【オーパーツ世界探訪】12世紀に恐竜と暮らしていた「異次元の地」があった? 古寺院遺跡タ・プロームの謎!! 

 門を潜り抜けて敷地の中へと足を踏み入れると、そこにはガジュマルの蔓が、まるで来る者を拒むように独特の存在感を示している。こうした光景は周囲の至るところに展開されているが、そうした幾重にも入り組んだ自然迷宮の奥に、「それ」は鎮座している

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 6つの突起を背に持ち、サイやカバのようなずんぐりとした体躯をしている「それ」は、現代に生きる我々の知識を元にすれば、ステゴザウルスさながらの異様な代物だ。しかし、一般にステゴザウルスが生息していたとされるのは、ジュラ紀後期から白亜紀前期にかけてのこと。言うまでもなく、ジャヤーヴァルマン7世の在位時には既に絶滅して久しく、逆に「恐竜」という概念については、その当時はまだなかったとされているものだ。

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 それがなぜ、このような形で、遺跡のレリーフとして象られているのか。ある程度、穿った見方をすれば、この遺跡が発見された1860年以降に、何者かが悪戯で彫って埋め込んだという可能性も否定できない。しかし、それはあくまで推測の域を出ず、少なくとも現時点において、その根拠となるようなものは、なにひとつ現存しない。  なお、あえて世界史的な物の見方をすれば、ジャヤーヴァルマン7世の在位時、アジアの中央部は、あのチンギス・ハーンを祖とするモンゴル帝国が、政治的にも文化的にも大きな影響を及ぼしていた。しかし、そうした中、802年頃とされる勃興から、1431年の王都陥落まで、モンゴル系の勢力に侵攻こそ受けども、外交戦術によって持ち堪え、独立性を保っていたのが、この密林に囲まれた南方の王国・アンコール朝である。  もしかすると、そうした性質ゆえに、今なお明らかとなっていない「別の世界史」が、この地には眠っているのかもしれない。少なくともこの恐竜のレリーフは、訪れる者たちが、そんなことに想いを馳せてしまう逸品と言えるだろう。

(写真/文=Ian McEntire)

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