ハ最悪の殺人バディヘンリー・リー・ルーカス
――会場内では、ゲイシーは作品数が多いこともあってひときわ目立っていました。作品というと絵画ばかりと思われがちですが、数百人を殺害したという放浪の殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスがアイスキャンディーの棒を集めて手作りした置時計もありました。写真を素材にしたものもありましたね。
「ウェイン・ローは写真に刺繍をほどこすアートワークを作っていて、特にアート好きの方々が注目していました。ローはマサチューセッツの大学で銃乱射事件を起こしましたが、こんなにアーティスティックで優れた作品を作る人がなぜ銃乱射を起こしたのだろうかと、そのギャップに驚いていた人が多かったですね。他の犯罪者のアートワークとはセンスが違うなと思えるものだったので、今回はもっとたくさんの作品をお見せしています」
ハーバート・マリン/大地震から人々を守るため13人を殺害
――前回、ドアノブのような家の一部、お墓のフロッタージュ(紙をあてて鉛筆でこすって拓をとったもの)、着ていた服を小さく切り刻んだものがあって、印象的でした。犯罪者にまつわるあらゆるものがコレクターズ・アイテムになっているところもすごいですよね。
「海外だと、そういうものがネットのオークションに出回っています。勝手にやっている人もいれば、犯罪者の遺族が死刑のときに着ていた服などを50分の1とかに切り刻んで、エディションをつけて売ったりします。前回の展示品では、エド・ゲインの聖書が人気でしたね。ゲインといえば、映画『羊たちの沈黙』や『悪魔のいけにえ』ですごく有名ですけど、そんな彼が実在していたということがボロボロに使い古された聖書を通じて実感できてしまうところが強烈なんだと思います。物に宿る猟奇性というか、そのオドロオドロしさに惹き付けられて、食い入るように見つけている人がたくさんいましたね」