チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の“身の毛がよだつ生涯”とは?

本記事は2018年の記事の再掲です。



【シリアルキラー・連続殺人鬼 完全紹介シリーズはコチラ】

<チャールズ・マンソン特集後編、前編はこちら>

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像1画像は「TMZ」より引用


■孤立・先鋭化するファミリー

 ロックスターになる夢を断たれたチャールズ・マンソンはハリウッドのエリートたちに対して復讐を誓ったその後――。

 1968年の夏、レスリー・ヴァン・ホウテンという女性がマンソン・ファミリーに入信した。彼女も中流家庭出身。両親は2人の実子のほか2人の養子を育て、そんな両親に影響を受けた彼女は人助けをするのが好きな真っ直ぐな少女へと成長した。教師を夢見ていた頃もあったが、14歳の時に両親が離婚。父親が家を出て行ったことに心を痛め、LSDなどのドラッグに逃げるようになった。17歳の時に妊娠をしたが、母親により強制的に中絶。ヨガなどで心の安らぎを得るようになり、ヒッピー文化へとはまり、マンソン・ファミリーへとたどり着いたのだった。

 マンソン・ファミリーが暮らしていた場所は、ロサンゼルスの郊外にある、かつて西部劇の撮影所として使われていた「スパーン牧場」だったということもあり、そこでの暮らしはファミリーにとってこの上なく楽しいものだった。ファミリー全員でLSDによるトリップも繰り返し行った。

 チャールズはファミリーのメンバーの一人一人の口にLSDを入れ、自分は少しだけ、もしくは取らず、トリップするファミリーたちに「俺はイエス・キリストの生まれ変わりだ」「俺のために死ねるか?」など洗脳する言葉をかけた。LSDを使い、ファミリーたちのマインドを支配していったのだ。グループセックスもして、ますますファミリーの結束を固め、がんじがらめにさせた。

 チャールズはファミリーにとって絶対的存在になり、完全なる支配力を得た。そして、「生も死も一緒」「死はより良い世界への扉」だとも洗脳するようになっていった。


■社会から完全に孤立、精神崩壊のはじまり

 1968年の冬、ファミリーはカリフォルニア州シエラネバダ山脈東部にある、デスヴァレーと呼ばれる山と砂漠しかない場所に移り、世間から完全に孤立した。テリーに拒絶されたチャールズの妄想はどんどん膨らんでいった。ビートルズの楽曲「ヘルター・スケルター」を、ハルマゲドンのことを歌う、予言ソングだと言うようになった。

The Beatles 『Helter Skelter』。動画は「YouTube」より引用

 1969年1月、ファミリーはカリフォルニアに戻ったのだが、被害妄想と怒りで精神的にギリギリの状態だったチャールズは「ブラックパンサーのメンバーの黒人の麻薬売人を殺してしまった」という幻覚を見て、ブラックパンサーにファミリーは殺されるという妄想にとりつかれるようになった。

 この頃、人種差別されるため貧困から抜けだせない黒人たちが、全米各地で暴動を起こしていた。彼らは「戦争だ!」と声を上げており、チャールズは「戦争なんだ!」と精神的にますます追い詰められていった。5月になると「ブラックパンサーを象徴するものだから」とカラスを射撃したりするようになった。

 

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像2デスヴァレー。画像は「Murderpedia」より引用

■最初の事件 耳削ぎ落とし殺人

 7月に入り、チャールズは、ファミリーのメンバーづてに、ミュージシャンでドラッグの売人だったゲイリー・ヒンマンが多額の遺産を相続したとの噂を聞いた。同月25日、チャールズはメンバーのスーザン・アトキンス、メアリー・ブルンナー、ボビー・ボーソレイユの3人をゲイリーのマリブの自宅に行かせ、「資産を全てファミリーに寄付し、ファミリーに入るよう説得しろ」と命じた。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像3被害者ゲイリー・ヒンマン。画像は「People」より引用

 突然の要求にゲイリーは驚き、当然のことながら拒否した。すると3人はゲイリーを2日間監禁。怒りに満ちたチャールズがやって来ると、ゲイリーの耳を削ぎ落とした。そして、ボビーにゲイリーを「殺せ」と命じた。ボビーは何のためらいもなく、痛みと恐怖で叫ぶゲイリーを刺殺した。

 彼らは現場の壁に、ゲイリーの血で「Political Piggy(政治的な強欲豚野郎)」と書き、ブラックパンサーのシンボルも書き残した。チャールズが敵視していたブラックパンサーの犯行だと見せかけるためだった。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像4壁に描かれた血文字。画像は「CieloDrive.com」より引用

 8月6日、ボビーは自分が殺したゲイリーの車を運転しているところを警察に逮捕される。車内から殺人に使われたナイフも出てきたため、ボビーはゲイリー殺しの容疑者として逮捕された。ボビーが逮捕されたことを知ったチャールズは色めきたった。そして、興奮しながらメンバーたちに告げた。「ヘルター・スケルターの時がやってきた!」と。

 チャールズは、自分を見下し、裏切ったハリウッドの高飛車な連中や金持ちをターゲットにしてやろうと心に決めていた。本当なら自分をデビューさせてくれなかった音楽プロデューサーのテリーを標的にしたかったのだろう。しかし、テリーはこの頃すでにかつて住んでいたベネディクトキャニオンのシエロ・ドライブを引き払っていた。そして、その邸宅には、テレビ界で活躍していたハリウッドの女優シャロン・テートと映画監督のロマン・ポランスキーの新婚夫婦が移り住んでいた。シャロンは妊娠しており、このシエロ・ドライブの邸宅で夫婦は暖かい家庭を築き上げようと心を踊らせていた。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像5シャロン・テート。画像は「CieloDrive.com」より引用

■シャロン・テート殺人事件

 1968年8月8日夜。

 ロマンは映画撮影のためロンドンに滞在していたが、出産を控えたシャロンが心細くないようにと、邸宅には友人たちを招いていた。ハリウッドのスター御用達のヘアーアーティストであるジェイ・セブリング、フォルジャー・コーヒーのお嬢様であるアビゲイル・フォルジャー、元恋人のヴォイテック・フライコウスキーが、運悪くそこに泊まっていた。

 同日夜中、チャールズは寝ている信者2人(スーザン・アトキンス、パトリシア・クレンウィンケル)を起こし、リンダ・カサビアンが運転する車に乗るように命じた。そして、「テックス・ワトソン(信者)の言う通りにするんだぞ」「何かするときはうまくやれ。そして自分がやったという証拠に“悪意のあるサイン”を残せ」と告げた。

 テックスは、「テリーが住んでいた邸宅の中にいる全員を殺せ」とチャールズから命じられていた。チャールズはテリーが引っ越したことを知っていたが、自分を拒絶するハリウッドを象徴するあの邸宅に対しても強い恨みを持っていたのだった。

 目的地に到着したテックスはまず、電柱に登り邸宅の電話線を切断。その時、たまたま用を終えた若いスティーヴン・ペアレントがドライブウェイを通りかかった。テックスは無言で車に近寄り拳銃を向けた。そして「殺さないでくれ。君たちがここにいたことは誰にも言わないから!」と懇願するスティーヴンに至近距離で4回発砲。後にテックスはクリスチャン番組で、「この夜、スピード(ドラッグ)を大量に服用して、どうにもならないほどハイになっていた。何をやっていたか分かってはいたものの、どうでもいいという気分になっていた」と明かしている。

 この頃、シャロンの邸宅の中ではヴォイテックがリビングのソファーで寝ており、アビゲイルはゲスト寝室で読書を、シャロンとジェイは主寝室で話をしていた。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像6現場のリビングルーム。画像は「CieloDrive.com」より引用

 目撃者であるスティーヴンを一瞬にして殺したテックスは、運転手のリンダを見張り役として車内に残るよう命じ、スーザンとパトリシアを連れてシャロンの邸宅に窓から忍び込んだ。そして、リビングまで進み、皆の前で高らかに「私は悪魔です。これから悪魔の仕事をします」「みなさんを殺します」と宣言した。

「何を言ってるんだ。シャロンは妊娠8ヶ月半なんだぞ!」

 そう叫んだヴォイテックを、テックスは無言で繰り返しナイフで刺し殺した。そして残りの3人を集めて縄で縛ったのだが、お嬢様のアビゲイルが隙を見て逃げ出してしまった。パトリシアは“これは悪事だ”という理性があったものの反射的にアビゲイルを追いかけ、そして庭で押し倒し、ナイフで繰り返し刺した。28回刺され絶命したアビゲイルの最後の言葉は「私、もう死んでるのよ?(なのにまだ刺すの?)」だったという。

 テックスは、同じく逃げようとしたヘアアーティストのジェイに飛びつき、ナイフで繰り返し刺した。遺体には51箇所もの刺し傷があった。震え上がるシャロンを殺したのはスーザンだった。

「お願い。子供を産んだ後に絶対に私を殺させてあげるから、今は見逃して。本当に産後、殺させてあげるから。お願いだから子供だけは助けて」

 そう繰り返し懇願するシャロンを、スーザンは無表情で刺しまくった。スーザン自身も10ヶ月前に出産したばかりで、赤子を持つ母親だったが、後に警察の取り調べに対して、「妊婦であるシャロンを刺している最中、何の感情も湧いてこなかった」と証言している。

 邸宅を去る時、彼らはチャールズに命じられたように「自分たちがやった」と分かる証拠を残した。シャロンの首にはロープを二重巻きにし、さらにそのロープの端をジェイの首に巻いた。スーザンは遺体から流れ出る血をタオルに浸し、強欲な汚い人間のことを指すスラングである「PIG」という文字を玄関に書いた。そして4人は現場を去った。4人の遺体には合計して102もの刺し傷があった。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像7残された血文字。画像は「CieloDrive.com」より引用

 シャロンたちの遺体は、朝になり、シャロン邸の雑用をこなす19歳の青年が発見。すぐに警察に通報したが、警察はあろうことが「第一発見者が犯人であることが多いから」とこの青年を逮捕した。幸いにもアリバイがあったためすぐに釈放されたのだが、捜査は行き詰まってしまう。

 ホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)を撮影していた夫のロマン・ポランスキー監督も疑われた。悪魔崇拝者、悪魔崇拝しているカルト教団の仕業だとも噂された。全米がこの凶悪殺人事件を報道し、大騒ぎとなった。

 

■ファミリーの凶行は続く

 報道を聞いてチャールズは酔いしれた。自分を裏切った金持ちたちの命をいとも簡単に奪い、世間に大きな衝撃を与えることができたからだ。

 チャールズはこの勢いに乗り、ロサンゼルスの別の高級住宅地区に住む金持ちを成敗しようと決心した。次に狙いをつけたのは、以前、女性信者たちとパーティーに参加した家の隣の邸宅に住んでいたスーパーチェーン店オーナーであるレノ・ラビアンカと妻ローズマリー。2人と面識があったわけではなかったが、パーティーに参加した時、隣の豪邸をじろじろ観察しどこにドアがありどこに窓があるかを把握していたから「やりやすい」と思ったのだ。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像8ラビアンカ邸。画像は「CNN」より引用

 シャロン邸で殺人を犯した翌日、チャールズはテックス、パトリシア、レスリー・ヴァン・ホウテンとドライブを楽しんだ後、ビアンカ夫妻の邸宅に車を停めるよう命じた。まずチャールズが家の中に入り、帰宅したラビアンカ夫妻を縛り上げた。そして、怯える2人に「大丈夫だ。ただの泥棒だから。俺はおまえらに危害は加えない」そう告げた。そして、車で待つ3人のところに戻り「やれ」と命じた。

 パトリシアとレスリーは夫人を寝室で殺そうと連れ込んだ。その瞬間、テックスに殺されたレノの最期の叫び声が聞こえた。2人は取り乱す夫人に手こずっていたが、業を煮やしたテックスが寝室に入ると、夫人にナイフを突き刺し床に押し倒した。テックスは、レスリーにナイフを渡し「お前もやれ」と命じた。レスリーとパトリシアは必死で夫人の体にナイフを突き刺した

 3人は遺体の血を使って、壁に「Death to Pigs(強欲な奴らに死を)」「Rise(甦れ)」冷蔵庫に「Healter Skelter(Helter Skelterの綴り間違い)」と書いた。さらに、冷蔵庫からチョコレートミルクとスイカを取り出し食べたのである。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像9冷蔵庫に書かれた「Healter Skelter」。画像は「Bizarrepedia」より引用

 肉切り用の大きな包丁で首を切り裂かれ、その包丁を腹部に突き刺されたレノの遺体。頭に枕カバーを被され、電気スタンドのコードを首に巻かれたローズマリーの遺体。そんな家の中で、殺人を犯したばかりの3人はもくもくとお菓子と果物を食べてから現場を後にした。夫婦の遺体には合計して67つもの刺し傷があった。


■進まぬ捜査、怯えるハリウッドは大混乱!

 シャロンが殺害されたことでハリウッドのセレブたちは戦々恐々としていた。フランク・シナトラはすぐさまロサンゼルスから移動し、トニー・ベネットはセキュリティのしっかりしたホテルに移り、スティーブ・マックイーンは自己防衛のために銃を持ち歩くようになった。ビバリーヒルズの銃販売店は2日間で200丁もの銃を売り上げた。シャロン・テートとポランスキーの家からマリファナと麻薬が発見されたため、薬物がらみの事件かもしれないという噂が流れると、ビバリーヒルズでは薬物を所持している者たちが一斉にトイレに流し捨て、下水が詰まるというハプニングも発生した。

 警察は、ラビアンカ夫妻殺人事件をシャロン・テート事件を真似したものだろうと推測し、関連性のない全く別々の事件として捜査を進めていた。シャロンの方は麻薬がらみ、一方のレノはギャンブルの借金をめぐる事件だろうと睨んでいたからだ。当然、捜査は難航した。

 さらに、警察の失態も目立った。犯人の脱ぎ捨てた、血がべっとりとついた服を発見したのは事件を追っていたテレビクルー。犯行に使われた拳銃を発見したのは少年で、その父親の通報でやってきた警官は、証拠品をベタベタ触りながら署に持ち帰ることとなった。市民は「ちゃんと仕事をしろ!」と大激怒した。

 また、ファミリーが最初に殺したゲイリーの事件は、ロサンゼルス市警の管轄外であるマリブで起きた事件だったため、共通点があったにも関わらず無視された。ゲイリー殺人事件の捜査をしていたマリブの刑事たちがロサンゼルス市警に赴き、「同一人物による犯行だと思う。合同捜査をすべきだ」と訴えても、「いや、こちらのは麻薬絡みの事件だから」と取り合わなかった

 最初の事件から1週間後の8月16日、チャールズたちは自動車盗難容疑で逮捕されている。しかし、あの恐ろしい殺人事件の加害者と疑われることもなく、証拠不十分としてすぐに釈放された。立て続けに人殺しをしたファミリーたちはぴりぴりしていたが、チャールズは「警察に捕まるわけがない」と自信満々だった。

 とはいえ、チャールズは警戒を解かず、警察からできるだけ離れた場所に移動すべきだと決心。再びカリフォルニア州シエラネバダ山脈東部にあるデスヴァレーに移った。そこでメンバーたちに「今回の殺人は、黒人との人種戦争を勃発するきっかけを作った」と言い放ち、メンバーたちに「いつでも戦える準備をしろ」と射撃などの特訓をさせた。

 

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像10マンソン・ファミリー。画像は「Bizarrepedia」より引用

■ファミリーの終わり

 10月10日、デスヴァレーに自動車窃盗団がいるようだとの情報を得た白バイ隊員が、デスヴァレーのマンソン・ファミリーの掘っ建て小屋に入り、ファミリーを逮捕した。

 この少し前、スーザン・アトキンスは別の事件の容疑者として逮捕され、拘置所に入れられていた。拘置所では女性も男性も「どれだけ自分が凄い犯罪者か」を見せて同房の者に舐められないようにするという傾向がある。スーザンも拘置所の同房囚人に「あんたシャロン・テートを殺した奴を知ってるよね」と言い、戸惑う彼女に「今、あなたの目の前にいるのが犯人だよ」とドヤった。「殺しは、やればやるほど楽しくなる」とまで言い放ったのである。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像11スーザン・アトキンス。画像は「CNN」より引用

 囚人仲間はすぐに看守に垂れ込んだ。スーザンは殺人事件の容疑者として逮捕され、警察に移送された。スーザンは罪の意識などかけらもない表情で自分がやったことを認め、「ヘルター・スケルターの時が来たからなのよ!」と詳しく話した。この彼女の自白により、同年12月、スーザン、チャールズ、パトリシア・クレンウィンケル、レスリー・ヴァン・ホウテン、テックス・ワトソン、リンダ・カサビアンが、シャロン・テートら5人とラビアンカ夫妻殺しの容疑者として逮捕された。

■法廷のカリスマ

 1970年6月、チャールズとスーザン、パトリシア、レスリー、リンダの裁判が始まった。チャールズは「弁護士はいらない自己弁護をする」と主張。却下されたが、チャールズは裁判所でも洗脳劇を繰り広げる自信があったものと見られる。

 そんなチャールズは裁判所でもスターだった。表情豊かに笑ったり、変顔をしたり、にこにこしていたかと思ったら、弁護士にペンを振りかざしたし、裁判官に殴りかかるなどした。メディアのカメラに向かってはチャーミングに微笑むことも多かった。小さい男なのに、存在感は誰よりもあった。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像12法廷のチャールズ。画像は「Murderpedia」より引用

 全米が、うら若き乙女たちに残虐殺人を犯せさせた、カルトリーダーのチャールズに注目した。チャールズは一貫して、「俺は殺しなどしていない」「彼女たちは自分の意思で自分のやりたいことをしただけ」だと主張。3人の女性はそういう彼を微笑みながら眺めたり、目を見合わせてクスクス笑ったりした。洗脳の恐ろしさ、カルトの恐ろしさに世間は慄いた。

 スーザン、パトリシア、レスリーたちは、カラフルな服を着て手を繋いで歩いたり、チャールズが作詞作曲をした歌を歌った。裁判が始まり、チャールズはすぐ資金集めのために『LIE』というアルバムをリリース。アルバムは大きな話題になった。3人の女性たちは歌だけでなく、片手を上げるなどのパフォーマンスをしたりしたが、これは全てチャールズの指示によるものだった。チャールズが「自分は世間から排除された人間だから、その証に」として眉間にバッテンを描いた時も、3人の女性は全く同じことをした。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像13マンソンガールズ。右からスーザン・アトキンス、パトリシア・クレンウィンケル、レスリー・ヴァン・ホーテン。画像は「Murderpedia」より引用

 全米が茶番のようなチャールズの裁判に関心を寄せ、とうとうニクソン大統領も「自分でやってないとしても有罪だ。8人を理由なく殺したんだ」と発言。メディアはこれをを大々的に報じ、チャールズは翌日の裁判で、にやにや笑いながら「マンソンは有罪だとニクソンが宣言した」と大きく書かれた新聞を陪審員に向かって掲げた。チャールズは審理無効になることを狙ったと見られるが、思い通りにはならず裁判は続行した。

 ロサンゼルス検察官は当初、「泥棒に入ったが、見つかってしまい、目撃者を全て殺した」という路線で進めようとしていた。しかし、州検察官のヴィンセント・グリオシは「ヘルター・スケルター」が鍵を握ると考えていた。チャールズは「ビートルズのヘルター・スケルターとは黒人が白人を皆殺しにするという人種戦争のこと」だと説き、ファミリーはこれを信じていた。それほどの洗脳力があるのなら、殺人を指示することはたやすい、自分の手は汚していないが、彼が主犯であり、殺人者なのだ、という路線で裁判を進めるべきだと主張した。

 実際、チャールズを慕うファミリーたちはチャールズの裁判が行われている裁判所の外の歩道に住みつき、「もうすぐこの世の終わりがくる!」「戦争が起こる!」「ヘルター・スケルターの時がくる!」と叫んでいた。離れていても、殺人しろと洗脳したカルトリーダーだと言われても、メンバーたちはチャールズを慕い、当局に反発するため全員が剃髪した。

 検察官は運転手を務めていたリンダが、殺人はせず、ファミリーが殺すところを目撃していたことから、殺人の内容を証言して欲しいと頼んだ。チャーリーがファミリーを洗脳し、チャーリーの命令でみんなが殺人を犯したのだと証言してくれれば、彼女を罪には問わないと約束したのだ。罪悪感に苦しめられていたリンダは検察官の司法取引に応じ、証言台に立った。カルトリーダーとしてのチャールズの姿を語り、殺人はチャーリーに指示された、などと証言する彼女に、チャールズは叫んだ。

「3つ嘘をついたな。4つ目の嘘に、お前は痛めつけられることになるぞ!」

 弁護士たちも必死だった。レスリーの弁護士ロナルド・ヒューは、レスリーを他の3人とは離して弁護する方が刑を軽くできると考えた。それまで、それぞれの弁護士は、4人全員の弁護をしている方向で動いていたのだが、チャールズとは切り離し「チャールズに洗脳され、命じられ罪を犯した」と主張した方がよいと考えたのだ。

 弁護士は全て自分の味方であるべきだと考えていたチャールズは、この動きに激怒する。裁判所で、ロナルドを指差し「お前のツラなど二度と見たくない」と言い放った。ロナルドはこの後、裁判の休憩期間を利用しキャンプに出かけ、行方不明になった。そして、半年後、腐乱遺体で発見された。腐敗が進んでいたため死因は特定できなかったが、世間は「事故ではなくマンソン・ファミリーが殺したのだろう」と推測した。

 1971年1月25日、チャールズ、スーザン、パトリシア、レスリーは第1級殺人で有罪判決を受けた。テックス・ワトソンの裁判は別に行われ、同じく第1級殺人で有罪となり死刑判決が下された。そして、3月29日、チャールズたちにも死刑判決が下された。

 スーザン、パトリシア、レスリーは、これまで「絶対に嘘をつかない神」だと信じていたチャールズが、裁判所で嘘をつきまくり、自分たちにも嘘をつくように指示することで少しずつ目が覚めていった。しかし、チャールズは違った。死刑判決を受けた直後、チャールズは検察官のヴィンセントにこう言った。

「お前さん、別に大したことしてないんだぜ。俺がやって来たところに送り返しただけなんだから」

 ヴィンセントは「いや、でも今回は(死刑囚の)緑の独房に戻るんだぞ」と言い返したが、翌年の1972年、カリフォルニア州で死刑制度が一時的に廃止されたため、チャールズたちの死刑は終身刑に減刑された。1978年に死刑は復活したが、チャールズたちの刑が死刑に戻ることはなかった。

チャールズ・マンソン完全解説! 史上最凶のカルト連続殺人鬼の身の毛がよだつ生涯とは?の画像14画像は「CNN」より引用

■刑務所の中でも

 チャールズを含む5人は、仮釈放申請可能な時期になると申請をしたが、全て却下された。スーザン、パトリシア、レスリーにテックスは自分が犯した罪に毎日悩み、苦しみ、後悔したが、チャールズは刑務所ライフを謳歌していた。作詞作曲も相変わらず行い、絵も描いた。インタビューも受けた。額のバッテンを鉤十字にして世間に反発した。年間6万通のファンレターを受け取り、自分は特別な人物だと思い続けた。そして時折見せる鋭い眼力は生涯消えることはなかった。

 スーザンは刑務所内で、チャールズがエリザベス・テイラーと当時の夫リチャード・バートン、フランク・シナトラ、スティーブ・クイーンズ、トム・ジョーンズもターゲットにしていたことを告白。もし、チャールズ・マンソンが野放しになっていたら、ハリウッドの大物セレブたちが次々と殺害される大惨事になったかもしれなかった。このことを知ったハリウッドは「有名税どころじゃない」と改めて震え上がった。

 スーザンは2009年に脳腫瘍のため61歳で死去。70歳のパトリシアと69歳のレスリー、72歳のテックスはカリフォルニア州の刑務所で現在も服役中。3人とも仮釈放を目指しているが、その可能性はゼロに近いと見られている。別件の事件なども含め、カルト集団のメンバーが殺害した人数は計9人にのぼった。

(堀川英里)

参考:「TMZ」「Celebrity net worth」「Murderpedia」ほか

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