母親が寝ている横で父親に乱暴され…! 事件ノンフィクショ ンライターが選ぶ「特徴的な親殺し事件3」

※本記事は、2015年の記事の再掲です。


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credit:Eric Wienke/from Flickr CC BY 2.0

【今回の事件 親殺し】

 殺人は、親族間によるものが最も多い。子どもが親を、親が子どもを、妻が夫を、夫が妻を殺す。兄弟間の殺人もある。警察庁の平成23年の統計では、親族間の殺人は、殺人件数の52.2%を占めており、殺人件数自体は年々減少しているが、そこに占める親族間の殺人の割合は逆に増えているのだ。中には、保険金殺人や財産目的などもあるが、ほとんどが感情のもつれによるもの。もちろん、そこには、さまざまなドラマがある。

 今回は親族でも、親殺しに絞って、特徴的な事件を紹介しよう。

■CASE1 友人に頼んで母親を殺した16歳少年の“友情”

 病院の臨時職員として働きながら、女手一つで自分を育ててくれている母(当時46歳)を殺した息子(当時16歳)がいる。しかも「俺は殺人組織の人間。母親はあかの他人。殺してほしい」などと言って、30万円の報酬を渡すとして、殺害の実行は友人(当時15歳)にやらせていた。

 平成18年8月27日、北海道稚内市で事件は起きた。午後10時頃、自宅にいた少年は、母親が浴室に入ったところで、外にいた友人を携帯電話で呼び、招き入れた。少年は友人に包丁を渡す。浴室から出てきた母親は、その包丁で刺されて失血死したのだ。

 強盗殺人に見せかけるため、少年はタンスからアクセサリーや衣類を持ち出すなど、家の中を荒らした。友人は家から出て、少年は深夜12時頃、119番通報する。しかし警察に対する不自然な説明を追求されて自供に至り、翌日の午前3時半頃、少年と友人は逮捕された。

 少年はもともと、横須賀で両親の元で育っている。父親は海上自衛隊員。少年の憧れの存在だった。「将来は親父と同じ海上自衛隊に入りたい」「町や人を守れるような人間になりたいんです」と、中学の卒業文集に記している。

 だが、きちんとした説明もないまま両親は離婚。母に連れられて、少年は稚内にやってきた。事件の1カ月前、少年は家出して横須賀に向かった。父の住む家に行くと、玄関前に置かれたベビーカーが目に飛び込んできた。離婚してすぐに再婚、すでに子どもまでいることに少年はショックを受ける。

「なぜ離婚したのか」家に戻ってから少年が母に質すと、「あなたには関係ない」と言われ、母は父をかばった。供述で「自分を捨てた父が憎く、それをかばう母も憎かった」と少年は殺害を決意するに至った心情を語った。

 友人に頼んだ理由としては、「自分の手で母親を殺害するのは嫌だった」と供述。殺害時には、少年は2階の自室にいた。一方、友人の方は、「初めは冗談だと思った」「金がほしかった」「頼まれて断れなかった」と供述している。実際には報酬は渡されていない。

 平成19年1月、旭川家裁は少年と友人を中等少年院送致とする決定を下した。少年に関しては説明を受けないまま両親が離婚している事実、友人に関しては言語を介しての感情表現能力や現実吟味能力が低かったなどが斟酌され、刑罰よりも更正を重視した保護処分となった。

 

■CASE2 乱暴する父親を殺した娘

 昭和43年10月5日、娘(当時29歳)が父(当時53歳)を殺害する事件が、栃木県矢板市で起きた。同日午後10時頃、娘が警察に自首して発覚する。逮捕されて素直に供述を始めた、娘の口から出てきたのは、驚くべき父と娘の関係だった。

 娘が中学2年生の時、布団に忍び入ってきた父に性的暴力を受けた。母親はすぐ近くに寝ているのに、気がつかない。それは1週間から10日の間隔を置いて繰り返される。しばらくして娘は母に事実を明かした。当然のことながら、母は父をなじる。すると父は包丁を持ちだして、「一家を皆殺しにする」と怒り狂い、母を家から追い出してしまう。

 母がいなくなり、父は娘に様々な体位や方法を求め、1日に何度も犯すようになる。昭和31年、17歳で娘は妊娠してしまい、出産する。それから昭和39年にかけて、5人の子どもを産む。そのうち2人は生まれて間もなく死亡、3人は私生児として育てた。

 印刷工場で働いている時に、娘は、年下の同僚と恋仲になり、やがてプロポーズされる。彼と結婚したいと告げると、「そんな奴、ぶっ殺してやる」と父は怒り狂う。結果的に娘は彼との約束を反故にすることになり、職場にも行きづらくなり辞めてしまう。

 何もかも失い無気力になった娘に、父は「出ていくんならどこへでも行け」「どこまでも追いかけて行くから」「おめえなんか、呪い殺してやる」と、始終酔っ払っいながら罵声を浴びせた。限界まで追い詰められた娘は、父の首に、、傍にあった股引の紐をかけて絞め殺したのだ。

 強姦は最高で懲役20年が科せられる重罪である。それを実の娘に行い続けた、父。裁判の争点は「これが尊属殺人(祖父母・両親・おじ・おばなど親等上、父母と同列以上にある血族(尊属)を殺害すること)に当たるのか?」であった。

 以前に存在した刑法第200条には、次のように書かれていた。

「自己又は配偶者の直系尊属を殺したる者は死刑又は無期懲役に処す」

 通常の殺人の場合、5年以上の懲役から無期、死刑までの幅があるのだが、尊属殺人の場合は、無期か死刑と定められていたのだ。一審の宇都宮地裁は、殺人罪の適応は認めたが、症状を酌量して刑を免除する、という異例の判決を下した。

 東京高裁は「泥酔した父親を殺害することは正当防衛とは認められない」として、懲役3年6カ月の実刑判決を下す。昭和48年4月4日、最高裁は娘に、懲役2年6カ月、執行猶予3年の判決を言い渡した。殺人での執行猶予付きの判決も、きわめて異例だ。

 そして判決には次の一文があった。

「尊属殺人罪の法定刑が、死刑、無期懲役に限定されているのは違憲である」

 この判断によって、平成7年の刑法改正時に、刑法第200条は削除された。

 

■CASE3 警察官の父親を斧で一撃した16歳少女

「本当はギロチンにしようと思った」

 後でそう語った少女(当時16歳)は、警察官である父親を手斧で殺した。

「夫が首を切って自殺した」

 平成19年9月18日午前4時40分頃、京都府田辺署にもたらされた第一報はそれであった。署員が京田辺市の家に駆けつけ2階に上がると、ベッドの上にランニングシャツとパンツ姿の、血まみれの男性が、すでに事切れていた。男性は、京都府警南署交通課巡査部長(当時45歳)であった。そばに、放心状態で立ち尽くしている次女がいた。黒のワンピースには返り血が付着している。

「お父さんを殺しました」

 そう口にしたので、少女はその場で逮捕される。1階のダイニングキッチンで、血のりの付いた手斧(刃渡り約11センチ、柄約30センチ)が見つかった。真上から振りおろされた手斧で、巡査部長は即死状態であったとみられた。傷は首のほか、顔、手などにもあった。少女は当時、奈良市内の専門学校2年生。ビジュアル・デザインを専攻していた。小学生高学年のころに、「お父さんにたたかれる。嫌い」を少女は友人に漏らしていた。

 殺害の動機としては、「父親の女性関係に数年前から疑問を抱いていた。ギロチンにしようと思った」と供述。巡査部長は、わいせつな内容のやりとりが残されたパソコンの画面を容易に見られる状態にしていたという。「お父さんがこの世から消えてしまえばいいと思った」と殺意をあからさまに語った。

 少女は、犯行5日間の13日に、ホームセンターで手斧を購入。17日は眠らずに犯行に及んだ。「一撃した後も、呼吸音が聞こえたのでとどめをさした」「また生きていると思い、さらに2回、手斧を振りおろした」と供述している。

 平成20年1月23日、京都家裁で少女への処遇が言い渡された。少年法第20条に寄れば、16歳以上が故意の殺人をした場合、検察官に送致し刑事処分を受けさせることを原則として定めている。だが、裁判長は犯行の重大性や計画性を認めらながらも、「なお保護処分を許容しうる特段の事情がある」として、中等少年院送致の保護処分の決定を示したのだった。
(文=深笛義也)

■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか? 革命か? それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ

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文=深笛義也

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)、『罠: 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった』(サイゾー)がある。ほか、著書はコチラ
Twitter:@giyagiyagiya

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