カプグラ症候群 ― 親しい人が「見知らぬ他人」と入れ替わったように感じる悲劇の病、原因やキッカケは?

カプグラ症候群 ― 親しい人が「見知らぬ他人」と入れ替わったように感じる悲劇の病、原因やキッカケは?の画像2 「Science Alert」の記事より

■認知行動療法と投薬治療が有効か

 オーストラリアの認知科学者、マックス・コルトハート氏もまた、何らかの脳機能障害が親しい人物の顔から“親近感”を奪っていると考えているが、さらにこの脳機能障害は“誤認”を認めることを拒む働きをしていることを指摘している。いわば2重の誤認で親しい者の顔から“親近感”が感じられなくなっているのだ。

「正しい評価システムが働いていれば、愛する人が“ニセモノ”であるという考え方は否定されるべきですが、右前頭葉に脳の障害が起こると正しい判断を妨げます」(マックス・コルトハート氏)

 コルトハート氏は認知行動療法(cognitive behavioral therapy)がカプグラ症候群の治療に有効であることを提唱している。実際に認知行動療法で、ラマチャンドラン氏の患者・デイビッドも最終的には両親が本当の親であることを認めたのだが、残念ながら再び両親に“親近感”を覚えることはなかったということだ。

 また別の専門家は、カプグラ症候群の治療には単純に抗精神病薬や抗うつ剤の投与が有効であると主張している。しかし認知行動療法も投薬もカプグラ症候群の治療法としては今のところは決定打に欠けるようではある。

 そして前出のマーティー・バーマンさんだが、妻の支えが影響したのか、2012年に亡くなるまでの数年の間、カプグラ症候群の症状が徐々に緩和されたということだ。しかし亡くなる前に完治することはなかったという。本人はもちろん、周囲にとっても大きな問題となり悲哀をもたらすカプグラ症候群の解明と治療法の開発に新たな希望が見つかることを望むばかりである。

参考:「Science Alert」、「Washington Post」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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