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『不思議の国のアヌス』『床ジョーズ』『パイパニック』…AVパロディの知られざる傑作、マイケル・ジャクソンの『ドリラー』とは？

2022.01.24 12:00

スリラー

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り！

『ドリラー』
1985年・アメリカ
監督／ジョイス・ジェームス
出演／タイジャ・レイ、レニー・サマーズ、エスメラルダほか

　6月25日は「人類史上最も成功したエンターテイナー」と称されたマイケル・ジャクソンの命日だ（2009年没）。当日はCSの各音楽専門チャンネルでマイケルのミュージック・ビデオ（以降MV）特集が組まれ、筆者は一番長尺の5時間番組を視聴。絢爛なヒット曲群の中でも特に、歴代MVの最高傑作と呼び声高い『スリラー』の完成度に改めて唸らされた。今回はその『スリラー』にまつわる幻のパロディー作品を語りたい。まずは『スリラー』の基礎知識から。

　マイケル・ジャクソンは、アメリカでは既に兄弟ユニット「ジャクソン5（後ジャクソンズ）」のリード・ボーカルとして1970年代からスター街道を歩んでいた。日本ではソロになって2作目のアルバム『スリラー』（82年）によって、スーパースターとしての認知度を上げたのだ。

　アルバムは世界歴代1位の売り上げを記録し、話題の中心になったのが13分半に及ぶホラー映画調のMV。マイケルの歌とキレッキレのダンスに奇跡的な融合を果たしたのが、狼男とゾンビの特殊メイク。これまで見たことのない奇抜な映像感覚に世界中の誰もが度肝を抜かれた。当時はレンタルビデオが発足したばかりで、まさにホームステイで楽しむホラー映画ブームが台頭していた時代だ。

　MVの製作費には通常の10倍である約1億2000万円が掛けられ、監督は前年の1981年に狼男への変身シーケンスが話題になった『狼男アメリカン』のジョン・ランディス。マイケルの狼男やゾンビ・ダンサーらの特殊メイクは、メイキャップ・アーティストの第一人者リック・ベイカー。『スリラー』のMVは、2009年にショートフィルムとして史上初めてアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、アメリカ議会図書館に永久保存されている。

　さて前置きはこの程度にして、そろそろ本題に入ろう。日本のAVには『亀頭市』『オ×コはつらいよ』『股の下のポニョ』『風の谷でナニシタ』と、タイトルだけで笑ってしまう作品がワンサとあるが、アメリカのパロディ・ポルノの邦題も負けてはいない。『不思議の国のアヌス』『床ジョーズ』『パイパニック』『アーンイヤーンマン』『セックス・アンタ・ト・シテェ』『デソウ』と枚挙に暇がない。それらのモトネタは全て長編映画だが、実は『スリラー』もパロディ・ポルノ化されている。アメリカ国立フィルム登録と同様にMVとしてはレアケースで、当時の『スリラー』旋風が凄まじかったことを証明している。