遺伝子編集が暴走したら… 専門家が警告する「キメラ動物」と「超人」誕生

遺伝子編集技術の進歩は、もはやSFの領域を超えて現実のものとなりつつある。CRISPRなどの技術により、動物や人間の遺伝情報を書き換えることが可能となった今、その力をどこまで使うべきかという倫理的な問いが、世界中で急速に注目を集めている。
キメラ動物と“半人半獣”の未来
近年、科学者たちは「キメラ」と呼ばれる異種交配の生物を作り出す実験を行っている。たとえば、ヤギとヒツジの遺伝子を組み合わせた「ギープ(geep)」や、マウスとラットの遺伝子を組み替えて作られたハイブリッド生物などがそれだ。
中でも最も議論を呼んでいるのは、人間の遺伝子を動物に組み込む実験である。たとえば、パーキンソン病や筋ジストロフィーの研究のため、ヒトの神経幹細胞をサルの胚に移植するというプロジェクトが進行中だ。こうした「ヒト化マウス」や「ヒト霊長類キメラ」は、医療研究にとって有用ではあるが、“動物が意識を持ち始めるのでは”という倫理的な懸念も浮上している。

強化された動物たちと“進化型”家畜
技術は単に交配にとどまらない。科学者たちは特定の遺伝子を意図的に操作することで、自然界には存在しない特性を持つ新種を作り出している。たとえば、ウーリーマウス(毛むくじゃらのマウス)や高速で成長するブタやサケなどがすでに登場している。
さらには、視覚や聴覚を強化し、紫外線や超音波までも感知できる“スーパー感覚”を備えた生物、さらには電気を感知する全く新しい感覚器官を持つ生物の開発も視野に入っている。遺伝子改変による“超家畜”の誕生は、食料危機の解決策として一部の科学者から期待されているが、一方で倫理的・生態的なリスクも無視できない。
人工生命と“合成人間”の可能性
最も注目すべきは、「合成胚(synthetic embryos)」の研究である。これは、幹細胞を再プログラムして人工的に胚を作り出す技術であり、将来的には完全に人工的な生命体――あるいは“合成人間”を生み出すことも可能になるとされている。
実際、すでに一部の合成胚は心拍機能を持つまでに発達しており、専門家の間では「子宮に移植して成長させるのは無責任だが、技術的には不可能ではない」と指摘されている。もしそれが現実となれば、「生命とは何か」「人間の定義とは何か」という根本的な問いに立ち返る必要があるだろう。

未来を選ぶのは誰か?――科学と倫理のせめぎ合い
ウィスコンシン大学のサハ教授は、「これらの研究は非常に曖昧なグレーゾーンにある」と警鐘を鳴らす。命を救う技術としての可能性と、倫理の一線を越える危険性。そのどちらにも目を向けなければならない。
私たちは今、遺伝子操作によって“新たな進化”を手に入れようとしているが、それがもたらすのは理想郷なのか、それとも制御不能な混沌なのか――科学が踏み出すその一歩に、世界の注目が集まっている。
参考:Daily Mail Online、ほか
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2024.10.02 20:00心霊遺伝子編集が暴走したら… 専門家が警告する「キメラ動物」と「超人」誕生のページです。遺伝子、キメラ、遺伝子編集、合成などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで