「キ●ガイなことばかり考えよる…」類を見ないカルト空手映画『ザ・カラテ』のヤバさを徹底解説

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『ザ・カラテ』
1974年・東映
監督/野田幸男
脚本/高田宏治、志村正浩
出演/山下タダシ、堀越陽子、山城新伍ほか

 逝去した千葉真一の空手映画は根強い人気を持ち、作品を観ていない人でも関根勤の「こおおお~」と息吹きを吐く空手のモノマネはご存知でしょう。『殺人拳』シリーズ(74年)はブルース・リー・ブームに沸くアメリカでも『ストリート・ファイター』という米題で公開され、千葉真一はソニー・チバと呼ばれ人気者になりました。

 そんな折、何を思ったか東映は、山下タダシなる無名の人物を次代の空手ヒーローに抜擢しました。ブルース・リーもどきの髪型、鼻の下に髭、顎がしゃくれた地味な風貌。知名度ゼロの山下タダシに映画ファン達は「いったい誰なんだ……」と戸惑いました。あとで知ったのですが、『燃えよドラゴン』(73年)の劇中でリーの対戦相手オハラの腹を角材で叩いていた名もなき役の人が山下でした。彼のプロフィールはこんな感じです。

 本名、山下正。1942年生まれの日系アメリカ人。沖縄空手の達人で、ブルース・リーにヌンチャク、アーノルド・シュワルツェネッガーに空手を指導。エルビス・プレスリーのボディーガードを務め、全米に空手ブームを巻き起こした全米空手連盟理事長となっています。なかなかの経歴ですが、とにかくそのデビュー作『ザ・カラテ』は類を見ないカルト映画でした。ディスク未発売のため、ここで紹介してみようと思います。

 脚本は1960年代に大ヒット作を連発しながらも、東映・岡田茂社長から「気〇がいみたいなことばかり考えよる」と干されたが、その後も『殺人拳』シリーズや『極道の妻たち』シリーズなどで東映に大貢献する高田宏治。共同執筆に究極の残酷映画『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』(76年)の志村正浩。監督は常に予算・日数オーバーで東映を困らせ撮影所出禁となったアクション畑の野田幸男。奇しくも干された者同士の強力タッグでした。

 空手を海外に広めようと、オハイオ州に移住した日本空手道の創始者・山下作次郎八段。その遺児タダシは「ジャップめ!」と差別されながらも、親切な婆ちゃんに育てられ貧乏農家を手伝いながら成長します。ある日タダシは京都で開催される賞金5万ドルの空手世界大会を知り、婆ちゃんに恩返しするため十数年ぶりに日本の土を踏みます。

 京都に着いたタダシは、ブルース・リー以前の香港スター、ジミー・ウォング監督・脚本・主演作『吼えろ! ドラゴン 起て! ジャガー』(70年)のポスターが貼ってあるラーメン屋で無銭飲食しますが、店主のJK娘の尻を触るチンピラ4人をラーメンすすりながら全員蹴り倒し、ちゃっかり住み込み店員に収まります。それにしてもタダシの極端な棒読み台詞は、日系人のカタコト日本語を演じいるのでしょうか、それとも……。

 そして偶然にも先輩店員・三平(山城新伍)が通う空手道場・正武館の館長は、タダシの父親の友人で空手大会の主催者・鈴木正文でした。この鈴木正文は実在する人物で、正武館も京都に存在します。『殺人拳』シリーズに空手家として出演し、日本プロレスのコミッショナー、アントニオ猪木の異種格闘技戦でレフェリー、あの笹川良一(知らない人はウキで調べてね)の秘書・付き人もしていた計り知れない人物です。

 ところが、すでに日本代表選手は決定済みで、頭を下げても例外は認められないタダシはとんでもない行動に出ます。沖縄空手の日本代表・慶間多(けまだ)を襲撃し、ストリートファイトでKOしてしまいます。主人公らしからぬ非道ぶりですが、案の定「バカ者!」と鈴木館長から説教されますが「シャラップ!」と悪態つきます。父親から空手は仕込まれても、躾は疎かだったようです。

 さて、ダダシが出前中、素手では敵わんと慶間多が武道具の釵(さい)を振り回してリベンジに現れます。これを返り討ちにすると、スポンサーの山谷はあっさり慶間多を見捨ててタダシを代表に据えます。実は山谷、商売敵の東海林興行と互いのお抱え選手の勝敗を賭けの対象にし、空手大会の興行権を鈴木館長から奪い取ろうと企んでいました。東海林興行が抱える選手は、シンガポール代表プランチャです。

 そして世界空手道大会が始まりますが、なんと技を体に当てない寸止めルール。格闘技映画としては超珍しいです。プランチャの相手はベルギー代表マルタン。だがマルタンは足を滑らせ後頭部を床に打ち泡を吹いて気絶、プランチャの勝利となります(これ笑うところ?)。タダシも順調に勝ち進みプランチャと決勝戦で当たり、「アチョー!」とブルース・リーのモノマネを総動員して戦いますが、激しい攻防戦の末引き分けとなり三日後に再試合となりました。

 ここでラーメン屋の娘が卑怯な東海林社長に誘拐され、タダシに負けたアメリカ代表ゲイリーが男気ある行動で救出しますが凶弾に倒れてしまいます。騒動で決勝戦は中止となり、これにブチ切れたプランチャは東海林社長をボコボコにした挙句、片腕をもぎ取ってしまいます(やり過ぎ!)。

 一方タダシは、しつこく現れた慶間多の真っ赤に焼いた釵で両目をジュッと焼かれてしまいます(慶間多は倒します)。さらにプランチャが病室に現れ、視力を失ったタダシにお構いなく挑戦状を叩きつけます。しかも名前がいつのまにブラックタイガーになっていて、勝手に名前を変えられても困ります。タダシは布で目隠しをし、空手大会のクリーンファイトとは一転、互いに槍や鎌を振り回す何でもありの殺し合いが荒野で繰り広げられるのでした。

『ザ・カラテ』は3作シリーズ化され、空手ブームに乗ってヒットします。山下タダシはソニー・チバに続けとアメリカで、恐らく髭のチャールズ・ブロンソンとブルース・リーを組み合わせたブロンソン・リー(汗)に変名されました。その後は千葉真一作品に脇役で出演し、アメリカに拠点を移して『アメリカン忍者』(85年)などの低予算映画、ブルース・リーの娘シャノン・リーのデビュー作『ハードボディ』(94年)などに出演しました。日本では人気爆発とはいきませんでしたが不思議な個性を感じます。そして彼の空手は鋭く、単なるアクション俳優とは一線を画した本物だと思います。再評価が待たれます。

編集部

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