“マンモス復活計画”の一歩?マンモスの遺伝子を組み込んだ「ウーリーマウス」が誕生!

かつて地球を闊歩していたケナガマンモス(ウーリーマンモス)の復活を目指すアメリカのバイオテクノロジー企業「Colossal Biosciences」が、新たな段階に踏み出した。彼らが開発したのは、マンモスの遺伝子を組み込んだ「ウーリーマウス」だ。
ウーリーマウスとは?
Colossal社は、マンモスのDNAを解析し、毛の質や寒冷地適応能力に関与する遺伝子を特定。その遺伝子をマウスに組み込むことで、長く波打つ体毛や脂肪の代謝を調整する能力を持つマウスを生み出した。この実験はマンモス復活への第一歩とされている。
同社は絶滅した動物を蘇らせることで、生態系の回復に貢献すると主張している。たとえば、マンモスがシベリアの永久凍土を踏み固めることで、温暖化を抑制できる可能性があるという。この研究には多額の資金が投入され、著名人やCIAからも支援を受けている。

期待と懸念“絶滅動物の復活”は正しいのか?
しかし、専門家の間では懐疑的な声も多い。遺伝子編集による“再野生化”にはリスクが伴う。オオカミやゾウなどの種が人間との軋轢を生み出してきた歴史を考えると、マンモスを復活させた場合、彼らは何を食べ、どこで生きるのか、どのように保護されるのかなど、多くの課題が残る。
また、進化の過程で失われた遺伝子を再び組み込むことが、生態系にどのような影響を与えるのかも未知数だ。スコットランド国立博物館の古生物学者エルサ・パンチロリ氏は「温暖化が進む世界で、寒冷適応した生物を蘇らせるというのは矛盾している」と指摘する。
遺伝子編集技術の進化と未来
Colossal社は2021年に設立され、創業者のベン・ラム氏とハーバード大学のジョージ・チャーチ博士が率いる。2024年にはゾウの幹細胞を開発し、それを卵子に変化させる技術を発表した。これは、将来的にマンモスとゾウのハイブリッドを誕生させる上で重要なステップとされる。
ウーリーマウスの開発は、これまでの研究の延長線上にある。同社のチーフサイエンスオフィサー、ベス・シャピロ氏は「この研究は、絶滅動物の特性を復元する方法を確立するための重要な一歩である」と述べている。
研究の倫理的問題と未知のリスク
遺伝子編集には失敗のリスクがあり、代理母や誕生した個体の健康問題も懸念されている。コロンビア大学の倫理学者ロバート・クリッツマン氏は「この研究には倫理的な価値があるのか?」と疑問を呈し、「ただの話題作りではないか」と指摘する。
また、ウーリーマウスが野生化した場合の影響も問題視されている。たとえば、遺伝子改変されたマウスが逃げ出し、自然界の個体と交配した場合、予測不能な生態系への影響を及ぼす可能性がある。
シャピロ氏はこれらの懸念に対し、「生まれたマウスはすべて健在であり、適切なケアのもとで飼育されている」と述べる。さらに、Colossal社の研究は倫理委員会(IACUC)の監督のもとで進められていることを強調した。

“マンモス復活”は科学の進歩か、それとも驕りか?
Colossal社の研究は、科学技術の進化を示すものだが、それが本当に生態系や環境にとって有益なのかは議論の余地がある。米カリフォルニア大学の倫理学者クレイグ・カレンダー氏は「この研究が遺伝子編集技術の進歩に貢献する可能性はあるが、マンモス復活は単なるパフォーマンスに過ぎないのではないか」と疑問を呈している。
一方、シャピロ氏は「遺伝子編集は、自然環境の変化に適応するためのツールとして活用すべきだ」と主張する。彼女によれば、進化のスピードが環境変化に追いつかない現代において、遺伝子編集は病気への耐性向上や絶滅危惧種の保護に役立つ可能性があるという。
しかし、国際野生生物保護協会のスー・リーバーマン副会長は「遺伝子技術に反対するわけではないが、資金を本当に必要な保護活動に回すべきだ」と述べている。
ウーリーマウスの誕生は、マンモス復活という壮大なプロジェクトの小さな一歩に過ぎない。この試みが未来の生態系保全に役立つのか、それとも科学の驕りなのか――その答えが出るのは、まだ先になりそうだ。
参考:Scientific American、ほか
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2024.10.02 20:00心霊“マンモス復活計画”の一歩?マンモスの遺伝子を組み込んだ「ウーリーマウス」が誕生!のページです。復活、絶滅、マンモスなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで