中には廃墟とは思えない写真もある。廃墟となったフランスの城はまるで18世紀から時間が止まってしまったかのように、調度品が整っている。
アメリカの廃シアター、フランスの打ち捨てられた戦艦など、歴史の重みを感じさせる写真も多いが、その中に何だかよくわからない趣味の日本の廃ラブホテルも含まれているから笑ってしまう。SMと中世趣味のキッチュな融合がなんとも味わい深い。
建物として利用されなくなった廃墟はまったく実用的価値のないものだ。だからこそ、そこには美的価値が生まれ、訪れる者との間に不思議な距離を生み出す。だが、その不思議な距離は廃墟が“家”として見られた瞬間に消失し、廃墟は生活のための道具になってしまう。
ティッセン氏の写真が我々に見せてくれているのは、廃墟だけが持つそんな儚い距離に他ならないだろう。
●ボブ・ティッセン氏のYouTubeチャンネル→「Exploring the Unbeaten Path」
●ボブ・ティッセン氏のInstagram→「exploringtheunbeatenpath」
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