ソーラーパネルの発電効率がアップ!? ブルーレイディスクの新たな活用方法が発見される
約10年前より次世代DVDとしてHD DVDと共に満を持して名乗りを上げたブルーレイ――。「次世代ビデオ戦争」と呼ばれ熾烈な争いが繰り広げられたが、高画質動画のネット配信が一般化してきた最近では、あまり身近に感じない人も多いかもしれない。だが最新の研究で、ブルーレイディスクが持つ技術は全く異なる方面で活用される可能性が出てきたという。
■ブルーレイディスクで光吸収率が2割向上
研究を行っているのは、米ノースウェスタン大学の化学者、ジアシン・ファン氏を中心とする調査チーム。彼らはブルーレイディスクが光を取り込む能力に優れている点に着目、ソーラーパネルの発電効率をアップさせるのに活用できないかを調査し、成功したという。
CD-ROM(640MB)78枚分、DVD(4.7GB)では10枚分の記録容量を誇るブルーレイディスクは、内部のデータ層に微細なピットが高密度で刻まれている。「ピット」は小さな凹凸で、青色レーザーの光を当てた時の反射率の違いによってデータを読み取る仕組みになっている。
蝶の羽やイエバエの眼などの自然界の生物が持つ「準ランダムなナノ構造(Quasi-random nanostructures)」は光を複雑に反射させ人の目には玉虫色に輝いて見えたりするのだが、ブルーレイディスクもそれと同様に光を受けると人間の目には色付きに見える「準ランダムなナノ構造」があることが発見されたのである。
調査チームは実験でまずブルーレイディスクの端を切り取り、一番上のプラスチックの保護層を外してデータ層を露出させた。そしてその表面の上に液状プラスチックを注ぎ、硬くなるまで一晩寝かせた。
こうして出来た「準ランダムなナノ構造」をかたどったプラスチックを、スタンプのようにソーラーパネルの表面に押しつけて構造を刻印させてから光吸収率を計測したところ、約2割(21.8%)も向上することが判明したのである。なおブルーレイディスクであればブランドやデータの内容は問わないということだ。
ジアシン・ファン氏は、「ブルーレイ技術を開発している電気エンジニアとコンピュータサイエンスの専門家が、まるで我々の仕事を無意識に手伝ってくれていたみたいですね」と、思いがけずに転用可能となった技術に驚いている。
費用対効果も高く、もし将来的に普及されれば、エネルギー開発において世界中でかなりの影響を及ぼすであろう今回の発見。今後のさらなる研究と成果に注目したい。
(文=Maria Rosa.S)
参考:「Popular Science」、「Nature」、「Science Daily」ほか
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