KKKは白装束でも差別的凶悪集団でもなかった? 『クー・クラックス・クラン白人至上主義結社KKKの正体』著者が明かす組織の変遷とは?

――第2期のクランは、黒人を差別するための団体というよりは単に保守的な団体だったんですね。

浜本氏 第2期クランの会員は500万人ほどいましたので、もちろん黒人に暴力を振るった会員もいたかもしれません。しかし、黒人への暴力を組織的に行っていたわけではありませんでした。また、意外にも、第2期クランでは、黒人は古くからアメリカに暮らす「仲間」と認めていました。もちろん、人種的に劣った存在だと考えてはいたわけですが、それでも、「新移民」とは異なって排除や排斥の対象に挙げていたわけではなかったんです。

 また、第2期クランは秘密結社でありながら、女性や子どもまで入会していました。というのも、アメリカでは1920年に女性に参政権が与えられて、有権者が一気に倍増したんですね。で、彼らの票をうまく取り込むと、クランの関係者を政界に送り込むことができたんです。「女性クラン」という部会まで登場しました。

 さらに、両親がクランに入会して、クランの活動を行うとなると、子どもを家に置いておくわけにはいきません。そこで、第2期クランでは、「ジュニア・クラン」という部会まで結成されて、家族ぐるみで「楽しむ」結社になったんです。サーカスやパレード、スポーツ大会も催していたんですよ。そして、かつてアメリカ人がもっていた「アメリカニズム」すなわちアメリカ人らしい精神や道徳心の再興を訴えて、慈善活動なんかも行っていました。あのクランが、昔は黒人を助けたり、日本人会に寄付をしたりもしていたんです。

――覆面となる白い三角頭巾に白いローブという衣装はいつくらいから始まったのでしょうか?

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浜本氏 あの独特の衣装は不気味で気になりますよね。はじめにお答えしましたように、クランは結成当初、緋色の長いローブを身につけていました。グロテスクな仮面をかぶり、主に夜、黒人の家を訪れて、自分たち南部白人への支持を訴えていました。目的は脅し、脅迫ですから、グロテスクな格好の方が効果的だったんです。

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 白いローブは第2期クランから採用されました。おそらく、1915年にアメリカで公開されたD・W・グリフィス監督の長編映画『國民の創生』の影響と考えられます。ただ、第2期クランでは、位階によってローブの色も異なりました。黄色や紫色の衣装を着たメンバーもいたんですよ。

――白装束は何か理由があるのでしょうか?

浜本氏 まだ調べている途中なので確証は得られていないのですが、スペインのカトリック教会がセマナ・サンタという聖週間に着用するコスチューム、カピロテに似ているので気になっているところです。この祭りの期間には、ナザレノと呼ばれる巡礼者たちが円錐形の帽子をかぶって練り歩く習慣があるんです。

――先ほどの『國民の創生』はクランを英雄としてポジティブに描いていると聞きますが、実際はどんな役割を果たしたのでしょうか?

浜本氏 第2期クランに対して、この映画がどれくらい影響したかは、現在、当時の新聞を調べて分析しているところです。『國民の創生』は、トマス・ディクソン・ジュニアの『ザ・クランズマン』という小説を原作にした映画でした。小説自体はヒットしたと伝えられていますが、実際に売れた部数は10万部以内と見積もられています。この小説が、まず演劇作品になって上演され、大ヒットを記録します。さらに、演劇の人気を背景に『國民の創生』として映画化された、という経緯があります。

 映画は無声映画でしたが、文字通り大ヒットしました。さらに、上映に際して、オーケストラや効果音が導入されて、雰囲気を盛り上げていきます。ここで、白人の窮地を救うヒーローとして登場するのがクランだったんです。悪役は黒人です。白黒映画の画面を思い浮かべてください。黒人たちから白人ヒロインを救う正義の白装束集団クラン、このインパクトは大きかった。

 さらに、映画によって、もともと南部白人の地域結社であったクランが、アメリカ白人のヒーローに生まれ変わったわけです。つまり、映画によって、歴史的文脈が書き換えられたわけなんですね。第2期クランが巨大結社に成長した素地は、この映画によって築かれていたと考えられます。
(取材=本多カツヒロ)

■後編はこちらから

【編集部注】
公開当初、記事タイトルを『【インタビュー】KKKは白装束でも差別的凶悪集団でもなかったのだが ― 浜本隆三が語る「KKKの正体」』としておりましたが、著者である浜本様からより『断定することは、事実とは異なります』とのご指摘がありましたので、訂正させていただきます。ご迷惑をおかけしました関係者のみなさま、読者のみなさまには、謹んでお詫び申し上げます。

浜本隆三(はまもと・りゅうぞう)

KKKは白装束でも差別的凶悪集団でもなかった? 『クー・クラックス・クラン白人至上主義結社KKKの正体』著者が明かす組織の変遷とは?の画像4

1979年京都府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業、同大学院アメリカ研究科(現グローバル・スタディーズ研究科)博士後期課程単位取得退学。福井県立大学学術教養センター専任講師。専門はアメリカの文学と文化。共著に『欧米社会の集団妄想とカルト症候群』(明石書店)、単訳書に『アブサンの文化史』(白水社)、共訳書に『マーク・トウェイン 完全なる自伝』第1巻(柏書房)などがある。

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