見えない絵、聞こえない曲、消された写真 ― 現代アートの価値を思考する
■世界で一番高い写真
この写真をご存知だろうか? 知っているという人は、アートが好きな人だろう。ドイツ生まれのアンドレアス・グルスキーによるこの作品「Rhein Ⅱ」は、写真史史上最高額の約3億3,300万円で落札された。
ここからグルスキーについて書き出すと長くなってしまうので紹介までにとどめるが、失礼承知で言うと、荒川あたりに行けば撮れてしまいそうな写真である。しかもこの作品、対岸の景色やグルスキーが不要と思ったものはPhotoshopによってキレイに消されているのだ。
…と、少々辛口に書いてしまったが、デジタル加工されたこの写真、実物は190×360センチとかなり大きく、オリジナルで見ると画面に吸い込まれそうな不思議な力を持っている。筆者も東京の国立新美術館で開催された写真展で見たが、ここに掲載した画像だけを見て判断できる代物ではないことだけは確かだ。
面白いのは、彼の作風に大きく影響を与えることになったのが、東京証券取引所での撮影だということである。彼の作品は、その展示空間も含めて感じないと捉えきれないところがあるが、世界で一番高価な写真がロバート・キャパでもなく、プリントの神様といわれたアンセル・アダムスでもない現代アートにおける写真界のトップであるグルスキーの世界。技術が進歩すればまた我々が驚くような作品が世に出ることであろう。
見えない絵、聞こえない曲、消された写真と、現代アートを象徴する3点を見てきたが、いかがであっただろうか? いずれにせよ、あなたにとっての“素敵な現代アート”は心の中にあるということか。
(アナザー茂)
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