カーボンナノチューブでサイボーグ植物の誕生か?植物が化学兵器探知機に!?
うららかな春の陽に当たってボーっとしていると、人間も植物みたいに光合成ができればいいのに、とか思ったりしませんか。陽に当たるだけでエネルギーが得られれば便利ですが、実は植物の光合成はそれほど効率のよいものではなく、浴びる太陽光エネルギーの10%ほどのエネルギーしか生み出さないと言われています。しかし、植物を人工的に改造して、その性質を強化するという研究が3月16日、科学雑誌「Nature Materials」にて発表されました。
「Scientific American」や「New Scientist」が報じたところによると、植物の光合成を行う器官である葉緑体にカーボンナノチューブを埋め込むことなどによって、生体外でより長い時間光合成を行ったり、光合成の効率を上げたりできたということです!
このカーボンナノチューブというのは微細な炭素の管で、その直径は1ミリの100万分の1ほど。強度はダイヤモンド並で、電気や熱を非常によく伝える性質を持つ、可能性満ちた新素材です。まさに時代を先取るニューパワーなのです!
実験では、ホウレンソウから葉緑体を取り出して糖液に浸し、カーボンナノチューブとナノセリアと呼ばれる抗酸化作用を持つナノ粒子を埋め込みました。通常、植物から取り出された葉緑体は4時間ほど光合成を行いますが、これらを送り込むことにより、2時間長く光合成をすることができました。また、この6時間のエネルギー効率は通常の3倍となっていて、カーボンナノチューブなどを使った「サイボーグ化」が、光合成の機能を某少佐並みに高めていることがわかります。
また、葉緑体を取り出したりせず、植物(シロイヌナズナ)にそのままカーボンナノチューブなどを注入しても、光合成の効率を上げることができました。植物からすれば異物を混入されたことになりますが、それでも数週間は枯れることがなかったそうです。
■植物が化学兵器探知機に!?
これらの結果は、カーボンナノチューブが光のアンテナのような役割をしていることと、ナノセリアが活性酸素を除去することから起きたようです。普段植物が緑色に見えるのは、植物が緑色の光を吸収していないためですが、カーボンナノチューブは、より多くの波長の光を吸収できることから、光合成を促進させているのではないかと考えられています。その他にも電子の動きに影響を与えているのではないかと推測されていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
しかしながら、植物にカーボンナノチューブを埋め込むことは様々な応用を期待できます。例えば、蛍光特性が付与されたカーボンナノチューブを埋め込んだ植物は、周りに一酸化窒素があると光らなくなります。他の有害物質の場合でも同じように作用すれば、毒ガスなどのモニタリングセンサーのように使えるので、植物を化学兵器探知機とすることができます。
この研究を行ったマサチューセッツ工科大学の研究室は、植物を魅力的な技術基盤だと考えているようで、木を携帯電話の電波塔のように使うといったアイデアや、ビルの壁面に葉緑体を埋め込むという構想もあるそうです。嵐などで破損しても自己修復機能がある木の電波塔や、壁面で内部の電力需要を補うビル、そんなものが立ち並ぶ日が、いつか来るかもしれません。
(文=杉田彬)
参考:「Scientific American」ほか
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