深夜のパチンコ屋にうつむきながら入っていく謎の男達と不思議な警察官【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、うえまつそうの新連載「島流し奇譚」。この連載では現役教師ならではの他にはない実話怪談を紹介する。第11回目となる今回は、「パチンコ屋」にまつわる恐怖体験。
パチンコ屋というと賑やかな繁華街にあるイメージだが、伊豆諸島のパチンコ屋というのは島の景観を損ねないためなのか、道路から一本細い道をグッと入り、林の中にプレハブ小屋のように存在する。
そのパチンコ屋のいわゆる景品交換所で1年間働いていたMさんという女性の方から聞かせていただいたお話。
Mさんは元々埼玉県在住の方で、たまたまアルバイト情報サイトで見つけた島の景品交換所のアルバイトに採用され、ある年の7月にリゾートバイト感覚で島にやってきた。彼女はパチンコ屋のすぐ隣にある簡易的な宿舎を用意してもらいそこにひとり寝泊まりしていた。
海に近い宿舎の部屋の中は波の音が聞こえ、夜は星も綺麗に輝いている落ち着いた環境で、Mさんは都会の喧騒から離れて快適に過ごしていた。しかし、島に来て1ヶ月が経った8月のある暑い夜、小雨が降り続ける中、蒸し暑く寝苦しい熱帯夜を過ごしていた。
何度も寝返りを打って扇風機の風にあたり、ようやく寝つき始めたその時、
コンコンコン…コンコンコン…
え?夜中に誰?
コンコンコン…コンコンコン…
どうやら夢ではなさそう
コンコンコン…コンコンコン…
Mさんは布団から起き上がって玄関まで行き尋ねた。
「だ、誰ですか?」
「あ、すいませんこんな時間に。警察の者なんですが、ちょっといま電話で通報があってお話伺えますか?」
「わかりました。」
普段はかなり用心深いMさんだが、なんとなく大丈夫な気がして鍵を開けた。
ガチャ…玄関のドアを開けるとそこにはニコニコと優しい笑顔の島の警察官が立っていた。
「わ、ありがとうございます。いやね、先ほど警察に通報の電話があって、真夜中なのに20人くらいの男性が全員うつむきながらぞろぞろとこのパチンコ屋さんに入って行ったから、これ夜中に内緒で営業してるんじゃないかって連絡をいただいたもので。まさか…深夜に営業なんてしていませんよね?」
「20人くらいの人?いやわたし足音も声も聞いてないですよ?よかったら店内も見てみますか?」
何かあったときのためにと渡されていたパチンコ屋の鍵をジャラっと持って、Mさんはシトシトと小雨が降る中、その警察官とふたりで宿舎からパチンコ屋の玄関に抜ける暗い道を歩いた。
「すいませんね、お休みのところなのに。それにしても真夜中に…変ですよねぇ。もしかするとその人たち幽霊だったりして。ほらこのあたり昔、軍事病院があった跡地だって聞いてますし」
「いややめてくださいよ怖いなぁ」
そんな話をしながらパチンコ屋の入り口に着き、ガチャガチャ…鍵を開けてMさんはパチパチパチ…と電気を点けると店内は明るくなった。
「ほら、誰もいないでしょ?…え?」
そう言いながら振り向くとさっきまですぐ隣にいたはずの警察官が忽然と消えていた。
降っていた雨のせいで少しぬかるんでいた宿舎からの細く暗い土の道には、Mさんの足跡しかなかったそうな。
急いで警察署に電話をし、こうこうこんな風貌の警察官が尋ねて来たことを話すと、この時間にパトロールに出ている者はいない、そしてそんな風貌の警察官はこの島にいないと言われたという。
一体、あの警察官は何者で、何がしたかったのか。後日調べてみても特にそのパチンコ屋で何か事件や事故があった形跡はなかったそうだ。しかし、インターネットでその島の心霊スポットを調べると1箇所だけ、意味深にそのパチンコ屋の目の前がマークされて表示されるという。
異世界やあの世とのポータルのような場所とでもいうのだろうか。謎は尽きないが、Mさんはその島のパチンコ屋の仕事を1年も続けずにまた埼玉県へと戻ったという。
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