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女子高生の我が娘が売春婦に…リアルすぎた封印映画『麻薬売春Gメン』を徹底解説！

2021.12.29 18:00

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・レトリバーが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り！

『麻薬売春Gメン』

1972年・東映
監督/高桑信
脚本/金子武郎、高桑信
出演/千葉真一、中村敦夫、宮内洋、武原英子、渡辺文雄、菅原通済ほか

　薬物使用による逮捕者が続出する昨今だが、かつて暴力団とタッグを組み麻薬・覚醒剤の撲滅を目指す政治団体を作り、麻薬Gメンが活躍する映画の製作に協力、自ら出演もした男がいた。戦後日本の実業界・政治界で隠然たる力を発揮した菅原通済（すがわらつうさい）。菅原道真36代の子孫、第47代首相・芦田均の黒幕、元尖閣諸島の所有者・栗原國起が運転手を務めていたと、彼にまつわる逸話の数々は半端ない。少年期は喧嘩などヤンチャに明け暮れ、10代後半の1912年に「天啓だ！」と日本を飛び出す。マレーシア、アフリカ、ロンドン、ニューヨークを歴訪して1920年に帰国。関東大震災の復興事業、江ノ電経営と江ノ島開発、松竹大船撮影所の建設に尽力するなどの目覚ましい活躍を見せた。

　そして山口組が東京進出を視野に入れている頃の1963年、すでに麻薬審議会会長を務めていた菅原通済は、山口組組長・田岡一雄、参議院議員・市川房枝、作家・山岡荘八らと協調して麻薬追放国土浄化連盟を結成。さらに売春・麻薬・性病を「三悪」とした三悪追放協会を組織して会長に収まった菅原通済は、『麻薬売春Gメン』（72年）、韓国・香港・タイとの合作『東京―ソウル―バンコック　実録麻薬地帯』（73年）など東映映画の製作に協力し、自ら本人役で出演した。

　菅原通済は松竹大船撮影所の件が縁で小津安二郎のタニマチとなり、名作『秋刀魚の味』（62年）など小津映画7作、ほか様々な作品に出演している。今回は「麻薬売春Gメン・シリーズ」の第1作目『麻薬売春Gメン』の説得力ある（笑）内容を紹介しよう。

　マリファナ乱交パーティーに潜入していたヒッピー姿のマトリ（麻薬Gメン）が死体で発見され、麻薬取締官事務所に神奈川県警の刑事が聞き込みに来る。ベテランの山本（『水戸黄門』三代目御老公の佐野浅夫）と、若い方の田村は翌年に『仮面ライダーV3』で大ブレイクする直前の瑞々しい宮内洋。自分たちの手で同僚を殺した犯人を挙げたいマトリは、刑事たちに情報を隠す。

　組織のアジトは横浜の繁華街にあるパブ・夜城。ボスの情婦で芸能プロの女社長が連れてきた若い新人娘に、マスターはマリファナを吸わせレイプする。ここで講習会「青少年不良化防止対策委員会」のシーンが挟まれ、主催者の大山泰造（渡辺文雄）による司会進行で、菅原通済が麻薬による若者への悪影響をレクチャーする。菅原先生の役柄は、殺されたマトリの後任で潜入捜査を行う主人公・菊池（千葉真一）夫妻の仲人で、交通事故で車椅子生活を送る奥さん（武原英子）のよき相談相手といった感じで好演している。

　ある日、マリファナ・パーティーをガサ入れした山本が捕まえた売春婦の顔を見ると、何と高校生のわが娘まゆみ！　検挙した客たちが警察で調書を取られている頃、山本は自宅で娘を問い詰めていた。「なぜあんなことを！」。「何さ、偉そうな顔するなら、もう少しマシな暮らしをさせてくれたら？」と逆ギレ。亡き母親代わりの家事に追われる鬱憤も吐き出したまゆみは「お父さんの給料なんてイイ歳して7万円足らずじゃない。ワンピースひとつ買えないわ。こんなミジメな生活もうたくさん！」。この言葉で山本は絶句。数時間後、田村が山本家に駆け付けると、2人は拳銃で心中していた……。