陰謀論で話題の“イスラム教初”英議員「風刺画、怒らざるを得ない」
世界中を震撼させている過激派組織「イスラム国」(IS)の信奉する宗教として、さまざまな脅威や偏見とともに語られるイスラム教。そんな状況下でイスラム教徒として初めてイギリス上院議員となったナジール・アメード卿が2月に初来日を果たし、16日に都内で会見を開いた。
アメード卿は、日本ではムスリムの議員というよりも“いわく付きの人物”として度々取り沙汰されてきた。それは「イギリスの諜報機関MI5によって盗聴された」や「テロリストを支援した」など、陰謀論的なものだ。
そんなアメード卿の会見となれば、どのような見解が飛び出すのか注目が集まるのも当然のこと。会見場にはテレビ、新聞などの各メディアが集まっていた。アメード卿は、昨今のイスラム教をとりまく状況を「混沌として予想のできない状況になっている」としたうえで、イスラム過激派組織ISについても「ISはイスラム教を悪用していて、イスラム教に寄せる若者たちの思いをも悪用している」と非難した。その一方で、フランスの週刊誌『シャルリー・エブド』の風刺画掲載については、言論の自由を尊重しつつも「母親よりも偉大なムハンマドを侮辱されたらムスリムは怒らざるを得ない」「(風刺の自由と)責任とのバランスが大事である」と、欧州でのホロコーストの扱いなどを引き合いに出して、異教徒であってもイスラム教に対する敬意を払うべきと牽制した。
一方で、アーメド卿はイスラム教が過激な宗教とみられることについても懸念し、「仏教やキリスト教が平和の宗教ならば、近年起きたウクライナやスリランカ、ビルマでの戦闘行為はどうなるのか?」と、近年起きた紛争を事例にして戦争やテロと宗教を結びつけるのは偏見であるという見解を示した。そのうえで「ISによって殺害された被害者に対して、ほとんどのムスリムは哀悼の意を示している」と極めて理性的な姿勢を崩すことはなかった。
日本人人質事件が悲劇的な結末を迎えたことについても、「いまこそ日本は沈黙するべきではない」「立場を崩すことなく国連の強化に力を注ぐべき」と、日本の立場に理解を示しながら今後の指針についても触れた。出席していた記者たちからISに対する有志連合の空爆や地上作戦に話が及ぶと、「イギリスは部隊を送らないということを議会が決定している。アメリカがほかの国と手を組んで地上部隊を送ったところで、勝つことはできないと思っている」と否定的な見解を述べた。そのうえで、現状の中東での問題を解決するためにはスンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランが中心となっている代理戦争であるということを理解し、両国を交渉のテーブルにつかせることのほうが重要だと語った。
さらに、今後のISとテロの観点から懸念するべきは、彼らが生物兵器や化学兵器を入手してしまう可能性だという。現在、世界中の情報機関が注視しているだろうと意見を述べた。終わってみれば、陰謀論よりもよほど厳しい現実を示されたといえるだろう。人質事件のあと日本もテロのターゲットであるとISに名指しされた以上、我々がムスリムへの理解を進めていく必要に迫られているのは間違いない。
(文=丸山祐介)
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