腕には無数の注射痕、売春婦、花園神社の死体…
腕には無数の注射痕、売春婦、花園神社の死体…封印映画『白い粉の恐怖』解説
――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・レトリバーが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!
『白い粉の恐怖』
1960年・東映
監督/村山新治
脚本/舟橋和郎
出演/三國連太郎、中原ひとみ、今井健二(当時、今井俊二)、菅原通濟、潮健児ほか
以前このコラムで、山口組の田岡一雄組長らと麻薬追放運動を行った政財界の大物・菅原通済が出演した千葉真一主演『麻薬売春Gメン』シリーズ(72年)を紹介した。実はシリーズの公開12年前、その雛型のような映画が製作されていた。やはりマトリ(麻薬取締官)の活躍を描く作品で、ここでも菅原通済が出演していたのだ。だが名優・三國連太郎の主演映画にも関わらず、『麻薬売春Gメン』同様にソフト化されない幻の映画となっている。
作品の冒頭は、ジャズをBGMに咲き乱れるケシの花がモノクロ映像で映し出される。オシャレな映像だなあと見入っていると、花がフェードアウトして換わりに映し出されたのは、虚ろな目で宙を見つめニヤリと薄笑いを浮かべる汚いヒゲ面の男。腕には無数の注射痕。シャブ中だ。そこへ入って来た若い女が男から麻薬を買い、その場で打つ。
1960年の新宿歌舞伎町。幌付きトラックの中に数人のマトリが潜み、メンバーの中にまだツルンとした紅顔の悪役俳優・今井健二がいる。厚生省で事務をしていた若造がマトリに異動して初現場でオドオドしているという役。人相って変わるんだなあ(しみじみ)。
朝鮮人の情報屋・金山の手引きで、須川取締官(三國連太郎)達がアパートに踏み込み、ユリ子というパンスケ(売春婦)相手に注射を打つ売人を現行犯で押さえる。まずここで筆者は、「え、中原ひとみがシャブ中のパンスケ役? しかも誰の子かわからない子を宿している?」と驚く。日本人離れした美貌に清楚な雰囲気をもつ中原ひとみは、第8回ベルリン国際映画祭・銀熊賞(監督賞)受賞作品『純愛物語』(監督・今井正。57年)で原爆症のヒロインを演じた東映現代劇の看板女優。夫の江原真二郎と一家4人で出演したライオン歯磨きのCMは10年に渡り放送され、お茶の間の好感を得ていた。
中原ひとみに筆者のイメージがガラガラ崩れていると、売人役の顔を見て再び驚く。我々の世代には『悪魔くん』(66~67年)のメフィスト弟と『仮面ライダー』(71~73年)の地獄大使が印象深い潮健児。何に驚いたかというと、潮健児は現在も続くスーパー戦隊シリーズの第3作目『バトルフィーバーJ』(79~80年)で敵幹部を演じていたのだが、放送開始まもなく覚醒剤取締法違反で逮捕されていたからだ。なんとリアルな。
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