TOCANA > ART > 映画 > 『ゴジラ』の20年前の特撮映画がヤバすぎる！

なんてシュールな内容だ！『ゴジラ』の20年前の特撮映画がヤバすぎる！

2022.01.11 10:00

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男が、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り！

『大仏廻国　中京編』

1934年・大仏映画製作所
監督／枝正義郎、勝見庸太郎、村越章二郎
脚本／大仏映画製作所
出演／石川秀道、小島一代ほか

　日本初の怪獣映画『ゴジラ』が公開されたのは1954年。誰もが認める日本特撮映画の原点だが、そこからさらに20年も遡った1934年、ゴジラに先駆けた着ぐるみで表現された巨大キャラが登場する作品が製作されていた。『大仏廻国　中京編』は、30メートルの大仏が立ち上がり、名古屋市中を歩き回るというアメイジングな内容。だが、フィルムは第二次世界大戦の戦禍で焼失し、今や誰も観ることのできない幻の映画となっている。

　監督の枝正義郎は、「ウルトラシリーズ」「ゴジラシリーズ」の円谷英二、『マグマ大使』や『宇宙猿人ゴリ』を生み出したうしおそうじと、日本の特撮作品を支えた巨匠も師事していたトリック撮影（特撮技術の旧称）の始祖。枝正は花見の席で喧嘩の仲裁に入った際、当時まだ玩具屋で働いていた円谷英二と偶然出会い仲良くなる。枝正は円谷の玩具に対するクリエイティブな発想と飛行機知識に感銘を受け、半ば強引に映画界へ引っ張り込む。海外に負けない特撮技術を常に模索していた枝正の薫陶を受けた円谷英二は、のちに世界が認める特技監督となるのだ。

『ゴジラ』より20年前の特撮など想像も付かないが、作品はどんな感じだったのだろう。

　愛知県東海市にある聚楽（しゅうらく）園の大仏が、参拝者らの前で突如開眼。座っている時に六十二尺だった大仏は立ち上がって身長110尺（約33メートル）となり、ズシン、　ズシン（なんて効果音が入れられたかは不明だが）と歩き出す。名古屋市に入った大仏は、本願寺の東別院と西別院、大須観音を参詣したあと名古屋城を通過。犬山市に入って犬山城に向かった大仏は、城下の堤防（三階建て家屋という説も）を枕に眠ってしまう。

　明朝、目覚めた大仏は一宮市の真清田（ますみだ）神社を参詣してから、再び名古屋市に戻り、名古屋市公会堂、名古屋市議会、松坂屋、神宮前駅、七ツ寺、覚王山、日本ラインを練り歩き、2人の芸者を掌で躍らせるというサービスぶりも発揮。

　鶴舞公園の鉄道高架を前にした大仏は、通過する汽車をホイッと跨ぐ。当時このシーンは各紙で高評価が与えられたが、「これは一寸驚かせられた。全体がこの調子だと申し分ないのだが」（『名古屋新聞』新映画評）という論評に代表されるように、おおよそ他のシーンには辛口な感想が寄せられている。