手足切断や盲目に“憧れる”人々 ― 身体欠損を強く望む「身体完全同一性障害(BIID)」の苦しみ

手足切断や盲目に憧れる人々 ― 身体欠損を強く望む「身体完全同一性障害(BIID)」の苦しみの画像1画像は、「MozartCultures」より

 障害がないにもかかわらず、自らの手足を切断したり、視覚や聴覚を失ったりすることを強く望む状態が「身体完全同一性障害(BIID)」である。近年はBIIDが増加していて、医学的・社会的研究への関心が高まっているという。

 BIIDはかつて「アポテムノフィリア(Apotemnophilia)」と呼ばれ、性的倒錯の一種と考えられた。しかし、現在は、手足などの欠損と性的な衝動が結びついているアクロトモフィリアとは区別される。また、他者の関心や同情が引くため自らの体を傷つけるミュンヒハウゼン症候群とも異なる。ミュンヒハウゼン症候群患者は自傷行為を繰り返すのに対し、ほとんどのBIID患者は欠損が実現すれば満足する。

手足切断や盲目に憧れる人々 ― 身体欠損を強く望む「身体完全同一性障害(BIID)」の苦しみの画像2画像は、「ResearchGate」より

 初めてBIIDが報告されたのは1977年である。身体障害者であることによってもたらされる自己充足がサディズムやマゾヒズムとの違いとされた。BIIDは、性同一性障害と同様、精神的イメージ像と身体的イメージ像との間に不一致に起因するとみられている。しかし、この不一致が生じる原因は不明である。

 BIID患者は、健全な肉体に不快感を抱き、特定の身体部位や臓器が自分を醜くしていると感じることもある。そのため、手足などを切断したいという、激しく、制御できない欲求にとらわれている。この欲求はカウンセリングや薬などで軽減せず、科学的な根拠に基づく治療法は確立していない。さらには、BIID患者が望む手術に同意する医師はほとんどいないため、患者の多くは自ら切断を実行しようとする。

手足切断や盲目に憧れる人々 ― 身体欠損を強く望む「身体完全同一性障害(BIID)」の苦しみの画像3画像は、「MozartCultures」より

 以前トカナでは、盲目になることを望み、それを実現した女性、ジュエル・シャッピングさんを紹介した。彼女は6~7歳のときから「目が見えないようになりたい」と言っており、若い頃は目が見えないふりをして黒いサングラスをかけていた。18歳で白杖を手に入れ、20歳で点字をマスターしたほどだった。2006年、自分の欲求を満たしてくれる心理学者と出会い、この心理学者に頼んで目に薬品とパイプクリーナーを入れてもらった。パイプクリーナーの痛みで悶えている間、痛みが終われば盲目になれると自らを慰めていたという。その6か月後、彼女の片方の眼球は取り除かなければならなくなり、もう片方の眼球は緑内障と白内障を発症して視力を失った。

「この状態こそが私が生まれつきの姿で、生まれてから盲目であるはずだった自分を本当に実感しています。あなたの周りに同じように感じる人がいないと、あなたは自分が狂っていると思い始めるでしょう。しかし、私はあなたが狂っているとは思いません。ただ障害があるだけです」(ジュエル・シャッピングさん)

動画は、「YouTube」より

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