アカヒアリ — 洪水の際、2分間で“イカダ”を形成する殺人蟻の謎!

 防水性に富むアリのキチン質の身体を寄せ合って、足と足を絡めて、まるで赤茶色のパンケーキのようなイカダを作り、水が引くまで水上を漂うというのだ。また、このイカダをつくるのにかかる時間は2分以下で、一旦イカダを形成してしまえば1週間以上もこのままで漂い続けることが可能なのである。

 自分自身を救うために、自分の身体をイカダのパーツとして提供し、巣全体を生かすという、まさに自己犠牲と共生の見本のような生存術である。しかし、このアカヒアリのイカダも、決して安全な救命方法ではないらしく、集団で水の上に漂っているだけなので、鳥などのアリの捕食者にとっては絶好のご馳走になってしまう危険性があるそうだ。

アカヒアリ — 洪水の際、2分間でイカダを形成する殺人蟻の謎!の画像2画像は「NewsBeat Social」より

 また、逆に人間などの他の生き物にとってもこのイカダは安全なものではなく、もし人間がうっかりこのイカダに触れしまうようなかことがあれば、即座にアリはバラバラになり、身体を這い上がってやたらに噛み付いてくるのである。迂闊に近づかないほうが身のためであろう。

 アカヒアリは、イカダだけではなく橋を作ることも確認されている。離れた2枚の葉の間を行き来するためにイカダを形成した時のように、自身の身体を橋のパーツとして数十匹、数百匹でひとつの橋を作り、他のアリたちが通れるように自らを橋にしている様子が確認されている。

 昆虫のなかでも、蜂と並んでその社会性の高さが話題になるアリだが、このアカヒアリだけではなく、他の種類のアリでも様々な不思議な習性が見られる。巣に葉を持ち込み、その葉を発酵させてキノコを育て、まるで農業でもするような習性をもつハキリアリの仲間や、身体の何十倍もの水や樹液を飲み、体がパンパンに膨れたあがった状態で自分の身体を巣のウォーターサーバーとして提供するオーストラリアの蜜壺アリ。外敵から巣を守るために、巣の外から巣穴の入り口を塞ぎ殉死するForelius pusillusなど、まだまだアリの不思議はつきることはないだろう。
(文=高夏五道)

参考:「Daily Mail」、「Business Insider」、「Caters News」ほか

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