中世ヨーロッパの「性生活ルール」を紹介! 婚前交渉をした者は“腹裂きの刑”に…

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 お互いの合意のもとに行われる性行為だが、中世のヨーロッパでは教会が市民の性生活に厳格なレギュレーションを設けていた。ルールを破った性行為で死刑になる者もいたのである。

■教会による性行為レギュレーション

 中世ヨーロッパでは教会によって信者の性生活に多くの厳格な規則と規定があったため、当時のヨーロッパ人口が減少しなかったのは不思議であるとさえいわれている。

中世ヨーロッパの「性生活ルール」を紹介! 婚前交渉をした者は腹裂きの刑に…の画像1
「Ancient Origins」の記事より

 性行為が許されたのは夫婦間と婚約者間のみであり、特に中世初期においては、それ以外の性行為は大きな罪と見なされた。結婚や婚約前に性行為をしたことが判明した者は、なんと腹裂きの刑(disembowelment)に処せられる可能性まであったのだ。

 お互いに結婚を約束し婚約となった時点でカップル間の性行為が可能となり、正式に結婚式を挙げれば結婚ということになる。

 婚約の状態でまだ性行為をしていなければ関係解消の選択はかろうじて残されているが、性行為をした後に婚約を解消することは事実上不可能で、さらにこの時代はいったん結婚すると離婚することはきわめて難しかった。したがって婚約はほぼ結婚と同じ意味であったのだ。

 離婚が認められる唯一のケースは不妊であった。結婚は子どもを産むためのものだったので、パートナーが子どもを産めない場合、それを離婚の理由にすることができたのだ。

 一部の男性はこれを抜け穴として利用しようとし、性的インポテンツを主張して年老いた妻との離婚が認められるも、新しい妻に対しては一転して性行為が盛んになるという露骨なケースも見られた。

 カトリック教会はすぐにこれらの悪だくみに気付いて新しい規則を制定し、インポテンツの主張を裏付けるためには、夫婦は少なくとも3年間結婚生活を送っている必要があり、そのうえで証人が必要とされたのだ。

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「Wikimedia Commons」の記事より

 またカトリック教会はいつ性行為をしてもよいのかについても細かく定めた。

 宗教暦に定められた「純潔の日(chaste day)」に性行為を行うことは許されなかった。クリスマスやイースターなどなどの休暇中や、6週間の四旬節中も性行為が禁止された。また1週間のうち日曜日と金曜日も性行為は禁止されていた。

 さらに妊娠中、月経中、授乳中は性行為を避けるべきであるとされた。したがって1年のうちで性行為ができる日はそれほど多くはなかったのである。

 性行為が許されている日だからといって唐突に性行為に及ぶことも禁止されていて、パートナー間で事前に合意を得ていなければならなかった。

 このように信者の性行為を事細かく規定していた教会であったが、次第に多くの人々が厳密には従っていないことを理解し、徐々に規則を緩和していくことになったのは幸いなことだといえるだろう。12世紀までに、これらの規則のほとんどは規則ではなく推奨事項となった。教会は人々が日々を信仰に費やすことを望んでいたが、規則で縛り上げることはしなかったのだ。

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「Wikimedia Commons」の記事より

■同性愛者は火あぶりの刑に

 教会の基本的な考えは性行為は生殖行為であり、そのほかの意味は認めていなかった。積極的に子作りをしようとしている場合にのみ性行為をするべきであり、快楽のために性行為をすることは大きな罪であるとしていた。

 もう1つの大きな罪は寝室でのわいせつ行為である。性行為は、男性が主導して女性に対して行うものと見なされていた。許可された唯一の性行為は、男性が積極的な役割を果たし、女性は終始受動的なままで終わる性行為で、正常位の体位しか認められていなかった。

 女性上位などもってのほかで、男性優位性を損なう体位は罪深く地獄に行く可能性が高くなると説明されたのである。

 子どもを作ることを目的としない性行為は、ソドミー(sodomy)と見なされ、口内性交、肛門性交、自慰行為などの行為も禁止され、前戯も省くことが求められた。

 これらの規則を破るときわめて厳しい罰が下った。特に同性愛者は重罪に処せられ、ソドミーの罪で有罪となった男性は、火あぶり、絞首刑、さらには飢え死にさせられる可能性があったのだ。

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ソドミーの罪での火刑 「Wikimedia Commons」の記事より

 しかし皮肉なことに、教会がこうした規則を厳しくするほどに人々は性行為が好きになり、性行為をスリルと背徳感のある魅力的な楽しみと考えるようになっていったという。性行為が密室の寝室で行われる以上、教会の目は届かないのである。

 そして性行為に対する教会の思惑は裏目に出ることになった。特に上流階級の人々は妻とは別に愛人を持つようになり、性行為を愛人と存分に楽しむ生活を送るようになったのだ。

 こうしてカトリック教会が定める性行為の考え方と規則は形骸化していき今日に到る。しかし一部ではこれらのレギュレーションがまだ厳格に遵守されている場所や組織が実在していることは事実で、今日享受している性的な自由は当然のことではなかったことを再確認すべきなのかもしれない。

参考:「Ancient Origins」、ほか

文=仲田しんじ

仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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