河口湖消防署上九一色分遣所という施設の裏側に行く。
 普通ならまず気が付かない道だ。
 ほとんど使われていないのか、枯れ葉が積り少し荒んだ雰囲気だった。
 そこに富士山への古い登山道入り口があった。
 「ここを進んでいけば、その宗教施設に着く……のかな?」
 と俺が編集者に聞くと、編集者は
「そうみたいですね……」
 と不安げにうなずいた。
 道は意外なことにアスファルトで舗装されていた。息を切らしながら、坂道を登っていく。

 しばらく歩いたところで、道が枝分かれしていた。もちろん舗装はされていない、獣道のような道だ。
「せっかく樹海に来たんだし、ちょっと寄り道して行きましょうか?」
 と編集者が提案してきた。
 まだ午前中で余裕があったので、2人で道草を食うことにした。


 いかにも青木ヶ原樹海らしい荒々しい風景の道を歩いていくと、編集者が急に飛び跳ねた。そして
「見つけちゃったかも!! 私、見つけちゃったかも!!」
 と叫んだ。


 編集者が指差す先を見ると、確かに何か人工物が見えた。ただ距離がかなり離れているのでなんだかはよく分からない。
 テントのようにも見えるが、、ビニールシートのゴミのかたまりにも見える。
「たぶん、ゴミじゃないですかね?」
 と俺が言うと同時に、そのかたまりがガサガサガサッと動き出した。
「生きている人間がそこにいる」
 と分かり、編集者も俺も硬直した。


 どんな人がいるのかは分からない。近寄ることに躊躇していると、編集者が、
「わたし、ちょっと警察呼んできます」
 と言いだした。
 森の中で携帯電話の電波が届いていなかったため、携帯が通じる場所まで走り去ってしまった。


 俺は一人置き去りになった。
 誰だか分からない人が数メートル先にいる青木ヶ原樹海に一人で置いていかれるのはたまらなく不安だ。
 片時も目を話すことができないまま、じっと立ち尽くした。
 1時間以上経ってやっと編集者は戻ってきた。
「110番してきました。死体発見の通報は多いけど、生きてる人の通報は珍しいって言われました」
 と編集者は言う。


 さらに1時間ほど待たされて、やっとパトカーに乗った警察官2名が到着した。
 警察官は、俺達が躊躇していた地点を、ズカズカと突破し、ビニールシートの塊のところまで進んでいった。
 俺たちも警察官の後についていった。


 近くで見ると、ビニールシートの塊はそれはお手製のテントだと分かった。
 テントの近くには、白いレインコートを着た2つの小さい人影があった。


 2人の老婆だった。


 警察官が話しかけると、2人はおいおいと声を上げて泣き始めた。
「うわあああ!! もう行く場がないんです!! もう死ぬしかないんです!!」
 グシャグシャに歪んだ顔に涙が流れる。
 聞けば、2人は姉妹だという。
 2人は死ぬために樹海にやってきた。
 警察官がなだめつつ、なぜ自殺したいのかを聞く。
「インターネットで悪口を書かれているんです~!! だからもうどうしようもないんです!! 死ぬしかないんです!!」
 とさらに大きな声で泣く。
 警察官たちは首をかしげながら、
「おばあちゃんたち、インターネットの意味わかってるのかなあ? テレビが私の悪口を言うんですって言う人はたまにいるけど、その類の人じゃないかなあ」
 と相談している。
 俺は隙を見て、テントを覗いてみた。
 テントの中には、彼女たちの母親とおぼしき人の遺影と位牌だけが置いてあった。
 空のペットボトルはあったが、他には特に何もなかった。食べ物もないし、自殺をする道具、たとえば首をくくるためのロープなどもない。
 2人はどうやって死のうとしていたのだろう? と疑問に思った。
 警察官も疑問に思ったらしく、そのように老婆に尋ねると
「もう3日間、飲まず食わずなんです!! ひたすら位牌を拝んでいたんです!! そしてこのまま死のうと思ってたんです!!」
 ただただ飲まず食わずなんで過ごし、衰弱して死んでいく……。決して楽な死に方ではない。
 2人ともすでにかなり衰弱しているように見えた。僕らがたまたま見つけなかったら、肺炎にでもなって亡くなっていた可能性は高い。

 二人は警察官に連れられ、パトカーに乗せられた。位牌などほんのわずかな物だけがパトカーのトランクに積まれた。
 警察官はこちらを見ると、
「通報ありがとうございました。ただあの2人は常習っぽいですね。保護施設で落ち着いたらまた出ていっちゃうんじゃないかな、と思います」
 とニヤニヤと笑いながら言った。
 俺は、なんだかとても嫌な気持ちになった。

文=村田らむ

村田らむ

ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター
1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)、『樹海考』(晶文社)、『ホームレス消滅』(幻冬舎新書)など。

 

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