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【反出生主義】人類は段階的に絶滅していくべき、でも自殺は推奨できない?…ベネターの哲学の魅力を翻訳者である小島和男准教授が解説!の画像1
『生まれてこないほうが良かった 存在してしまうことの害悪』(すずさわ書店)

 南アフリカ共和国のケープタウン大学教授であるデイヴィッド・ベネターは哲学書『生まれてこないほうが良かった 存在してしまうことの害悪』の中で「(人間を含むすべての感覚のある存在者は)生まれてこない方が良かった」とする「反出生主義」を提唱している。原書は2006年に出版されて哲学業界で大きな話題となり、2017年10月には待望の邦訳が出版された。翻訳を手がけた学習院大学の小島和男准教授に話を聞いてみた。第1回はコチラ

――本書の中でベネターは「人類は段階的に絶滅していくべきである」という「段階的絶滅」を提唱しています。著者自身は本気でそうなった方がいいと思っているんでしょうか。

小島和男准教授(以下、小島) そうではないことを願っているというように本書で述べてはいますが、ともあれ理論的にはそうだと思っているんでしょう。ベネターもそういう運動家からのインタビューを受けたりはしています。ただ、僕としては、これはあくまでも1つの説として受け入れて考えてみたいと思っています。正直、どうしたって段階的絶滅には行かないですよね。いくら今のところ反論ができなくても、それが絶対的に正しいっていう保証はいつまでたってないですし。

――小島先生はベネター本人にお会いしたことはないんでしょうか?

小島 会ったことはないですし、直接やりとりもしていないです。翻訳の過程で分からないところがあったら聞こうと思っていたんですけど、ほかの優秀な研究者の方が私の質問に答えてくれたりしたので、ベネターさんを煩わせることなく済みました。

 そもそも自分の顔写真も全く表に出されていないんですよね。学会とかには出席されているので、同じ分野の研究者の方はお顔を存じ上げているんだとは思いますけどね。なので近いうちにお会いすることにはなると思います。

――ベネター自身には子供がいるのかな、というのもちょっと気になったんですが。

小島 その質問に関しては、インタビューでもたしかはっきりとは答えていなかったんじゃないかな。明言しないという態度を貫いているのではなかったでしょうか。本人が写真も嫌だと言っているぐらいだから、個人的なことはあんまり詮索してあげない方がいいと思います。

 というのも、この本を出版した後に、内容を読んでいない批判や、彼の人格を攻撃するような反論も随分多かったらしいんですよ。

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撮影=編集部

ただ、人格を攻撃する反論がなんでできるんだろう、とは思いますけどね。最後の章でもベネターは、自分は「人間好き」なんだと書いています。読んで頂ければわかると思うのですが、彼にあるのは人間を含む生物への慈しみとか愛なんですよね。

 あと、これはとても大事なのですが、ベネターは自殺を推奨してはいないんです。死ねばいいと言っているわけではない。人間全体の苦の総計が少ない方がいいということなんですよ。1人の人が死ぬときには、例外はありますけど多くの場合、困る人も悲しむ人もたくさんいるし、本人にとっても死ぬときの痛みや辛さや怖さは計り知れないものだと思うんですね。だとすると、自殺するっていうのはマイナスが大きすぎますよね。ベネターに言わせると、我々は「始める価値」はなかったけど「続ける価値」はある人生を生きているんです。すごくその価値が大きいわけではないですけど、やめるよりは続ける方がいいのです。喩えると、私たちの人生は、帰ろうとするとぶん殴られる退屈な映画の鑑賞のようなものでしょうか。

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