科学の力で27年ぶりに蘇ったバイオリニスト! 脳波で四重奏に成功「誰しも涙せずにはいられないほどの音色」
■不幸の事故で奪われた世界的才能
ジョンソンにそのきっかけを与えたのは、イギリスのプリマス大学と英国王立病院が10年越しに一丸となって取り組んでいる、神経障害のプロジェクトだ。ジョンソンの脳は特殊な音楽ソフトの入ったコンピューターに接続され、なんと作曲することが可能になったというのだ。
スクリーン画面上に異なる色の点が映し出され、ジョンソンが焦点をあわせることでコンピューターがそれを読み取り、楽譜やフレーズに変換する。それを演奏者が実際に音にすることによって、ジョンソンの作曲した曲が音色となって奏でられるのだという。
プリマス大学のエドゥアルド・ミランダ博士は、「最初にその音を聞いた時、我々チームの誰しもが涙せずにはいられませんでした。その音色から、また音楽に触れ合うことができるという喜びがあふれているのを感じたのです」と語っている。
この偉業は、彼女にとってもプロジェクトに関わる科学者たちにとっても非常に感動的であったのは言うまでもない。また、27年経った今でも彼女の音楽の知識は色褪せていなく、正確に音を読み取る能力は衰えていないことがわかったともミランダ博士は語っている。
「このプロジェクトの大きな成果は、実際に動くことができなくても音楽を演奏することが可能であるという点にあるのです。彼女は自分の作曲した音楽を別のミュージシャンを指揮する形で、自分の思い通りに演奏することができたのです。我々はまだ思考を読み取ることはできませんが、被験者に脳信号をうまく制御するよう訓練することはできる」と、博士は将来的な可能性について語った。
■他の患者と共に四重奏も
この病院に暮らす他の3人の患者もこの技術を訓練し、実際に活躍しているバーガーセン・ストリング四重奏団を病院に招いてジョンソンとの四重奏を練習している。患者たちはそれぞれ「EEG cap」という脳波を読み取るためのキャップを装着し、バーガーセン・ストリング四重奏団の各団員とペアを組んで向かい合って座り、リアルタイムで進行できるように工夫されているのだという。
バーガーセン・ストリング四重奏団の助けもあって、リアルタイムに演奏されるこの四重奏は「パラミュージカルアンサンブル」と呼ばれ、昨年すでに「Activating Memory」と名付けられた曲を録音している。さらに同年、ペニンシュラ現代音楽祭にて公演もはたした。
Activating Memory from Eduardo Miranda on Vimeo.
ロンドン西部のハウンズロー区に住む母マリーは今年で80歳。娘のジョンソンについて、このプロジェクトが娘に新たな希望を与えてくれたと喜んでいる。
「音楽が、娘にとって唯一の活力なのです。娘のためにグランドピアノを病院に持って行ったことがあるのですが、障害のため少しのコードしか弾けないにもかかわらず、心底楽しんでいるのがわかりました。やはり娘にとって音楽は唯一無二の存在なのでしょうね」
また、英国王立病院の医師は「これは障害のある者、ない者がお互い1つの目標に向かって音楽というものを作り上げていく非常に画期的なプロジェクトなのです。特にローズマリー・ジョンソンのような洗練されたスキルを持っている場合、一般の人が障害を持っている人から何かしら刺激を受けることも多いにあり得るのです」と、語っている。
これからより多くの分野に応用されていく技術であろうが、まさに障害のあるなしを超えた人間同士の心の触れ合いを感じることができる。考えるという人として最も尊い行為から障害を考える実にいい話である。彼らのパラミュージカルアンサンブルの美しい音色を聞けば、超えられないものはないように思えてくる。
Paramusical Ensemble from cinema iloobia on Vimeo.
四重奏の演奏風景。(アナザー茂)
参考「Telegraph」
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