《Tape Painting(Box#4)》部分
では、なおよく見てみよう。写真は、前出の作品《Tape Painting(Box#4)》の一部分を真上から見たものである。
ガムテープ先端のこのグシャグシャ感――誰にでもこんな風にしてしまった記憶が一度や二度はあるだろう。しかし、このテキトーな感じを絵具によって再現したのだとすれば、これは驚きと言う他ない。「真実は細部に宿る」と言うが、まさにそのとおりである。細かく見れば見るほど、むしろリアリティの度合いが強まってくるようだ。
水口によれば、あらかじめ型を用いて絵具でテープ部分をつくり、それを支持体(この場合、段ボール)に貼り付けていくそうだが、手順はどうあれ、こういう誰でもやりそうな無造作な作業の結果を、ここまでリアルに視覚化した作者の力量には感動すら覚えないだろうか。「よくぞここまで……」と言いたくなる。